2枚目

彫り師の男は童貞である


「はぁ〜…俺なんで童貞なんだろ…」


この世界では別に20代になって童貞でも不思議てはない


むしろそれは貴重ということでもあり、童貞を守ることも推奨されている


しかし、男のいる居酒屋では周りが卒業済みであり、それを彫り師の男は危惧して焦っているのである


挿入れた時の快楽ぅ?出した時の快感?俺だってヤりてぇよぉ…」


酒の酔いが回ったのか、舌は呂律が回らなくなり、言動も怪しくなってくる


「おい、おいこら!そろそろ店閉めるぞ」


「俺がこの店を占めるぅ〜!」


「馬鹿な事言ってんじゃねぇよバカヤロウ、ほれ、ほかの客も帰ってんだ…てめぇもだな…」


そう促す居酒屋の店主の言葉は、彫り師には届かず、そのまま寝入ってしまう勢いだ


「チッ!相変わらず酒が入るとダメなやつだな…」


「んぁ〜…店主ぅ〜…いつ卒業したぁ?」


「俺はガキの頃だよ、興味本位でヤったから今はこの仕事についてんだ。だが、もうてめぇも三十路迎えてんだろ?そのうちチャンスはあるさ…ほれ、さっさと起きろ」


そう言われ、渋々だが体を起こし店を出ようとするが足が追いつかず、転んでしまう


「ったく…弱ぇくせに飲みすぎるから良くねぇんだ…ん?」


店主は何かを察知し、ドア付近を警戒する


この現代、近代的な時代とあれど暴漢やレイプ魔なんてのは常時存在する


女の、だが


男が衰退し、数が減った訳では無い

しかし、女性有利なのは昔から何も変わっていない


男卑女尊


この言葉が該当するか


しかし、居酒屋の前に立つ長身の何者かはこちらの動きを待っているようで…


店主はドア越しだが声をかける


「もう店じまいだ、のれん下げっからそこにいると邪魔だ…帰ってくれ」


そう居酒屋の店主は言うが、ドアの向こうにいる何者かは動じずに店主に言い返す


『そこの男に用がありますので、家まで送るのでこちらで引き受けますよ?』


この反応は想定内だった

女はこういった言葉を並べ、一人の男を誘拐し監禁してしまうのだ


店主はカウンターに移動して、掛けていたスラグ弾専用のショットガンを持ち出す


カウンターからドアまではすぐだったが、店主は警戒していたのか、声の主は1歩たりとも動かなかった


「察知系の能力持ちならもう店内の状況は分かっているはずだ!それとも余裕でもあんのか?!なめんなよ居酒屋の店主をよォ!!」


『そういう訳では無いのですが…まぁ怪しまれても仕方ないでしょう…会話が成立しない今、私がとるべき手段はわかりますね?』


「店壊したらてめぇが払えよ!!アバズレが!!」


『…はぁ、これだからヤリチン野郎は口が汚い…醜い…』


ドアの向こうにいる女は、


一瞬にして、一閃


店主の鼻先を剣筋が掠める


「あぁぁ!痛ぅあ!」


店主は、鼻先を掠めたにもかかわらず過剰に反応する


無理もない、男社会では銃による防衛しか出来なくなり、暴力による耐性など一般人には皆無だ


それを暴力よりも上回る鋭利な刃物など、非日常すぎて話にもならない


「あぁぁっ!いてぇ!ちくしょう店がっ!!」


痛みと同時に店の心配もするが、ドアが横薙ぎに捌かれたのみだったので修理代は安くなる


しかし、居酒屋の店主は地面で寝てる、三十路を迎えた標的であろうア彫り師を守るために抵抗を続ける


ドアだった瓦礫を踏みつけながら中に入ってくる長身の女は


“化け物“だった


「んなっ!悪運引いちまったか!」


「その男、三十路を迎えたそうですね?私のコレクションにするので、…まぁこれ以上傷つきたくなければ引いていただくことを勧めます」


女は悠然と、余裕綽々にそういった言葉を並べる


店主はショットガンを持ち出す際に警察を呼んではいたが、ここに来るまでには時間が掛かることを懸念した


分かってはいたことだったが、それでも情けないと感じている


────人っ子一人守れねぇ?


そんな考えがふとよぎる際には既に長身の女は彫り師を肩に抱えていた


「では、私はこれで────」


女は最後まで言えずに口元、顎あたりにショットガンのスラグ弾を受ける


「っ!!」


女は撃たれた箇所を確認する前に、彫り師の男を地面に落としてしまう


「ハァーッ!ハァーッ!そいつを寄越せ!!死にたくなけりゃ…っ!」





──店主は気づく

ショットガンの引き金を引く指の感覚がないことに


見たくなかった

見てしまえば痛みが押し寄せ、また激痛となるからだ




「────指…ないのか?今の俺には」


そんな言葉を敵に送る


「あら?見て確認したらいかがかしら?クソ野郎」


長身の女による暴言なんざ耳に入ってこず、店主は腕全体を視認せずに感覚のみで意識するが


そんなものはなかった


「っ!ああああああああぁぁぁ!!!!」


「うるさい豚ね、種馬にもならないから姉妹たちに餌として食べさせようかしら?」


視認せずとも襲う痛覚に耐えきれず、店主は片方の手で切られた方の腕を確認するも


────肩しかない


肩を押え、出血を抑えるも吹き出る自らの血


この血はワガママなのか、されど自然の摂理か


悶え苦しむ店主に対して、長身の女は欠伸をする


「この時間帯はおねむの時間なのよ私は…手間を取らせないでくれないかしら?」


彫り師をまた担ぎ、退散する女

悶え苦しみ、呻く店主





すると、店のドアが開き、誰かが侵入する



「ハァー…ハァー…け、警察か?」


「あのー…兄を引き取りに来たんですけど…?」


声の主は少女に等しいものか


だが店主には聞き覚えのある声だった


「おめぇさん…、たしかこのアホ彫り師の妹だったか?名前はたしか…“白金しろがね 繭“だったか…?」


「正確には妹ではありませんが、なんですかこの状況?なぜ店主は腕1本失くて、兄さんは知らない女性に担がれてるんです?」


────白金 繭

自称、彫り師の妹と名乗る小学六年生の少女だ


ブラコンである


「何…この娘は?なぜ現れたのかしら?」


「そんなことどうでもいいです、兄さん起きてください!帰りますよ!」


その一言での喝を受けた兄は、寝ぼけながらも目を覚ます


「んへへ〜…なんか柔らかい…出来のいい妹を持つとこんな大きく成長するんだなぁ」


なんと彫り師の男は担いでいる女性を妹と間違えたのだ


それを見聞し、キレる自称妹


「兄さん!!そんな顔下半分ないアバズレを同じ妹と判別しないでください!!」


なんということだろうか、居酒屋の店主に続き、妹もまた口が悪いのだ


それもそのはず、彫り師が行く先々の店では男の集いの場が多く、女という存在への悪口を、聞いてはそれで学び、何かの役に立つのではないかと心のどこかに貯めていたのだ


実際、役に立ったらしく


「居酒屋の男共といい…!このような娘といい…!好き勝手に言ってくれるわね!!」


「実際にあなた、少しザーメン臭いですよ?気分が悪くなるので兄さんを置いて肥溜めで埋もれて死んでください。土に還るとザーメン臭くなるので燃やして上げますから。あぁでも大気汚染になりますね…海に捨てても汚染されてしまいますね…」


挑発に挑発を重ね、長身の女は苛立ち混じりに手をかざす


「ゴミ共が、死ね」



店が切断される


見えない刃の形をした斬撃が店中を襲うが、居酒屋の店主と繭には当たらなかった


「…なに?」

「こりゃぁ一体…」


長身の女と居酒屋の店主は驚いていた

無理もない、斬撃の全てが店中を襲っただけで、繭と居酒屋の店主には当たらなかったからだ


「ちっ、もう一度────」


「女という生き物は進化し続ける、それは生まれた女の子にも継承されると…ニュースとか見てません?」


そう、繭の両親は進化した女性から生まれた男児と、はたまた別の進化した女性から生まれた女児の間に生まれた子でもあり


繭は生まれた時から能力持ちでもあったのだ


「女の多段階による進化は2種類あるんですよ?あなたのような色々な30代の男性から精液を搾取し、進化を遂げる者、そして私のような先代から進化を遂げる者」


彫り師の自称妹を名乗る白金 繭の言う通り


女の進化は安土桃山時代に発見されて以来、進化をし続けている


海の向こう側では当時、それを危惧した国が、魔女狩りしたことでも有名だ


彫り師のいる日の本の国ではそういった能力を持つ女を増やすことで、戦力拡大などを目論んだが


第一次世界大戦、第二次世界大戦での勝利、敗北を経験し和平条約を結ぶ際に能力者増加に制限をかけたのだ


日の本の国が管轄、認可する家系でなくては能力者による強化を認められていない


白金 繭の家系は認可されたそのひとつである


「なので、まぁまだ私は若いですが貴方の力をねじ伏せる程度の力は持ってますよ?」


自称妹はそう言い放ち、長身の女に攻撃を仕掛ける


伏せた状態から突進し、長身の女の懐に入り拳を突き出す


見事、鳩尾に入った拳

反応の遅れた長身の女は浮き上がりながら、空中で体勢を立て直そうとするも


「無駄ですね」


長身の女は見えない圧迫感を感じた


繭は拳による浮き上がりから後は微動だにしていないというのに、だ


「グッ!ギッ!…っ、『念動力』か!」


「えぇ、その通りです。『念動力』で兄の精液を夢精という事にしておいて腟内に搾取する予定だったのですが、あなたのような“化け物“に狙われるくらいなら直ぐにやらないとですね」


なんと、現代のJSは肉食であった


白金 繭は能力を兄のために使うようだった、下世話の為だけに



自称妹の優勢を見た居酒屋の店主は、地べたに這う彫り師の男を血を抑えていた腕で回収する


頬を軽く叩き、生死を確認する


「おい!起きろバカやろう!寝てる場合じゃねぇぞ!!」


頬を叩かれた三十路の彫り師はというと


「俺ぁ〜…まだ飲めるぞ〜…!」

「この酔っぱらいがァァあ!!」

「あぁ、寝ぼけてる兄さん可愛いです…」


危機的状況にてアホの発言をする彫り師

怒鳴る店主

見蕩れながらも長身の女を圧迫死させようとする自称妹


実にカオス

されど事態は終焉を迎えている


驚異である長身の女は、自称妹の念動力による圧迫で、身動きが取れない状態なためだ


「う〜ん…ん?あれ?ここどこ?」


彫り師の男は意識を覚醒し出す


「そうか…店か…なんか存在しないはずの妹キャラに声かけられた記憶あるんだけど…店主、なんか知らな…うぉぉぉぉおおお!??!?!?」


妹が存在しない彫り師の男は片腕のない店主を見て顔を青ざめる


無理もない、今目の前で非現実的なことが起こって、血など日常的に見るものでもないこともあるからだ


驚く彫り師に、妹ではなかった自称妹が声をかける


「兄さん、落ち着いてください。もう安全ですから」


その言葉と同時に、バン!!と弾ける音を店の中で響かせる


音を聞いた彫り師の男は理解が追いつかず、しかしシラフに戻るくらいには意識を覚醒する


「あ、えー、あー…うん、理解出来ない。何、その…天井にまでへばりついてる血…?」


さっきまで人だったものが壁や天井を血色に染めていたなど理解できるわけもなく、質問をするも


「先程、豚が大量に押し寄せていたので…私の能力を使い殺しました、料理の材料になれず店主には申し訳ない気持ちですね」


と、嘘八百つらつらと言葉を並べる


「…嘘にしちゃ、いきすぎだろ…」

「聞こえてますよ店主さん?あまり言いすぎますと、店潰しますから」


「何の話だよ2人とも…」


彫り師の男のボヤきは店主、自称妹には届かず、長身の女による襲撃はは終わった



────────────────────


かのように思えた


時刻は丑三つ時

ボロアパートに住む彫り師の男の元に這い寄るは血の塊


ガラパン1枚だけの彫り師の男は、それに気付かず、大口を開きイビキをかいていた


彫り師の下半身を覆うように血の塊は這いより、1枚の布切れを溶かし始める


彫り師のイチモツを血の塊は取りだし、液体内でしごき始める


血の塊といえど、生暖かく、人肌に近い液体によるしごきは自然現象によっていきり立つ


しごき続け、いきり立った亀頭の先から溢れる先走り汁は、血の塊を大いに喜ばせた


悦び────笑う


イチモツ付近の血の塊から

舌、歯などの口内から形成され

頬、唇を作り出す


「…ぁだ、…ぃないなのえ…(まだ、起きないのね)」


喉にある声帯など作られていない唇からは、聴き取れるか否かの音量で音を発する


だが、聞き取れていなくとも血の塊にとっては起きないことが好機であることに変わりはない


血の塊が次に血の塊内で作り出したのは“卵巣“


それを口の下に作りだし、卵巣から子宮、そして子宮口を作り出したと思えば、膣壁を口に繋げる


そう、口元から直接精子を摂取し、卵巣へと届かせるつもりだ


血の塊に沈む亀頭を、唇にキスすると一気に子宮口へと突かせる


「…っ!お“ぉ“っ!んん〜…っ!!」


血の塊から無理やり子宮口を作り出したとしても、快楽による神経はある


膣壁が彫り師のモノの形を覚えようとするも、キツくキツく締めてしまい、仕舞いには血の塊自身がイキ果てる


「…ぉごっ、んぶぅぅ…っ!じゅ、じゅるるる…んごぉ!」


血の塊は、顔が完成していたら情けない顔をしながらバキュームフェラをしていただろうな、などと考えようとすると


ありえない反応が起きた


なんと、彫り師は両手を血の塊の中に突っ込み、膣壁と子宮を鷲掴みししごき始めたのだ


これには血の塊も驚く


「んぶぅぅ…っ!!お、ごほっ、ぐぶぅぅう…!」


血の塊自身のペースで、男をイキ果てる算段が、まさかこのようなことが起きるとは思わず


しかも、激しい快楽が血の塊自身、襲うとは思えなかったので、混乱の果てに何度もイッてしまう


さらに驚くことに彫り師の男は寝ていたのだ


大きなイビキは相変わらず、寝言のように


「このオナホいいなぁ…てんがより性能良すぎ…あ〜…やばい…」


と、血の塊を道具のように扱うのだ


道具のように扱われる屈辱、それによる怒りは、彫り師の無理やりな上下運動によって起こる快楽で雲散してしまう


──そして


「あ〜…うっ!……ふぅ…」


彫り師の男から出た精液は、亀頭により押し広げられた子宮口を通し、子宮を満たしていく


「んぶっ!んん~!!ンクッ、んぅ!」


血の塊は精液を零すまいと一滴残さず飲み干す


彫り師のイチモツから長く、ドロリとした液体を、赤い紅い血の塊が受け止める光景は…第三者から見れば酷く滑稽に思えるだろう


しかも赤い透明な液体といえど子宮から卵巣まで見えてしまう始末だ


見えている世界が全てというのであれば、これもまた真実なのだろうか


長い射精に困惑するも受け止める血の塊は、射精が終わったことを確認すると人の形をとり始める


彫り師の男の上で


白い肌を露出し、跨る健康的な太もも

グラマラスな腰、クビレ

豊満な乳房にはピンク色の突起物が

ヨーロッパ系の顔立ちにある2つの瞳の色は金と赤、それぞれを主張していた


流れる透き通った金と白に近い髪色は、立てば足首まであるだろう程に長く、男の眠るベッドを占領するほどだった


「起き…ないか、まぁ仕方あるまい…起きて面倒になれば厄介だ…この日の本の国で、あれ程の少女がいるのは脅威だ…」


電気もつけない、窓から差し込む月明かりで照らし出される透き通った白い指先を、長身の女は男の筋肉のない胸板をなぞり、湧き出る血を吟味する


「────ッ!バカな、この男……いや、先程の違和感はこれだったのか…?」


長身の女が気付いた

────精子が無いことに


その真実にたどり着いた瞬間、彫り師のボロアパートの部屋に討伐隊が乱入する


その討伐隊の中には、自称妹も混ざっていた



しかし、そこには全裸の男、彫り師が一人いるのみで、窓は開いており、風がカーテンを巻き上げている所だった


「くっ!こちらc班!討伐対象逃走!!a班!すぐに追え!!」


「兄さん!!しっかりしてください!!あぁ!精液を搾取されてこんな枯れ果てて……っ!許さない!私も精液を…っ!」


枯れ果てている訳では無いのだが、彫り師の男は筋肉がつかない体質なので、身体は細い方なだけだ


今も幸せそうに眠る、アホ面下げた彫り師は、脱ぎ始めようとする自称妹を取り押さえる討伐隊の1人に、布団を被られ、熟睡したとかなんとか


────────────────────


路地裏──


丑三つ時を迎えたその場所は2人の男女が存在していた


1人は片腕を失った男

1人は少女


「なぜ自称妹なんて驕ったんだ…」


居酒屋の店主だ、疑問を解消したいがために彫り師の男を酔わせ、この偽妹を待っていたのだ


「ん?そんな不思議なことかな?私は兄さんのこと、好きだから」


店が壊され、店主が腕を無くしたという事態があっても平然とした顔で話に応じるところは、本当に似ているかもしれない


──似せている、というか


「好きなだけで近づく女なんぞ、そいつはただの悪魔かクソアマだ」


「ふぅん、年頃の娘にそんなこと言うんだ」


居酒屋の店主の側に配置している換気扇が圧縮し、機能を失う


しかし、それでも居酒屋の店主は怯まずに質問を続ける


「……話せ、あの一件から俺は自称妹を騙る奴を、彫り師に近づけることが出来ん」


それに、男という進化しない存在といえど居酒屋の店主は、一般人と変わりない


一般人を傷つけることがあれば家の名に傷が着くのも事実


それを考慮し、自称妹は話し出す


「……むぅー、いいよ、わかったよ…兄さんは、“あの人“は私の恩人でもあって…」


少女は、来ている服の下腹部当たりを捲る


「…っ!そいつァ…」


紅色に近いピンクの線は陰核から鼠径部に広がり、へその下全体を占領していた


蔦が


下腹部を絡みつくように


しかし、蔦の先にある全ては蕾で


────花はひとつも咲いていない


「うん、彫り師¢『シースラッシュ』の処女作品でもあるの」





彫り師の男、¢は童貞を知らないうちに卒業していた

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