第455話
「よっこいせと……思ってたより到着に時間が掛かったな……どうする、宿屋に寄る前に晩飯でも食べに行くか?」
少しだけ陽の落ちてきた頃合いに王都の広場に降り立った俺は、乗って来た馬車が見えなくなるまで見送るとすぐに振り返って皆にそう質問した。
「うーん、私としてはそうしたいんですが……ロイドさんとソフィさんはどうしたいですが?」
「私はどちらが先でも構わないよ。」
「私もどっちが先でも大丈夫。」
「そうか……よしっ、それじゃあマホ。近場にある飲食店までの案内を頼めるか。」
「はい!あっ、でもちょっと待って下さい。実は王都に関する観光の本を読んでいて気になるお店を見つけたんですよ。なので、そこに行ってみても良いですか?」
「あぁ、別に平気だけど……マホ、何時の間にそんな本を買ってたんだ?」
「えっと、クエストをやるって改めて決意した次の日です。ほら、私達って王都には何度か来ていますけど旅行が目的で訪れた事は無かったじゃないですか。」
「……確かに、これまでは他の街に行く為に寄ってるだけだったからな。」
「そうですよね。だからこの間、観光向けの本を買ってきたんですよ。一応バッグの中に入れてあるので後でおじさんも見てみますか?」
「おう、宿屋に着いたら貸してくれ。」
「分かりました!それじゃあ時間も時間なので、そろそろ行きましょうか!」
「うん、そうしようか……って言いたい所だが、私達にお客人みたいだよ。」
「お客人?……えっ、あの人はまさか……セバスさん?」
いきなりおかしな事を言い出したロイドが見つめている先に視線を向けてみると、見覚えのある優雅に微笑む老紳士がこっちに向かって歩いて来ている姿を発見した。
「お久しぶりでございます九条殿。こうしてまたお会い出来ました事、非常に嬉しく思っております。そして皆様、お初にお目にかかります。私の名はセバス・チャン。ミアお嬢様の執事をしている者でございます。」
「えっ!ミアお嬢様って……お、おじさん!本当なんですか?」
「……あぁ、この人は俺が奉仕させられた時に色々とお世話になった人だよ。まさかこんな所で再開するなんて思いもしてませんでしたが……今日はどうしたんですか?もしかして……クエストがご破算になったとか?」
「いえ、そんな事は決してございませんのでご安心を。」
「……まぁ、そうですよね。それじゃあどうしてここに?俺達に何か用事でも。」
「はい、明日のご予定について幾つかお話しておく事がありましたのでお待ちさせて頂きました。詳細につきましてはこちらに書いておりますので後でご確認下さい。」
「あっ、どうも。」
執事服の内ポケットから取り出された小さな紙を受け取ってから明日の事について色々と説明された俺は、そのついでに皆が自己紹介をしていくのを聞いた後に改めてセバスさんを向かい合うのだった。
「それでは皆様、私はこれにて失礼させて頂きます。」
「はい、今日は色々とありがとうございました。」
「いえいえ、それではまた。」
ニコッと笑みを浮かべながら深々をお辞儀をしてくれたセバスさんは、俺達に背を向けて歩き出すと広場に停まっていた馬車に乗り込んで去って行くのだった。
その後、俺達も広場を後にしてマホの言っていた飲食店で晩飯を済ませると宿屋に向かい明日の為に早めに就寝するのだった。
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