第475話
前日に引き続き家の前まで迎えに来てくれた馬車に乗り込んで学園までやって来た俺達は、生徒との接し方や授業の進め方に関してルゥナさんからアドバイスをもらいそれを何とか活かそうと試行錯誤をしながら講師活動をこなしていって……
(あぁもう、後少しで屋上だったってのに……!ヤベェ……完全に遅刻してる……!)
(まぁまぁ、そんなに焦らなくてもエルアさんとイリスさんなら事情を話せば理解をしてくれますって。)
(そ、それはそうかもしれんが……待たせてる事実がある以上は急がねぇと!)
4時間目の授業が終わり昨日と同じ理由で2人と別れた俺は休み時間に指定された屋上に向かっていたんだが、職員室前で沢山の荷物を抱えたドクターと顔を合わせてしまった俺はエルアとイリスに悪いと思いながら手助けを申し出てしまっていた。
いや、そこまでならまだ良かったんだけど保健室にやって来た途端にドクターが色々と絡んできて……!2人を屋上で待たせていると説明してどうにか逃げ出す事に成功はしたんだが、気付いたら階段を駆け上がらなくちゃいけない状況だった訳だ!
(ご主人様、大丈夫ですか?息がかなり上がっているみたいですけど……ほんの少しだけ休憩した方が良いんじゃないですか?)
(そ、そんな訳には……言いたい所だが……そうだな……ちょっとだけな……)
1階から5階の途中まで来た時点で既に虫の息になりかけていた俺は、壁にもたれ掛かり荒くなった呼吸を整える様に深呼吸を繰り返していた……!
「……ぃ。」
(み、水が飲みたい……!けど、学園内って魔法の使用が禁止されてんだよなぁ……)
(うーん、こっそりだったらバレないんじゃないですか?)
(………いや、誰が見てるかも分からないからな……変に目立ってロイドやソフィに迷惑を掛けるのだけは避けたい……)
(……えへへ、それなら頑張って屋上に行くしかないですね!)
「……オイ。」
(そうだな……こうなりゃ最後の気力を振り絞るとしまっ?!)
(ご主人様!?)
階段を上がる決意をして振り返った次の瞬間、いきなり胸倉をガッと掴まれた俺はどういう訳だか思いっきり壁に押し付けられてしまっていた!?
「テメェ、さっきから呼び掛けてんのに無視するとは良い度胸だな……アッ?」
「ひっ!」
えっ、何なんだこの状況?どうして俺は銀髪の赤髪メッシュの美少女に思いっきり締め上げられているんだ?つーかこの子は誰なのっ!?
「もしかして俺が女だと思って舐めてんのか?」
「ち、違います!舐めてません舐めてません!」
(ご、ご主人様!コレは一体何がどうなっているんですか!?)
(そ、そんなの俺が教えて欲しいっての!マジで意味が分からなすぎる!)
(本当ですか?!またイリスさんの時みたいに忘れてるだけなんじゃないですか!)
(それは無い!絶対に無い!こんなに怖い子を忘れるなんてあり得ねぇもん!)
ってか俺の願望って異世界転移でしたよね!?それがどうしてヤンキー学園モノに変更されているんだ!?こんな事は1ミリたりとも願った覚えは無いぞ!?
「……おい、何をしてんだ。」
「……アァ?」
美少女とヤンキーという俺にとっては最悪な組み合わせにどうしようも出来なくてマジで少しだけ泣きそうになっていると、俺の胸倉を掴んでいる腕に誰かの手が急に伸びて来て……って、コイツは!?
「どんな事情があるのか知らねぇけど、こんな事は止めろ。」
「……痛い目に遭いたくなかったら関係ない奴は引っ込んでろ。」
「悪いがそういう訳にはいかない。こうして目撃しちまった以上はな。」
「……ほほっ。」
「オイ、何を笑ってんだ?」
「ひっ!すみませんすみません!何でもありません!」
「……チッ。」
あ、危ねぇ……!助けに来てくれた少年がミアと関りがあって俺が執事をしていた時に主人公だと思った覚えのあるユートって奴だった事と、目の前で繰り広げられていたやり取りが異世界学園モノにありそうなイベントだったからつい反応を……
いやでも、これは絶対にアレだよな!俺の予想が正しければこの後に起こりえるであろうやり取りはアレ以外にありえないよな!?
「ほら、さっさとこの手を放してこの人を解放してやれよ。それにこんな所、先生に見られでもしたら大変な事になっちまうぞ。」
「……お前、確かユートとか言ったよな?何時も女と一緒に居るふぬけが、偉そうに指図してくるんじゃねぇよ。」
「……何だと?」
「どうした、本当の事を言われてムカついたか?」
「……っ!いい加減にしろよ……!」
「それはこっちの台詞だ。関係無い癖に首を突っ込んてくるんじゃねぇよ。それともアレか?オレの事、力づくでどうにかしてみるか?」
「……あぁ、分かったよ。その挑発に乗ってやる。」
「……そうか、それじゃあ戦闘訓練所に行くぞ。」
キタキタキタッ!これはアレだよな?決闘した末にヤンキー美少女が主人公に敗北して、それから何やかんやとイベントが展開していっ最終的にメインヒロインになるというアレだよな!?いやぁ、まさか目の前でコレが見られるとは……!
うんうん、その為の踏み台として俺は選ばれたという訳だな!何で絡まれたのかはマジ分かんねぇけど、そんな事はもうどうでも良い!ひゃっほう!ってっ、そうだ!
(ロイド!ソフィ!悪いんだけど屋上に行ってエルアとイリスに行けそうにないから弁当は後で貰うって言っといてくれないか!)
(ん?急にどうしたいんだい?何か用事でも出来たのかな。)
(あぁ!ちょっと面倒事に巻き込まれてな!これから戦闘訓練所に行く事になった!)
(おや、そうなのかい?私達も同行した方が良いかな。)
(あ~いや!とりあえずエルアとイリスの所に向かってくれ!その後にどうするかは任せるわ!)
(了解、それでは2人に報告したらすぐに向かうよ。)
(はいよ!そんじゃあ、また後でな!)
(……ご主人様、何を喜んでいるんですか?折角のお弁当、食べられなくなったかもしれないんですよ。)
(大丈夫だって!どうせ俺の事なんてすぐに忘れられるからさ!それよりもマホ……これから面白くなってくるぞぉ~!)
(はぁ……どうなっても知りませんからね。)
「オイ、分かってると思うがテメェも一緒に来るんだからな。もし逃げたりしたら、後でどうなるか……」
「は、はい!勿論、分かってます!」
うん、色々と楽しみだけどやっぱりこの子はマジで怖いね!とりあえず、主人公は頑張って恋愛フラグを成立させてくれよな!その後の事は知らんからさっ!
そんな事を考えながら大人しく駆け上がってきた階段を連行される様に戻り始めた俺は、心の中ではウキウキしながら2人の後をついて行くのだった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます