第672話
「エルア、お疲れさん。足場が悪い中だってのによく頑張ったな。」
「は、はい……ありがとうございます……」
昨日とは場所を変えてトリアルを囲う様に広がっている森の中で指導を始めてから大体1時間ぐらい経った頃、植物系と昆虫系のモンスターと何度か戦闘を行って息の上がっているエルアに近寄った俺は冷たい飲み物の入った保温ポットを手渡した。
「ほら、とりあえずコレでも飲んで落ち着け。」
「ど、どうも………ふぅ……九条さん、僕の動きはどうでしたか?……ロイドさんに言われた事を意識しながらやってみたつもりなんですが……」
「あぁ、かなり積極的に前に出てたよな。モンスターに怯まずに盾で身を護りながら挑んで行ってたのは良かったと思うぞ。けどソレを意識しすぎるがあまり、死角から攻撃されたりしてたよな?」
「……そうですね。すみませんでした。」
「いやいや、別に謝る事じゃねぇよ。ただコレはクリフにも言った事なんだけどさ、目の前の敵にばっかり集中しすぎるなよ。1人で戦っている時は特にな。」
「はい。以後、気を付けます。」
「おう。それじゃあ少し休憩を挟んだらモンスターを探しに行くとするか。エルアの体力的に問題が無ければの話になるけどな。」
「大丈夫です。問題ありません!」
「そうか。それならしばらくそこの幹に腰かけて休んでな。周囲の警戒は俺がしとくからさ。」
「えぇ、お願いします。」
小さく頭を下げて出っ張っている木の幹に座ったエルアが飲み物を口にしてる姿を横目に見ながら辺りをグルっと見回した俺は、黙ったままで居るのも何なんでクリフにも聞いたのと同じ質問をしてみる事にした。
「なぁエルア、お前ってこのまま冒険者としてやっていくつもりなのか?それとも、ニックさんと同じ仕事を?」
「……まだ、決めていません。父さんには無理に自分の仕事を手伝わなくても良い。自分の好きな様に生きろと言われましたけど……自分がどうなりたいのかは……」
「そうか……まぁ、ニックさんにそう言われたんならまずは目の前の事に集中だな。戦う力を少しずつでも身に付けていけば冒険者としてやってく道も見えるだろうし、ニックさんの仕事を手伝うって決めた時に役に立つだろうからな。」
「……はい!それでは九条さん、ご指導の再会よろしくお願いします!」
「えっ、休憩はもう良いのか?」
「はい、今は少しでも数多くのモンスターと戦闘を繰り返して実力と経験値を積んでいきたいですからね!」
「……了解、そういう事ならお前のやる気に応えられる様に俺も頑張るよ。」
軽くなった保温ポットを受け取りながら小さな笑みを零した俺は、エルアの援護をしながらモンスターとの戦闘を行っていくのだった。
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