【完結】おっさんの異世界生活は無理がある。

第247話

「えぇ？！あの人達、アリシアさんにもちょっかいを出していたんですか！？」

「全く、とんでもない方達ですわね！やはり海の藻屑にすれば良かったですわ！」

「まぁまぁ、それよりも九条さん達は随分と運命的な再会を果たしていたんだね。」

「いやぁ、別にそんな運命的って感じでは無かったんだけどな……」

「おじさん、正体がバレない様にって物凄く恥ずかしい真似をしてましたからね。」

「……それってどんな事？」

「えっとですね、フードを被ってサングラスを」

「こら、余計な事を言うんじゃない！……そう言えばアリシアさんとシアンは昼飯はどうするんだ？もし良かったら俺達と食べるか？焼きそばも結構あるしさ。」

「いえ、お誘いはありがたいのですが家族が私達の帰りを待っておりますので……」

「出来る事なら皆さんとご一緒したかったんですけど……申し訳ありません。」

「あぁいや、謝らなくても大丈夫だって。こっちも急に誘ったりして悪かったな。」

「そ、そんな！お誘いして頂いた事が嬉しかったのは事実ですから。」

「ふむ……それならば機会があえば一緒に食事でもするかい？私達はクアウォートに2週間程滞在する予定だからね。」

「あっ、それ良いですね！皆さんはどれぐらいクアウォートに居るんですか？」

「え？あ、私達は1週間と少しの間ですが……本当によろしいのですか？」

「勿論、君達が嫌ではなければね。」

「嫌と言う訳ではないのですが………ロイドさんのライバルとして、ご一緒に仲良く食事をするとのはどうかと思ってしまいますわね……」

「はぁ、学生時代のライバル関係を何時まで引きずるおつもりですか？こんな機会は滅多に無いのですから、つべこべ言わずにお受けになりなさいな。」

「ふ、ふん！私はロイドさんに勝つまでライバル関係を止めるつもりはありません！で、ですがまぁ……そこまで言うならばお食事をしてあげてもよろしいですわ！」

「あぁ、どうもありがとう。実は学生時代の頃から君と食事をしてみたいなと思っていたんだよ。」

「そ、そうだったんですの？」

「うん、だからその日が来るのを楽しみに待っているよ。」

　おぉ、ツンデレお嬢様と爽やか王子様のやり取りとして見てみると凄く面白いな！ただ、それを嫉妬しながら眺めているファンの方達がメッチャ怖いんですけど………

　そんな事を考えながら苦笑いを浮かべているシアンと目を合わせた直後、そっちの方からぐぅ～～と可愛らしい音が聞こえてきた。

「あっ、す、すみません！」

「いや、こちらも長々と付き合わせてしまってすまなかったね。」

「……それでは、私達は失礼させて頂きますわね。」

「おう！」

「アリシアさん、シアンちゃん、また今度です！」

「えっと、お気を付けてお帰り下さいね。」

「アリシアさんは戦闘能力が皆無なのですから、危なくなったらすぐに助けを求める事をお勧めいたしますわよ。」

「わ、私は子供ではありませんのでそんな事は言われなくても分かっていますわ！」

「あらあら、先ほど聞いた話では助けを求める事も出来なかった様ですが？」

「そ、それは私一人でも何とか対処する事が出来ると思ったからですわ！それよりもリリアさんはロイドさんにベッタリくっつきすぎてご迷惑を掛けない事をお勧め致しますわよ！」

「なっ？！私はロイド様にご迷惑を掛ける様な真似は致しませんわ！」

「ふんっ、それはどうでしょうね？」

「お、お姉様！落ち着いて下さい！」

「リリアさんも！」

「……こうやって見ていると、アリシアさんのライバルってロイドじゃなくてリリアさんって感じだよな。」

「えぇ、私もそう思います……」

　マホと一緒にため息を零しながらライルさんとシアンになだめられてるお嬢様達を眺めていると、アリシアさんが急にハッとして腰にぶら下げていたポーチの中を探り何かを手に取ってロイドに近寄って行った……？

「おや、どうしたんだい？何か私に渡す物が？」

「え、えぇ……こちらをどうぞ。」

「どうも……ふむ、ここに書かれているのはお店の名前かい？」

「はい、実は私達の両親がクアウォートで新しい事業を始めましたの……もしお時間があればよろしいんですが、ご昼食後にでも立ち寄って下さい。」

「あぁ、分かったよ。必ず寄らせてもらう。」

「で、では、今度こそ本当に失礼させて頂きますわね……」

「そ、それでは失礼します！」

　体力を消耗したアリシアさんと彼女の手を引いて歩くシアンの姿を見送った俺は、これまた同じ様に疲れているリリアさんを横目に見ながらロイドの方を向いた。

「さてと、そんじゃあ俺達もさっさと飯を食っちまうかね。その名刺に書かれている店に行かないといけないからな。」

「そうだね。」

「……おなかすいた。」

「私もです！それじゃあ皆さん、２種類の焼きそばを買って来ましたので分けながら食べましょうか！」

　微笑みながらそう告げたマホの言葉を合図にしてようやく昼飯を食べ始め…………最後にデザートのかき氷を食べ終えた俺達はその後すぐにアリシアさんから渡された名刺に書かれた店に向かうのだった。