重力の法則

今村広樹

オープニング

 トン、トン、トン

「はあい、何かしら?」

 ここは世界の果てにあるという図書館。

 こんなところに人が来るのかしらっと、近くにある唯一の街の人は言いますが、不思議なことに、定期的にお客さんが来るようです。


 その日やってきたのは、男の子みたいな娘さんでした。

「あら、どうしたのかしら?」

「うん、友達に頼まれてね」

 と、彼女が借りる辞書のように分厚い本をカウンターに上げました。

「重力の法則?」

「まあ、変な本コレクターなんだよ」

 男の子みたいな娘さんは、軽く苦笑いしながら言います。

「ええ、よくわかりますよ、その気持ち」

 と、笑いながら返す彼女の足下で、猫がアクビをしていました。


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