第685話

 瓦礫をどかしてボスの核となっていたであろう宝箱を発見したその後、俺は何故かボスとして出現しやがった黒い甲冑との因縁を2人に詳しく説明した。


「他者の命を餌として復活を遂げようとした悪しき神か……そんなにも危険な存在に似た者がこの場に現れた理由は何なのだ?」


「いや、だから分かんねぇって……俺だって心臓が止まるかってぐらいビックリした訳だし、そもそもまた神様と戦う事になるだなんて思ってもみなかったからな。」


「ふふっ、それはそうだよね。普通に考えて、神様と会える事だって奇跡としか言い様がない事なんだから。」


「うん、今日は良い経験が出来た。次は1人でも勝てる様になる。」


「す、凄い自信ですね……僕は何と言うか……まだ体が震えているようです……」


「それは仕方ないよエルアちゃん。部屋の外に居てもどれだけ危ない戦いをしていたのか分かったぐらいだもん。実際に命懸けで戦っていたんだから怖いと思う事だって間違ってないよ!」


「……ありがとう、オレット。そう言って貰えるだけで落ち着く気がするよ。」


「あはっ、それなら良かった!って、そうだ!折角ボスを倒したんだから宝箱の中を早く確認しようよ!」


「あぁ、そうだな。2人共、開けてみてくれるか?」


「えっ、僕達が……ですか?」


「おう、今回の主役はお前達だからな。」


「……止めを刺したのは九条透、貴様だったと思うが。」


「それでもだよ。それにボスを倒せたのは皆が一緒に戦ってくれたからだぞ。そこに大した差なんてねぇよ。ほら、さっさと開けな。」


「……ふんっ、礼は言わぬぞ。」


「ははっ、別に要らねぇよ。」


 クリフはそっぽを向く様にして俺から目を背けると、隣に立っていたエルアと目を合わせてから宝箱の前にスッとしゃがみ込んだ……ついでにオレットさんも。


「うぅ、何が出て来るのかな!ワクワクしてくるね!」


「……どうして貴様が一番張り切っているんだ?」


「それはもう記者ですから!それよりもほら!早く早く!」


「全くもう、仕方ないな。それじゃあいくよ……せーの!」


 エルアとクリフが宝箱の上蓋に触れながら掛け声と共にゆっくりと開いていくと、その中にはかなりの大きさがある漆黒色のコアクリスタルの欠片が入っていた。


「おやおや、これは凄いレア物だね。」


「お、おぉ……!な、何と言う輝き……素晴らしぃ……!」


「クリフ君、気持ち悪いよ?」


「んぐふぅ……!ふ、ふんっ!何と言われようが関係ない!九条透っ!コレは武器や防具を作る際に使用する素材で間違いないな!」


「お、おう……そうだな。ソレはボスの心臓部分とも言えるコアクリスタルってもんなんだが、滅多に手に入らないレア物の素材だ。」


「ふふっ、それを使って作成された武器は切れ味も強度も抜群に良いんだよ。」


「へぇ、もしかして皆さんが使っている武器も?」


「うん、だから良かったね。」


「はーっはっはっは!良い、良いぞぉ!このコアクリスタルを使って我は更なる高みへと辿り着てみせる!そう、我は無敵だ!」


「……アホは放っといてさっさと帰るとするか。」


「……えぇ、そうですね。」


 自分の世界に入り浸っているクリフに呆れながらその場を後にした俺達は、無事にダンジョンを脱出していくのだった。

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