第158話

 セバスさんの協力が得られなくなった状況下でただひたすら作業を続けていたら、何時の間にか指定された時刻の5分前になってしまっていた。


「ほら、早くしないと先生が帰って来ちゃうでしょ。早く本を棚に戻しなさい。」


「は、はい……かしこまりましたぁ……!」


 2つの課題を見事にこなしてしまったらしいお姫様に命令をされて頑張って運んで来た本を元に位置に戻し終えた瞬間、ステラと呼ばれていた女性が自習室に姿を現し俺には目もくれずにスタスタと部屋の奥の方に向かって行った。


「ミアお嬢様、課題の進捗はいかがでございましょうか。」


「ふふっ、滞りなく終了させて頂きました。こんなにやりがいのある課題を用意してくれたステラ先生には感謝しかありません。」


「いえ、私は自分のやるべき事を行っているだけですので。それよりもミアお嬢様、課題に対する解説は必要でしょうか?」


「はい、是非ともお願い致します。」


「かしこまりました。それでは席へお座り下さい。」


 そんな感じで終わらせた課題の解説が始まりちょっとした追試みたいな物が挟まれ何とか無事に勉強の時間が終わった後、俺達は次の予定にあった礼儀作法の学びってもんを受ける為に次の部屋にやって来ていたんだが……


「九条さん、よろしかったら私と一緒に礼儀作法をお勉強しませんか?」


「……へ?」


 ニッコリ笑顔でそんな事を言ってきたお姫様の誘いを断る事なんて出来る訳も無く強制的にその時間を付き合わされる事になった俺は、美しいな女性の先生から姿勢がよろしくないだのお辞儀がなってないだのと言われたりして……


 またまた心をへし折られながら次の予定に移って今度はピアノの練習が始まって、コレまた拒否権なんてものも与えられず付き合う事になって先生から優しさの欠片も無い指導をビシバシと受ける事になって……


「ふふっ、ありがとうございます九条さん。おかげで普段よりも楽しい時間を過ごす事が出来ました。」


「い、いえいえ、どういたしまして……」


 慣れない事ばかりさせられたせいで文句を言う気力すら奪われてしまっていた俺は片手をあげながらそう言う事しか出来ませんでしたとさ……


「セバス・チャン、九条さん、それでは私はここで失礼致します。」


「はい、かしこまりました。」


「か、かしこまりました。」


 午前中最後の予定、民達との接見ってのをやる為に玉座の間までやって来た俺達は何やら真剣な顔で執事っぽい人と話し合いをしている国王陛下達の方に向かって行くお姫様と別れるとセバスさんと一緒に部屋の端に移動するのだった。

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