第352話
「……うん、もうそろそろお昼時になるから模擬戦はこれぐらいにしておこうか。」
「はぁ……はぁ……はぁ………分かった………」
「うふふ。ソフィちゃん、汗を拭いてあげるからジッとしていてね。」
「うん……ありがとう………」
(……おい、見たかマホ……)
(はい……あのソフィさんがガドルさんに軽くあしらわれ続けてましたね……実力の差があまりにもありすぎてちょっと引きそうです……)
(同じく……って言うか、俺は既にガドルさんの強さに引いてるけどな……)
魔法を使っての奇襲も目にも止まらぬ速さで四方八方から仕掛けた攻撃も、その場からほとんど動かずに防ぎ切るって流石にヤバすぎじゃなんじゃないですかねぇ……
しかも珍しくソフィが息切れしているって言うのにガドルさんは涼しい顔のままでニッコリと微笑んでいるし……何なら恐怖すら感じるレベルなんですけど……
そんな事を考えて顔を引きつらせながら少し離れた場所でサラさんに顔を拭かれているソフィの姿をぼんやり眺めていると、ガドルさんが不意にこっちの方を見てきて静かな足取りで歩み寄って来た。
「九条さん、お待たせしてしまってすみませんでした。退屈でしたよね。」
「いやいや!別にそんな事も無かったんですが………あの、ソフィとガドルさんって以前からあんな感じで模擬戦をやったりしてたんですか?」
「えぇ、そうですね。あっ、お互いにきちんと手加減していますから心配しなくても大丈夫ですよ。ご覧の通り、私もソフィも傷1つ負っていませんから。」
「な、なるほど……確かに……」
(まぁ、ガドルさんは攻撃を防いでいただけで反撃は一切してませんからね……)
(そうなんだよなぁ……やっぱり俺達とは実力の差がえげつないんだろうな……)
(それに追加してレベルとステータスと経験の差も凄いと思いますよ……)
(だろうな……)
頭の中でマホとそんなやり取りをしていると、汗を拭かれ終わったらしいソフィと小さなタオルを手にしたサラさんがこっちに向かって歩いて来た。
「あらあら、男の人同士でなんのお話をしていたんですか?」
「ははっ、別に大した事は話してないよ。ですよね、九条さん。」
「え、えぇ!昔から模擬戦をしていたのかって聞いていただけで……」
「あぁ、そういう事でしたか。うふふ、もしかしなくても驚かれましたか?」
「えぇまぁ……あんなにマジで戦うなんて思いもしてなかったので……」
「ふぅ、九条さんもそう思いますよね?私もあんな風に戦うのはどうかなと思ったりするんですけど……」
「……本気でやらないとぱぱにもままにも追い付かない。」
「こんな感じで、ソフィちゃんったら攻撃の手を緩めてはくれないんですよね。」
「へぇ……ってちょっと待って下さいね…ソフィ、ぱぱにもままにも言った様な気がするんだが……まさか、サラさんとも模擬戦をしてるのか?」
「うん、ままは魔法の扱いがとっても上手くて強いから何度か戦った事がある。」
「もう、それは私が冒険者をやっていた頃の話でしょ?今はもう引退したんだから、模擬戦の相手はしてあげられないわよ。」
「……残念。」
「ははっ、ソフィはサラさんには一度も勝てなかったからね。だからもう一度ぐらい再戦の機会を与えてあげても良いと思うんだが……」
「ガドルさんまで……絶対に、相手はしませんからね。」
「……分かった。ままの気が向いてくれるまで待ってる。」
「あらあら、この子ったらもう……期待するだけ無駄ですからね。」
うわぁ……穏やかに微笑んでいらっしゃる……つーか今更ながらだけど、ソフィがこの2人から生まれたんだなって改めて実感する事が出来ましたね……
「さてと、それじゃあお喋りはこれぐらいにしてそろそろ街に戻ろうか。九条さん、もしよろしければシッカリとしたお料理が食べられるお店に案内してくれませんか。私もソフィも運動の後でお腹が空いてしまって……」
「あぁはい、分かりました。」
まぁ、あんだけ激しく戦いまくってりゃ腹も減るわな……そんな感想を抱きながら皆を引き連れて街に戻って行った俺達は、マホを連れて来る振りをする為に一度家に寄ってから大通りにあるガッツリ系の料理を出す飲食店に足を運ぶのだった。
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