反抗鬼

ひまり

第1話

眩しい朝日。鳴り止まない電車のベル。そして目を背けたくなるようなほど色鮮やかな赤。これが今までの日常の最後の景色だった。

その日はなんの前触れもなかった。いつも通りの朝。外で鳴くうるさい鳥達。太陽すら煩わしく、微妙な機嫌での目覚めだ。二度寝したくもあるが、今日の二限の講義は休むことは出来ない。ため息を吐きながら布団を出る。大学二年生にもなるとサボり方も覚え、何かと不真面目になるものだ。だか真面目に振る舞う必要がある。なぜなら誰よりもこの自分が普通であることを願っているからーー

いつも通る歩きなれた道。大学に通うのに俺は電車を利用している。免許。持ってはいるのだが、苦学生である自分には車を手に入れる余裕はない。しかも車は悪目立ちする可能性がある。などと考える内に駅に着いた。(見慣れない子がいるな。)いつもこの電車を利用するので大抵のメンツは一緒だ。役柄の高そうなサラリーマン、俺と同じ大学生、お年寄りといった大人ばかりだ。だが今日は見たことない人がいる。この辺の高校の制服におさげでマスクをした女の子。(おかしいな、この時間帯なら遅刻になるなはず。)先入観は行けないが真面目そうなこの子がサボりとは思えない。マスクで表情は見えないが目を見ることは出来た、がその瞬間に戦慄した。そこにあったのは黒。ただすべてを飲み込むような黒いひとみか真っ直ぐ前を見据えていた。嫌な予感がした。俺は彼女に話しかけるため、跨線橋を渡る。幸い次の電車まで俺は10分以上あるし、向かい側も5分はある。あと2分で貨物列車が来るがそれは関係ない。そうこう考えていると女の子まであと10メートルのところまで来ていた。心の準備を整えようとした時、貨物列車が通過する時のベルが鳴る。俺はいつもの事だが彼女は初めてなのだろう。ビクッと体を震わせた。予感が確信に変わる!「お、おい!」手を伸ばす、が届かない。声に反応してこちらを向くが止まらない。そのまま踏切、跳ぶ。その瞬間は美しくすらあり手を伸ばしたまま呆然とした。次の瞬間、貨物列車という鉄の塊が少女を破壊した。直視することすら出来ない彼女の慣れ果てた姿を見てただ呆然とすることしか出来ない。目の前に落ちてきた眼球はまだ全てを飲み込むような黒で俺は初めて目が合ったなどと現実逃避をすることしか出来なかった。

すぐに警察がやって来て俺は促されるままにパトカーに乗った。これが奈落への快速列車だともしらずに。

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