第480話
「くっくっく、まさか私達の居ない所でそんな面白い事が起きていたなんてね。その現場を見られなかったのが非常に残念だよ。」
「いや、笑い事じゃねぇっての……こっちはマジで死ぬかと思ったんだからな。」
紙袋を被った変人がヤンキー美少女に追い回されているという奇妙な光景を王都に暮らす人々が目撃する事となった日の夜、俺はロイドがおかしそうに笑っている姿を見ながらテーブルの上に頬杖を突いて大きくため息を零していた。
「ふふっ、ごめんごめん。でも、九条さんは本当に優しい人だね。自分の事を嫌っている相手に為に危険を冒してでも助け出そうとするなんてさ。」
「……別にアイツの為じゃねぇよ。後々になって面倒事に巻き込まれたくないから、その前に原因なるかもしれない可能性を潰してきただけだ。」
「はいはい、そうですよねぇ~私達はシッカリ分かっていますよ~」
「オイ、本当に分かってんのか?」
「えぇ、勿論ですよ。」
「……だったらこっちを見ながらニヤニヤすんなっつうの。」
マホからサッと視線を逸らして目の前に置かれたティーカップを手に取った俺は、中に入っていた紅茶をグッと飲み干して背もたれにドカッと体を預けた。
「ふむ、それにしてもフィオはどうしてそんな危ない事をしていたんだろうね。」
「さぁな、アイツの言い分からすると単に喧嘩したかっただけじゃねぇのか?」
「……それなら闘技場で試合をすれば良いのに。」
「あー、確かにフィオさんの実力なら王者も夢では無いかもしれませんよね!」
「ふふっ、磨けば光る物を持っているのは間違い無いだろうね。これはエルアに続く弟子候補の誕生かな?」
「いやいや、恐ろしい事を言うんじゃねぇよ……アイツの場合は強くなる為だったら師匠を殺す可能性すらあるんだからな。」
「おぉ!つまりご主人様はフィオさんが最強を目指す為に乗り越えなくてはいけない大きな壁となる訳ですね!流石です!」
「アホか!その展開の先に待っているのは死だけじゃねぇかよ!」
「師匠の亡骸を抱えて涙ぐむ美少女……絵になるとは思わないかい?」
「絵にはなるだろうけど、俺はその場面を目撃出来ねぇだろうが!」
「……それじゃあ弟子の亡骸を抱えながら九条さんが泣く?」
「それも嫌すぎるわ!俺は残りの人生を牢屋の中で過ごすつもりはないんだよ!」
「もう、ご主人様ったら我が儘ですね。そんな事だと立派な師匠になれませんよ!」
「だからそもそも最初っからなる気が無いんだよ!俺は平和で穏やかな時間が続けばそれで良いの!分かったか!?」
「うーん、それは非常に難しい話だね。」
「そうですねぇ……ご主人様がそう願っていたとしても、厄介事や面倒事が向こうの方からやって来ちゃってますからね。」
「うん、それに九条さんも困っている人は見捨てられない性格。」
「ふふっ、そこが素敵な所であり困った所でもあるね。」
「はい、本当にご主人様の事を心配するこっちの身にもなって欲しいですよね。」
「私達の知らない所で傷つくのは嫌。」
「あぁ、もっと私達を頼って欲しいかな。これまでの恩も返したいからね。」
「……お願いします……もう勘弁して下さい……!」
唐突に始まった精神攻撃のせいでメチャクチャ顔が熱くなってしまった俺は、額をテーブルに
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