第320話
「へぇ……建物自体はそんなに大きそうに見えなかったけど、部屋の中は結構広々としてるみたいだな。」
「そうですね!それにこの案内図によると、寝室も大きいのと小さいのがあるみたいですから今晩はご主人様もベッドで眠れますよ!」
「おっ、本当だな!」
「ふふっ、良かったね九条さん。」
「あぁ、1週間近くここで過ごすってのにソファーでは寝てられないからな……」
「はっはっは、そんなに辛かったのなら昨夜もベッドを使えば良かったではないか。お主にはわし達を襲う度胸なんぞありはしないのじゃろう?」
「……確かにそれはそうだが、そんな事が出来る訳ねぇだろっての。」
「ぐぬっ!神様であるわしの頭をチョップするとは罰当たりな奴め。そんな事をしておるとお主に天罰を下すぞ!」
「うわぁーこわーい……って、それよりもさっさと荷物を片付けちまおうぜ。それにこの街に来る道中でモンスターと戦った時の汗もさっさと流したいしな。」
「あぁ、かなり手強い相手ばかりだったからね。トリアル周辺に出現するモンスターとは明らかにレベルが違うと感じたよ。」
「うん、また戦ってみたい。」
「……時間に余裕があったら斡旋所に寄る事を考えてやるから、そんな期待に満ちた瞳でジッと見てくるんじゃありません。」
やる気が溢れているソフィから視線を逸らしつつソファーから立ち上がって荷物の整理を始めた俺達は、それから順番に風呂に入って寝間着に着替えると部屋に備えてあった紅茶を飲みながら明日の予定を再確認する事にした。
「えっと、明日のウィルさん達との集合場所は……」
「ファントリアスの案内所の前ですね!そして皆さんと合流した後は、人間になれるお薬をくれるドクターさんが住んでいらっしゃる……その………」
「お化け屋敷に行く。」
「うぅ……そうなんですよねぇ……ドクターさんはどうしてそんな所に……」
「はぁ……診療所を構えるんならそんな場所を選ぶなってんだよなぁ……」
「なんじゃなんじゃ、マホはともかくお主まで幽霊が苦手なのか?」
「べ、別にそんな事はねぇよ!た、ただ……アレだ!ドクターって名乗るんだったらお化け屋敷なんて縁起の悪そうな所を選ぶ事はねぇだろって思っただけだ!」
「なるほどのう……まぁ、お主がそう言うのならそういう事にしておいてやろう。」
「ぐっ、何で上から目線なんだよ……!」
ニヤニヤしながらこっちを見てくるレミに若干イラっとしながらカップに入ってる紅茶を一気に飲み干した俺は、ソファーに座ったまま頬杖を突きながらそっぽを向き大きく息を吸い込んでからため息を吐き出した。
「ふふっ、それじゃあ九条さん。ドクターに会いに行った後はどうしようか。」
「……そう言えば、昼前には診療所を出るって話だったな。」
「あっ、それならお昼ご飯は皆で一緒に食べるんですよね!」
「あっちに予定が無かったらだけどな。そんでそっから先の予定は………そうだな、街中を見て回るついでにフラウさんのイベントがやる会場にでも行ってみるか。」
「それ良いですね!もしかしたらフラウさんに会えるかもしれませんし!」
「そうしたら、イベントに招待してもらったお礼を言わないとだね。」
「お土産も渡す。」
「おう、それじゃあ……って、大丈夫だよなレミ?まさか買ってきたやつ全部に手を付けた訳じゃ………無いよな?」
「…………てへっ!」
「おい!てへっじゃねぇよ!どうなんだ?食ったのか?食ってないのか?」
「ふっ、そんな細かい事はいちいち覚えておらん!それに買ってきた物に手を出したのはマホも一緒じゃからな!」
「い、いや待って下さい!確かに私も食べましたけど、きちんと幾つかは残してあるはずです!」
「は、はずってどういう事だよ!?いや、それよりも早く確認するぞ!開封してあるやつをお土産ですって渡す訳にはいかないからな!」
そんな事をしたらフラウさんから苦笑いをされてしまって俺の好感度ががががが!そ、それだけは絶対に阻止しなくては!もしも全部が開封してあるんなら、明日中に新しい土産を買う必要があるからな!!
そんな決意をしながら持ってきた大量の袋をひっくり返して確認してみた結果……何とか未開封の物を見つける事が出来て、俺は心の底からホッとするのだった!ってこんだけあるのにどんだけ食い漁ってんだこいつ等は!?
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