とある老人D

"とある時代"の"とある国"に"とある老人D"は住んでいた。


数十年前に、長年共に生活していた妻と離婚して以来、1人で生活をしている。


カビ臭い古い借家には急な階段が付いており、登り降りが危なっかしくて、ネズミもイモリも階段下には近付こうとしない。


身体に不自由があり料理や洗濯などの家事も未だに慣れずに四苦八苦していたが、最近"とある補助器具"の新製品を購入してからは生活のクオリティも格段にアップし、技術の進歩に関心していた。


時折、

孫を連れた息子夫婦が顔を出してくれるが、その度に心配事を言われて正直参っている。


息子夫婦は、老人Dが壁に書いた謎の数式を気持ち悪く不快に感じており、毎回止めるように注意をしていた。


1人で暇な生活を過ごし、ボケ始めていると心配しているのだろう。


一緒に住む事を提案されたり、老人ホームへの入居を提案されたりしたが、

それでも老人Dはすべてを断っていた。


老人Dは時折、こんな事を呟く。


「こんな最高な人生、手放すわけないってーの、、、」



息子夫婦は認知していないようだが、

年寄りは国から十分な生活費が支給され、

老人Dは最近、電子三味線をはじめ、息子より若い若者達とグループを組んでは夜な夜な演奏をしている。


老人Dは、離婚してくれた妻の事を心から感謝している。


そんな事を知らない息子夫婦は、心配のあまりに"みすぼらしい父親"に頻繁にご飯を持って世話を焼いてくれる。


老人Dは、ボケを演じて息子夫婦を利用している罪悪感にも最近慣れ始め、楽しみのひとつとしている。


老人Dは朝日が昇るのと共に、

遊び疲れた"カラダ"を充電して眠るのであった。


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