第605話

 予定していた時刻通りにセトグリア家で集合した俺達は、イリスとルバートさんが用意してくれた昼飯をご馳走になった後に集めてきたポイントの情報を交換しながら買ってきた紅茶を飲む事にしたんだが……


「おおぅ……この紅茶、味は良いけどメチャクチャ甘いな……砂糖も入って無いのにどうなってんだ?」


「えぇ、お店の方がご説明されていた通りで香りもフルーツの様ですね。」


「えへへ!何と言うか、もっともっと飲んでいたいなって思えちゃうぐらい美味しい紅茶ですね!」


「ふふっ、コレが九条さんとイリスの関係に合った物だと言うのならば2人の関係は凄く甘いものに見られたのかな。」


「うふふ、照れてしまいますね九条さん。」


「……どうだろうな……そんな事よりもソフィ、闘技場に寄って来たんだろ?ガドルさんとサラさんは王都に居たのか?」


「うん。数日後に闘技場で試合があるから戻って来てた。」


「へぇ、それじゃあ挨拶はもう済ませてきたのか?」


「それはまだ。ぱぱとまま、イベントに参加してて家に居なかった。」


「ふーん、あの2人もイベントにねぇ……でも、それならどうすんだよ?明日にでもまた会いに行くのか?」


「ううん、行かない。」


「えっ、何でだ?」


「試合当日になれば必ず闘技場に姿を現す。だからその時に挨拶をするらしいよ。」


「大きい迷路みたいな王都の中でガドルさんとサラさんを探すよりも、そっちの方が確実ですからね。」


「あぁ、それもそうか……だったらその時に俺も挨拶しときたいんだが……イリス、悪いんだがその日は闘技場に付き合って貰っても大丈夫か?」


「えぇ、構いませんよ。九条さんが行きたい所は僕が行きたい所でもありますから、何処へでもご一緒させて頂きます。」


「……うん、そう言ってくれると助かるよ……」


 ただまぁ、叶うならそのねっとりとした視線で俺を見つめないで欲しいんだが……そんな事をこの場でお願いする勇気なんて持ち合わせてないんだよなぁ……はぁ……


「ソフィさん、その試合って具体的には何日後に開催されるんですか?」


「3日後。午前10時から第1試合が始まる。ぱぱの試合は決勝戦の後。」


「優勝した方と王者の座を賭けて戦うんですよね。」


「ふふっ、懐かしいね。私達もそうやってソフィと戦ったんだよね。」


「……あぁ、あの時はまさかここまでの仲になるとは思わなかったな。」


「うん、だから嬉しい。皆と出会えて、仲良くなれて。」


「えへへ~!私もですよ、ソフィさん!」


 ……互いに微笑み合いながら小っ恥ずかしいやり取りをしている2人を見つめつつ甘ったるい紅茶を飲んで喉を潤していると、使い終わった食器類を洗いにいっていたアシェンさんとルバートさんが部屋に戻って来た。


「皆さん、お待たせして申し訳ありません。」


「あっ、いえいえ!そんなに待っていませんでしたから気にしないで下さい。」


「うふふ、そうですか?では、早速ですが午後からの依頼をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「えぇ、分かりました。」


 2人がそれぞれの座り位置に戻って行くのを見送った後、俺達は依頼をこなす為に仮面を付けた怪しいメイドと出会う事になったきっかけの話を始めるのだった。

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