第107話
「フラウさん!改めてになりますけど、昨日のイベントはとっても素晴らしくて感動させてもらいました!胸がドキドキしてふわふわして興奮が収まらなかったです!」
「魅惑的で幻想的な世界を体験出来たよ。それにフラウさんが着ていた衣装もとても素敵だったからね。」
「マホさん、ロイドさん、ありがとうございます。お気に召して頂けたのなら何よりです。あの衣装も昨日のステージに立つ為に用意した物だったので、注目して頂けたみたいで良かったです。」
「ふふっ、なるほどね。そう言う事ならば記憶に残ったのも納得だよ。」
うんうん!確かにあの衣装を着ていたフラウさんは、間違いなく魅力的だった……おっと、マホから何だかチクチクと刺さる様な視線を感じるぞ?おかしいな、そんな目で見られる事は一切考えて無い……とは言え無いんだけどもさ……ね?
「水の龍が観客席を飛び回る演出、感動した。」
「ありがとうございます。アレはあの日の為に練習を重ねて完成させた術だったのでそう言って貰えると嬉しいです。あっ、そう言えば九条さん。私も改めてになりますけど昨夜はお疲れ様でした。惜しかったですね、後少しの所でしたのに。」
「えっ?あ、あぁ……」
唐突に話を振られて思わず頬を掻きながら苦笑いを浮かべていると、隣に座ってたマホが腕を組みながら何度か首を立てに振り始めて……
「そうなんですよねぇ!優勝まで後一歩って所までは言ったんですけど、おじさんが仮面のメイドさんに不意を突かれて眠らされてしまって……って言うか、本当にあの人って何者だったんでしょうかね?最後の最後まで素顔を出しませんでしたし。」
「さぁな、イベントに参加した目的は分かったけど……一体どうしてそんな事をしているのかは謎のままだしな。考えるだけ無駄ってやつじゃないか。」
「……正体不明、だけど実力は確かだと思う。だから手合わせ、してみたかった。」
「おい、戦闘大好きっ子。そんなのダメに決まってるでしょうか。言っとくけど仮に何処かでまた再開したとしても戦いを挑んだりするんじゃねぇぞ。」
「ケチ。」
「誰がケチだ誰が!……恩を仇で返す訳にはいかねぇだろうが。折角手に入れた優勝賞品の利用券を譲ってくれた相手だってのに。」
「利用券?それってミューズの街にある宿屋なら好きに宿泊する事が出来る様になるアレの事ですか?皆さん、それを仮面のメイドさんから頂いたんですか?」
「うん、実はそうなんだよ。実は昨夜の事なんだけどね……」
不思議そうに小首を傾げながらそう質問してきたフラウさんにロイドは昨夜あった事を簡単に説明していくのだった。
「なるほど、そんな事があったんですか……それじゃあ彼女の狙いは最初から強欲な女神の像だったんですね。それを手に入れる為に九条さんを睡眠薬で眠らせて……」
「えぇ、そうらしいです。そこまでして像を欲した理由、どうせだったら説明をして欲しかったんですけど。」
「いやいや、そうなったらなったで絶対に面倒な事になる気がするわ。」
「ふふっ、九条さんは巻き込まれ体質の持ち主だからね。話を聞いたが最後、彼女と何かしらの協力関係を結ぶ事になっていたんじゃないかな。」
「あーそれはあり得そうですね。だっておじさんですもん。」
「うん、九条さんだから。」
「おい、その一言で納得されると非常に不本意なんだが?つーか巻き込まれ体質って俺はそんな面倒なもんを持った覚えはねぇぞ。」
「ふふっ、そうは言っても身に覚えはあるんじゃないかな?」
「そ、それは……!無い……とも、言いきれないけど……だ、だからって俺も好きで面倒な事に巻き込まれてる訳じゃねぇっての!こちとら平穏な日々を愛してやまないただの一般人だぞ!?叶う事なら一日中家の中でゴロゴロしてたいもんだわ!」
「……本当ですか?」
「本当だっての!つーか、どうしてそこで疑う様な発言が出て来るんだよ?」
「いえ、だって……」
「九条さんは家に居るのも好きだけど外出するのが嫌いな訳じゃないからね。私達がクエストに誘うと基本的には一緒について来てくれるし。」
「うん、引き受けてくれたら最後まで付き合ってくれる。」
「えぇ、そういった性格ですからおじさんの愛してやまない平穏な日々が訪れるのは程遠いと思いますよ。」
「……それは褒めているのか?それともバカにしているのか?」
「勿論!……褒めていますよ。」
だったらその微妙な間は何なんだ!?……って文句を言おうとした直後、ニコッと微笑んだフラウさんが俺の顔をジッと見つめて来た。
「うふふ、つまり九条さんは困っている人を見掛けたら放っておけない心の優しい方だと言う事ですね。素敵な事だと思いますよ。」
「へ、へっ!?あ、いやそんな!心の優しい方だなんて……!」
「フラウさん、そんな風に甘やかしちゃダメですよ。忘れちゃったんですか?昨日のイベント開始直前におじさんが仮面のメイドさんのスカートを」
「ま、待てコラ!余計な事を言うんじゃない!ってかいい加減にその事は忘れろよ!ち、違いますからね!?アレは俺だけが悪いんじゃなくてあのメイドが!」
「わ、分かってます!はい!」
少しだけ顔を赤くしながら気まずそうにしているフラウさんに言い訳をする羽目になってしまった俺は、下がったかもしれない好感度を上げる為に何とか話題を逸らせないか頑張り続けるのだった……!
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