第35話
3人の美少女に護衛されるという人生初の経験をしながら何とか無事に街まで帰還してきた俺は、ようやく満足に動く様になってきた体をゆっくりほぐしていた。
「ロイド、リリアさん、ライルさん、おかげで助かったよ。本当にありがとうな。」
「いえいえ、私達は当然の事をしたまでですわ!それよりも……決闘を申し込んだ身としては、何とも言えない結果となってしまった事が残念ですわ……」
「リリアさん、まだロイドさんと九条様が結成をしたギルドを解散させようと思っているんですか?」
「……いいえ、その件についてはもう受け入れる事に致しました。」
「おや、そうなのかい?」
「はい。ロイド様がどうして九条様とギルドを結成しようと思ったのか、その理由が分かった気がしましたから。」
「……お、おう……」
ニコリと微笑みかけてきたリリアさんに真正面からそう言われ非常に気恥ずかしい感情を抱かされていると、ロイドが顎に手をやりながら何かを考え始めた。
「ふむ、そういう事ならリリア。今回の件のお礼として、ファンクラブの会合に顔を出しても良いだろうか?」
「え、えぇっ!?よ、よろしいのですかロイド様?」
「あぁ、色々と世話になったからね。こんな事がお礼になるのかは分からないけど、どうだろうか?」
「ど、どうだろうかも何も!こちらとしては願ったり叶ったりですわよね!」
「は、はい!むしろ私達の方が感謝しなくてはいけませんよ!」
「ふふっ、喜んでくれるのなら良かったよ。リリア、今度詳しい日程について教えてくれるかな?」
「かしこまりましたわ!ライルさん、コレは忙しくなりますわよ!」
「そ、そうですね!急いで準備に取り掛かる為にも、早く斡旋所に行ってダンジョンから帰ってきた事の報告と報酬を受け取りましょう!」
「うん、ボスも倒せたから報酬には期待でき……あっ……」
「あっ?………あっ………」
喋っている途中に何かを思い出したかの様な仕草をしたロイドを目にしながら首を傾げた直後、頭の中に今回の騒動の一端とも言える事を思い出してしまった……
「あら?ロイド様、九条様、どうかなさいましたか?」
「あーいや、何と言うかその……色々と事情がありましてですねぇ……」
「……事情?一体何の事ですの?」
俺達の態度に不思議そうな顔を浮かべているリリアさんと苦笑いをしているライルさん、そんな2人を前にしてどうしたもんかとロイドと視線を交わしていると……
(ご主人様、ロイドさん、ここは事情を説明しておいた方がいいんじゃないですか?そうすればリリアさんもライルさんも協力してくれるかもしれませんよ?)
(あー、まぁこの2人に隠し通すのは無理があるか……)
(うん、ここは噂の詳細について話しておこうか。)
(……了解、それじゃあ俺から説明するわ。)
俺はリリアさんに前回ボスを倒したのは実は俺なのだが、変に有名になったりするのが面倒なのでロイドが倒したと報告をしたという事、ソレが原因で例の噂が流れてしまったという事。
そして今から斡旋所に言ったら恐らく今回もロイドがボスを倒したっていう流れになると思うという事を説明した……おぉ、分かりやすく呆れていらっしゃるわ……
「はぁー……つまりアレですか?九条様は自分が面倒事に巻き込まれるのが嫌だから全ての責任をロイド様になすりつけたと?」
「は、はい……そう、なりますね……」
「……ライルさん、貴女はその事を知っていましたの?」
「あ、あはは……すみません、知っていました。私は目の前で九条さんがボスを倒す瞬間を見ていましたから……でも、噂の事もあったんで余計な事は言わないで黙っていた方が良いと思いまして……」
「なるほど、それでダンジョンに向かう前に九条様に声を掛けたのですね。」
「えぇ、その通りです……」
「……で?それで今回もロイド様にボスを倒した事にしてもらいますの?」
「で、出来ればその方がありがたいかなーって思ってるんだけども……」
「……ロイド様はそれでよろしいんですか?あの噂のせいで、要らぬ苦労をしているのではありませんか?」
「うーん、確かに面倒な事も増えたけど別にそこまで迷惑って程でもないさ。それに私が噂の起点になった方が鎮まるのも早いだろうからね。」
「いやぁ、本当に迷惑掛けて悪いな……」
「ふふっ、構わないよ。だって私達は、同じギルドの仲間なんだからね。そう言う訳だからリリア、すまないけど話を合わせてくれると助かるな。」
「……分かりました。ロイド様がそう仰るのならば私から言う事はございません……ですが九条様!」
「は、はい!?」
大声を出して眼前に人差し指をビシッと立ててきたリリアさんに驚いて、反射的に上半身を後ろに反らしていると……!
「今後はくれぐれもロイド様に迷惑をかける行為はお控え下さいませ!ギルドを結成して仲間となった以上、ロイド様に実害が及ぶ様な事があればその際は……!」
「わ、分かった!これからはなるべくロイドには迷惑かけないようにする!絶対!」
「……その言葉、信じてもよろしいのですね?」
「も、勿論!俺、嘘つかない!」
(いや、既に嘘はついていると思うんですけど……)
(こら!静かにしなさい!)
「……かしこまりましたわ。九条様の事を信じます。」
「あ、ありがとう……っと、それじゃあ話も纏まった事だし斡旋所に行こうか。」
「えぇ、そうですわね!あぁ、報酬に関しましては九条様が全てお受け取りになって下さっても構いませんから。」
「は?へっ?いやいや、流石にそう言う訳には!」
「大丈夫です。お金も素材も私は必要としていませんから。」
「あっ、私も大丈夫です。だから九条様とロイド様でお分けになって下さい。」
「ふむ、という事らしいけど九条さんどうする?」
「……折角の厚意だ。ここは感謝して受け取らせてもらうとしよう。」
「はい、そうして下さいませ。」
流石は貴族の娘さん、懐の大きさが俺みたいな庶民とは違うという事に心の底から感謝をしながら俺達は斡旋所に向かって行くのだった。
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