第278話

 親父さんとシーナに3つの素材とロイドとソフィの武器を預けた翌日、俺は久々に訪れた日常をまったり過ごそうかと思ってベッドに横になりながらラノベを読もうとしていたんだが………


「九条さん、私達が買った武器を試したいから討伐クエストに付き合って欲しい。」


「…………え?」


 いきなり部屋にやって来たソフィのそんなお願いをよく考えもせずにあっさり引き受けちまった俺は、街外れにある草原の中で昆虫系のモンスターと汗水垂らしながら戦闘を繰り広げていた!


「九条さん!そっちにモンスターが向かったよ!」


「はいはいってマジで気持ち悪いなコイツ!?」


 羽を高速で動かしながら飛んで来やがったクワガタみたいなモンスターを目にして鳥肌を立てながら思わず絶叫してしまった俺は、嫌悪感をむき出しにしながら武器を構えて眼前を睨みつけた!


 そしてクワガタと言えばお馴染み……なのかどうかは知らないが2本の角を使った木ですら簡単にへし折る挟む攻撃を後ろに飛んで躱した後、俺はそれらを斬り落とし魔法を使ってモンスターを火だるまにして倒してやった!


「よしっ!これで最後ってあっついな!!」


(こんな炎天下の中で体の大きなモンスターを燃やしたら熱くなるに決まってるじゃないですか!ほら、早く水の魔法を使って火を消して下さい!)


「そ、そうだな!」


 パチパチと焼けている音を出しているモンスターの亡骸に大量の水を掛けた俺は、流れ出る汗を手で拭いながら荒くなっている息を整えるのだった………


「ふぅ、これでクエスト達成だね。お疲れ様、九条さん。」


「おう……お疲れさん………」


「……大丈夫?」


「な、何とかな……それよりも2人共、武器を使ってみた感じはどうだったんだ?」


「あぁ、私のは使い心地も斬れ味も良くて満足しているよ。ソフィはどうだい?」


「私も斬れ味に関しては文句はない。だけど耐久性がちょっと心配。」


「そうか………だったらそれについては後で考えるとして、今日は納品を終わらせてさっさと帰ろうぜ……」


 ため息を零しながら武器を収めて軽く前屈みになった俺は、右手を頭の上に乗せてそこから少しずつ水を流していくのだった………


「ふふっ、私も髪の毛が首がベタベタだからその意見に賛成させてもらうかな。」


「私も、早くお風呂に入りたい。」


 ……なんだろう、ロイドとソフィが首筋にへばりついている髪の毛を払ってる姿を見ていると妙に興奮していやいやそうじゃない!!


「おや、どうしたんだい九条さん?首をそんなに激しく振ったりして。」


「ちょ、ちょっと虫が顔の周りを飛んでたんだよ!うん!それだけ!」


「ふむ……」


 あ、危なかったぁ……!暑さのせいで思考がバカになっていたとは言え、ロイドとソフィに対して何を考えてるんだ俺は!?こんな事を考えていたのがバレちまったら絶対におもちゃにされちまうじゃねぇか!うん、これからはもっと気を付けねば!


 頭の中に浮かんできた煩悩を洗い流す意味も込めて水の量を増やした俺は、両頬をバチンと叩いて気合を入れなおすと皆と一緒に街に戻って行くのだった。

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