第673話

 昨日よりも少しだけ早い時間帯に指導を終わらせて我が家まで戻って来た俺達は、どういう訳かリビングの床にぶっ倒れているクリフを発見する事になった!?


「え、ええっ!?」


「お、おいクリフ!お前、一体どうしたんだよ?!何があった!」


「う、うぅ……お、大声で叫ぶな……ただの……魔力切れだ……」


「ま、魔力切れって……確かお前、今日はソフィから指導を受けてたよな?ったく、何をどうしたらこんな状況になるんだよ……仕方ない、とりあえずこっちに座れ。」


 クリフを抱え上げてそのままソファーの上に座らせた直後、廊下の方からソフィが姿を現した。


「九条さん、エルア、お帰りなさい。」


「あ、あぁただいま……いや、そうじゃなくて。ソフィ、どんな指導をしたら魔力が切れるなんて事が起きるんだ?」


「後で説明する。それよりも今はコレをクリフに飲ませる。」


「……それは?」


「魔力補充薬。回復量は微々たる物だけど動ける様にはなるはず。飲んで。」


「わ、分かった………うぅ、酷い味だな………だがしかし、少しずつではあるが体に力が戻って来る感覚があるな。」


「それなら良かった。しばらく休んでいて。私は九条さん達と話をしているから。」


「……そうさせてもらおう……」


 ソファーの背もたれに倒れ掛かりながらグッタリとしているクリフを横目に見つつダイニングテーブルがある方へ移動した俺達は、ソフィから今日の指導内容について聞き出す事にするのだった。


「それで?ソフィはクリフに何をさせたんだ?」


「的当て。」


「ま、的当て?それはお祭りとかで見かける屋台でやっている、あの?」


「うん。クリフは魔法の扱いが上手い。でも、発動を早くしようとすると狙いが雑になる。だから素早く正確に魔法を当てられる様にする為の指導をやった。」


「……その内容は?」


「私が魔法で的を出現させる。クリフは動きながらソレを射抜いてく。それだけ。」


「……ついでに言うと、その的は素早く壊さなければ我を狙って突っ込んで来る……そして最初は1つだった的は次第に数を増やしていき……最終的には……うぅ……」


「クリフが手加減しなくて良いと言ったから少しだけ本気を出してみた。」


「……とりあえず俺から言える事は、ソフィは手加減する事を覚えてクリフはあんま調子に乗らない事を覚えろって事だな。」


「全くもう、これから余計な事は言わない様に気を付けるんだよ。」


「ふ、ふっふっふ……この程度の試練……乗り越えられぬ我ではない……!」


「あっ、ダメだこりゃ……」


「えぇ、言うだけ無駄って感じですね……」


 立ち上がって全身をプルプルさせながら厨二臭い決めポーズを見せてきたクリフを呆れながら見つめた俺とエルアは、2人揃ってため息を吐き出した。


 それからしばらくして帰って来たロイドとオレットさんから取材が順調に進んでる事を教えられた後、俺達は明日の指導に備えて早めに解散する事になるのだった。

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