第319話

 この街にやって来た旅行者が珍しいのか何とも居心地の悪い視線を街の住人達から送られながらしばらく大通りを歩いていた俺は、視界に入る全ての建物に他の街では見た事が無い特徴がある事に気が付いた。


「……人間と戦争していた時の名残なのか知らないけど、この街の建物にある窓ってどれもこれも頑丈そうな鉄格子で覆われてるんだな。」


「えぇ、そのせいで街全体が牢獄って感じがして少し怖いです……おじさん、お願いですから手を繋いでもらっても良いですか?」


「はいはい、分かりましたよ。」


「はっはっは、それではもう片方の空いている手はわしが握っておいてやろう!」


「あ、ありがとうございます……」


「おやおや、こうして後ろから3人の姿を見てみるとまるで親子の様だね。」


「……ロイド、そう言われても反応に困るんだが。」


「確かにそういう経験が1つも無いお主には、父親役は務まらんじゃろしなぁ。」


「おいコラ、いきなり人の心を踏み荒らしてくるんじゃねぇよ。って言うか、俺にもそういう経験の1つや2つぐらい……」


「おじさん、嘘を吐くと後で後悔するんですから止めといた方が良いですよ。」


「マホの言う通り。それに九条さんの魅力はここに居る私達が知っているから、別に卑屈になる必要は無いんだよ。」


「九条さんは格好良い。大丈夫。」


「……何が大丈夫なのかは全然分からないが、そんなに気を遣われると逆にみじめになるから止めてくれるかな?ちょっと泣きたくなってくるから。」


 ロイドとソフィの優しさを受けて思わずため息を零したその直後、隣からぐぅ~と小さな音が響いてきて……


「うむ、そう言えばもう夕食時になっておったのだな!これ九条、宿屋に向かう前に何処かで食事をしようではないか!」


「おまっ、馬車の中であんだけ菓子を食ってたのにもう腹が減ったのか!?」


「はっはっは!甘い物は別腹だという事じゃな!」


「いやいや、それは明らかに使い方を間違っている気がするんだが……まぁ良いや、昼から何も食ってないから俺もそろそろ腹が減ってきたし……マホ、そんな訳だからここら辺にある飲食店を探してくれるか。」


「はい、分かりました!」


 俺とレミに手を繋がれたまま目を閉じてインストールされたマップの検索を始めたマホの姿を横目に見ながら周囲にある店を観察してみたんだが……


「うーん、こうして見てみると働いているのって魔人種の人ばっかりだな……俺達が行っても大丈夫なのか?」


「九条さん、数は少ないけどちらほら人間のお客さんが居るのが見えたからそんなに心配しなくても大丈夫だよ。」


「えっ、そうなのか?」


「あぁ、だから胸を張って堂々とお店に入れば良いんだ。」


「そうですよ!私達にはやましい事なんて1つも無いんですから!って、それよりもここから宿屋に向かう途中にお店を何軒か見つけたので行ってみましょうか!」


「うむ!どんな美味い夕食を味わえるのか、今から楽しみじゃのう!」


「……よしっ、何か言われたらその時はその時だ!マホ、案内を頼んだ!」


「了解しました!」


 手を繋いだ俺とレミを引っ張りながら歩き始めたマホに連れて行かれて幾つか店を見て回った俺達は、その中で一番お手頃価格な料理を提供してくれる店に足を運んで晩御飯を食べる事にした。


 最初の内は街を歩いている時と似た様な視線を感じていたがそれもあっと言う間に無くなって、俺達はごくごく普通に食事を楽しむ事が出来た。


 その後はメチャクチャ丁寧に接客をしてくれた美人でエルフのお姉さんにドギマギしながら店を出て行って、そのまま目的の宿屋に向かって歩いて行くのだった。

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