第536話
「うぅ……すみません……私がしっかりしていなかったばかりに……」
「いえ、一緒に居た俺も気付かなかったんで同罪ですよ……それよりも困ったな……まさか大通りに着いてすぐにあいつ等とはぐれちまうとは……」
大通りに面した屋台を回り始めてから数十分が経った頃、大勢の人込みに揉まれてしまった俺とルゥナさんは一緒に来ていた皆と散り散りになってしまっていた。
「どうしましょうか?やはり関係者の方に事情をご説明して迷子案内の放送をお願いした方が……」
「うーん、流石にあいつ等もそんな放送されたらかなりの恥になると思うのでそれは止めといた方が良いと思いますよ。」
「で、ですが……」
今にも泣き出しそうな表情のルゥナさんに見つめられた俺は、彼女の両肩にそっと手を置くと首をすくめながら小さく笑みを浮かべた。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよルゥナさん。あいつ等も年の割にはしっかりしている方ですし、何かあれば自分達で対処するぐらいの力はあるはずですからね。ダンジョン攻略の時だって、ボスを相手にしてちゃんと戦っていましたよね。」
「そ、それは……」
「だから安心……するのは難しいかもしれませんが、あいつ等の事を少しだけ信じてやって下さい。それにもしもの時は俺が絶対に何とかしますから。」
……おぅふ!久しぶりに自分の発言でダメージが……!でも、ここまで不安そうにされたら少しぐらい頑張んねぇと後で何を言われるか……ここは羞恥心を押し殺してでもルゥナさんの気持ちを落ち着かせなければ……!
「……あの……九条さん……」
「は、はい?どうかしましたか?」
「……ありがとうございます……」
「あ、あはは……別にお礼を言われる事は何も……あっ、それよりもこれからどうしましょうか?迷子の時はその場から動かないってのがお決まりですが、どう考えてもあいつ等はそうしそうにありませんし……」
「ふふっ、確かにあの子達がその場で大人しくしているとは思えませんね。」
「え、えぇ!だからその……ここでジッとしているのも何ですから、あいつ等の事を探すついでにお踊りにある屋台を見て回ってみませんか?もしかしたら、途中で合流出来るかもしれませんから。」
「……はい、折角ですしそうしましょうか。」
不安はぬぐい切れなかったみたいだがようやく少しだけ笑顔が戻ったルゥナさんと目を合わせながらホッと胸を撫で下ろした俺は、大勢の人で賑わってる大通りを軽く見渡すと頭をかきながら再び彼女と目を合わせた。
「えっと、何処か気になる屋台とかありますか?」
「うーん、そうですねぇ……あっ、あのわたがしというのが気になります。」
「あぁ、アレですね!分かりました、それじゃあ行きましょうか。」
少し離れた先にあるわたがし屋に視線を向けたルゥナさんに背を向けて静かに歩き始めた俺は、この状況が色々とマズイ気がしてきたのでなるべく早く皆と再会出来る事を心の底から祈りまくるのだった……!
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