第57話
「ただいまーっと。」
「あっ、お帰りなさいご主人様!取り調べはどうでしたか?きちんと僕はこの件には関係ありませんって言ってきましたか!」
「……マホ、俺は別に取り調べをされに行った訳じゃないから。情報提供をする為に任意で同行を求められたってだけだから。そこ、勘違いしない様にな。」
「はーい、分かりましたよ。ご主人様、紅茶を淹れてありますんでソファーに座って待っていて下さい。」
「おぉ、気が利くな。ありがとうよ。」
「いえいえ、どういたしまして。」
ティーポットから紅茶が注がれる音を耳にしながらソファーに腰を下ろした直後、向かい側に揃って座っていたロイドとソフィと目が合った。
「九条さん、お疲れ様。詰め所では何か新しい情報は得られたかい?」
「いんや、特にコレと言って収穫は無しだ。そっちはどうだったんだ?ここに来てた人達から何か聞けたのか?」
「ううん、彼らからは何も教えてもらえなかったよ。」
「そっか……まぁ、当然っちゃ当然だけどな。事件の当事者ではあるけどただの一般市民においそれと情報は与えられないだろ。」
「んー……そうだとしても少しぐらいは情報が欲しかったですけどね。どうしてあの人達がロイドさんの家を襲ってきたのか分からないと不安で仕方ありませんから……一応、今晩から警備兵の方達がこの辺りを巡回してくれる事になりましたけど……」
「相手の正体が分からないと対策のしようがない。」
「……もしかしたらの話にはなるんだけれど、今回の一件は私自身が狙われた訳ではないのかもしれない。」
「ん?どういう事だ?何か心当たりでもあるのか」
「心当たりとまでは言えないけれど……すまない、少しだけで良いから考える時間を貰えるかな。」
「あぁ、分かった。」
顎に手をやりながら口を閉ざしてしまったロイドの姿を見つめながらマホの淹れてくれた紅茶に口を付けた後、しばらく待っていると……
「ふむ……九条さん、私が数日前に実家へ顔を出しに行ったのは覚えているかな?」
「あぁ、覚えてるよ。それがどうかしたのか?」
「うん。実はその時に、父さんから何かの事件を解決する為に力を貸したという話をされた気がするんだよ。」
「事件……?それが今回の件に関係してるって事か?」
「それはまだ何とも言えないかな。私も詳しく聞いた訳ではないからね。」
「でもでも、ロイドさんの家が襲われた理由として考えられるのはそれだけなんですよね?だったら調べてみる価値はあるんじゃないですか?」
「私もそう思う。」
「……そうだね。九条さん、すまないけれど明日になったら私と一緒に実家に行って両親と会ってくれないかな?」
「お、俺も?いや、それならロイドだけでも良いんじゃ……」
「ふふっ、そう言わずに頼むよ。実は両親から九条さんに合わせて欲しいと頼まれていた事を思い出してね。都合が合うのならお願いしたんだ。」
「えぇっ!?ロ、ロイドさんのご両親がご主人様に会いたがってるって……!?一体どうしてなんですか?!」
「……その驚き方はそれはそれで失礼な気がするが……だけど、マホの言いたい事も分かる。どうしてお前の両親が俺なんかに会いたがってるんだ?何か気に障る事でもしちまったか?例えばお前を差し置いてギルドのリーダーになった事とか……」
「いやいや、別にそう言う事じゃないよ。ただ単に普段から私がお世話になっているからきちんと挨拶をしておきたいらしいよ。」
「あ、あーあーあー……なるほど……って、そう言えばロイド。お前のご両親って、お前が俺達と一緒に暮らしている事は……」
「知っているよ。」
「おっふ……し、知られちゃってるのね……なるほど、なるほど……」
いやぁ~参ったなぁ……コレってつまりさ、ご挨拶したいってそう言う事じゃね?ウチの大事な娘と図々しくも一緒に暮らしているどこの馬の骨とも分からない野郎をって事なんじゃないかな?
「……ご主人様!頑張って下さいね!明日、私とソフィさんはロイドさんの実家には一緒に行けませんけども!その、とにかく頑張って下さい!」
「は?は?えっ?お前達、一緒に来ないのか?」
「うん、明日は私の服を買いに行くから。」
「ふ、服?なんでまたそんな事に……?」
「それがですね。ソフィさんってば普段着をほとんどもっていないみたいなですよ。ご主人様も気付いてますよね?何時も同じ服を着まわしている事を。」
「まぁ、短期間とは言え一緒に暮らして来た訳だから何となくは……それで、お前達2人だけで買い物に行くのか?だったら……」
「いえ、私達だけではありません。実はこの話を大通りでばったりお会いしたリリアさんやライルさんにもしてみたんです。そうしたら一緒に買い物へ行きましょうって誘われて。」
「だから明日は一緒に行けない。ごめんなさい。」
「……いや、謝る必要は無い。約束があるんなら仕方ないからな。こっちはこっちで情報収集しておくから、そっちはそっちで楽しんで来い。」
「はい!ありがとうございますご主人様!必ずやソフィさんをとびっきり可愛くして帰ってきますからね!」
「ふふっ、任せたよマホ。さてと、そうと決まれば今日はもう寝るとしようか。特に九条さんは色々とあってお疲れだろうからね。」
「……気遣いどうも。それじゃあ、その言葉に甘えて今日はもう寝るとするか。」
体を大きく伸ばしてそう宣言した後、それぞれの自室に戻って行った俺達は明日に備えて何時もより早めに就寝する事にするのだった。
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