とある人生

"とある時代"の"とある国"で、

とある赤ん坊が生まれた。


少年となり、国の為に戦う事を美徳と教わり、国立の軍人学校に入る為にテストを受けた。


だが、朝に飲んだ牛乳が効いたのか、

途中でテストを放棄するハメになった。


しかし、何故だか合格した。


何故だかは記憶にないが、カミナリの酷い夜だった事は覚えている。


玄関先で父親が、地元の町長である親戚へプレゼントを渡している記憶だけ残っていた。




数年後、学校にて高成績を残したこの青年は戦争へ行く事に。


見事な剣術、弓裁きで結果を残したが、

最終的に左腕と左眼を失い、下半身にも障害を残した。


そんな身体を父親や町中の人達はみんな褒めてくれた。


その後、時代はものすごいスピードで変化すると同時に、

青年を褒めるモノはいなくなり、

青年の剣術や古い知識を必要とされなくなった。


この時代では、

ネジを上手く締めれるモノ、

綺麗に箱を並べるモノ、

手動運転車を安全に運転できるモノ、

そして、人に優しくするモノが求められ、褒められる。


重い荷物を持つことも、

左手でネジを添えることも、

目視で安全を確認する事も、

弱いモノに情けをかける事も出来ない青年はすっかり塞ぎ込んでしまった。



その後僅かにテクノロジーが発達し、

青年のカラダには高性能の左腕と、

目の前のデータをすごいスピードで処理できる"人工の眼球"が取り付けられ、

"新しい時代"の"新しい仕事"で大活躍した。



すっかり社会人として息を吹き返した青年に、隣国の美女との結婚話が持ちかけられた。


先の戦争は彼女を巡って起きたとも噂されている。


青年は会った事の無い女性への期待を膨らませ、

二つ返事で結婚を決めた。


トントン拍子で国をあげての結婚式、いざ、初対面。


青年は"その美女"を"美女"だと感じる事は無かった。


むしろとても醜く、女性として愛する事が出来るのかと自信を失っていた。


しかしもう引き返せる空気ではなく、結婚をした。


そして子供に恵まれ、結婚してから30年程たったとき2人は離婚をした。



その後、"美魔女"は自国に帰り、若い男と再婚。



一方、青年はすっかり老け込み、古い一軒家に隠居。


近所ではこの"元"青年を知っているものはいない。


隠居から数年、

老人となった男性は国から支給される"戦傷者手当"で優雅に暮らし、

最近ではハイテク左腕で電子三味線を搔き鳴らし、若い仲間たちと楽しい人生を送っている。


最近では電子三味線でハイテク左腕を充電出来る新製品が発売されたようだ。



そして数年後、老人は充電していた電子三味線を抱きかかえたまま、笑顔で息を引き取った。


死後、数年経ち、老人のハイテクな左眼のデータから、

かつて習った数字の学問を壁一面に書き殴ったデータが発見され、その中から新しい数式の定理が発見された。


老人は死後の社会で、世界中から賞賛され、

息子夫婦が代理で表彰された。


息子夫婦は満遍の笑みでメダルと賞金を受け取った。

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