第229話

「………何と言うか、思ってたのとは違う意味で難易度が激変してたみたいだな。」


 エリオさん達から少し離れた所に立って武器を収めながらグルっと周囲を見渡して俺は、地面に転がって気絶している野盗の奴らを見て思わずため息を零していた。


「がっはっはっは!最初の威勢は良かったが呆気なく終わっちまったな!」


「うん、思ったよりも早く片付いてよかったね。」


「うむ、だがこれで事件は解決したと考えて良いだろうな。」


「ち、ちくしょう………貴族がこんなに強いなんて聞いてねぇぞ………」


 俺は呻く様にそう呟いた男の言葉に心の中で力強く同意すると、起きる気配のある野盗がいないか注意しながらエリオさん達と合流をした。


「皆さん、お疲れ様でした。お怪我とかはありませんか?」


「おっ、九条さん!こっちは大丈夫、ピンピンしてるぜ!そっちはどうだ?」


「俺も大丈夫です。」


「そうか!だったら良かったぜ!……さて、そんじゃあコイツの後始末を済ませるとしますかねぇ。」


「ひ、ひっ?!な、何だよ後始末って!ま、まさか……俺を殺す気なのか?!」


「えぇ、その通りです………そう言ったら、貴方はどう反応するんでしょうね。」


「ふ、ふざけんな!そんな事が許される訳がねぇだろうが!」


「おいおい、俺達を襲って金品を巻き上げようとして家族まで狙おうとした奴が言う台詞かよ。ちょっとは自分がやろうとしてた事を振り返ったらどうだ?」


「ゴ、ゴチャゴチャうるせぇんだよ!それよりもマ、マジで殺す気なのか?!」


「がっはっはっは!安心しろ、そんな事をする訳がねぇだろうが!」


 ディオスさんがそう答えると男は露骨にホッとした表情をして……その後、すぐに俺達をバカにする感じの顔でこっちを見てきた。


「へ、へっ!そうだよな!お前らの様な貴族にそんな根性がある訳ねぇよな!」


「えぇ、確かに私達には貴方を殺す根性があるとは言えないのかもしれません。」


「だ、だろうな!覚えてろ……絶対にまた、お前らの事を!」


「ですが……貴方に1つだけ忠告をさせて貰います。」


 エリオさんは収めていたブレードを鞘から抜き出すと静かに構え、それを見て怯え出した男の目をジッと見つめた。


「な、何をする気だ……殺さないんじゃねぇのかよ?!」


「私達は貴族です。ありとあらゆる情報を集める術を持っています。」


「お、おい、止めろ!止めてくれ!」


「もしまた貴方が悪さを働き、それが私の耳に届いたら……」


「た、頼む!助けてく」


 男が必死の形相で命乞いをしようとしたその直後、空気が切れる様な音が一瞬だけ聞こえてきて………そして………


「その時は、容赦なく切り捨てるので覚悟しておいて下さい。」


 エ有無を言わさぬ迫力でそう告げたエリオさんが静かに武器を収めると、男のすぐ真上辺りから木が横にズレて行き重々しい音を立てて地面に落ちていった……


「…………ふぅ、これでようやく終わったと言えますかね。」


「あ……がっ………」


「あーらら、コイツあまりの衝撃に気絶しちまったぞ?」


「あはは。どうやらエリオも、彼には随分とご立腹だった様だね。」


「………そうですね。」


 衝撃的な展開を目の当たりにしてエリオさんを怒らせない様にしようと心に誓った俺は、白目をむいて意識を失っている男に同情を………する価値を特に感じなかったので、とりあえず自業自得だざまぁみろバーカと思いました!


「よぉし!そんじゃあこいつ等を縛り上げて、さっさと帰るとするか!ファーレス、後の事は頼んだぞ!」


「うん、分かったよ。」


 杖を両手で握ったファーレスさんがそう言うと地面から大量の植物が生えてきて、気絶している全ての野盗の全身にグルグルと巻き付き始めた。


「ディオス、九条さん、彼らを縛り上げた後に檻に入れたいから一カ所にまとめるのを手伝ってくれるかい。」


「おう、そう言う事なら任せとけ!」


「は、はい!」


「ファーレスはその後に檻を作ってくれ。」


「うん。」


 ………それからしばらくして全ての野盗を檻の中にぶち込んだのを確認した俺は、念の為と提案して檻の中に電撃を撃って気絶の時間を延長させてから宿屋に向かって歩き出すのだった。

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