第2話

「働かないって、だってそうさせられたんでしょ。しっかりしてよ、由紀子」

 友を励ますつもりでいったのだが、逆効果だったのか、由紀子は黙ってしまった。

「お酒、大丈夫?」

「少しだけ飲むよ」

 由紀子は弱々しく微笑んでみせた。


 少し楽しい話をしよう。亜紀はそう思った。

 「こないださ、道彦も来てたよ」

 道彦とは二人の仲の良かった学生時代のサークル仲間だった。最近サークルOB会があったのだ。

 「由紀子も来ればよかったのに」

 「そうだね」

 由紀子は気のない口調で言う。

 「あいかわらずだったよ。道彦。会社でもいじられてるみたい」

 「そう」

 会話が続かない。

 「あの頃は楽しかったね。英語サークルなのに、遊んでばかり」

 「うん」と、感情のこもらない言い方をしてから、さらに由紀子は付け加えた。「あの頃は、将来不安てなかったね。就職活動を前にしてたのに」

 「ふたを開けたら、就活は思った以上にきつかったよね」

 由紀子はそれでも第一志望に近い出版関係に進むことができた。むしろ亜紀の方が不本意なデパートに就職することになったのだった。それでも、亜紀は持ち前の愛想のよさでうまくやっている。

 「ねえ、由紀子。こんど道彦も一緒に三人で会おうよ」

 由紀子は首を横に振った。

 「無理」

 「なんで?」

 「昔の私じゃないから」

 「どこが!」

 つい声が大きくなってしまった。なにか憤りがこみ上げる。

 「じゃあ、なんで私とは会うの?」

 「なんでだろう。これ以上責めないで」

 亜紀はそのつもりではなかったが、由紀子は責められていると感じたようだ。亜紀の胸は痛んだ。

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