悪癖

周りに気を遣いすぎる。

俺に対してもそうだ。

あいつがいつも疲れた顔をしてるのは、その性分のせいじゃないのか。

気を遣いすぎるっていうのはもはや悪癖と言えるのかもしれない。



久しぶり……というかお互い死に損なって再会した時には、俺もあいつも人間じゃなくなってた。別にそれがどうっていうことはないし、だからといってお互いの関係が変わることもないと思っていた。

俺達は昔から兄弟だったし、例えその姿が変わってもお互いことを覚えてるんだから、俺達は兄弟のままじゃないか。

なのに、お前はそう思っていなかったらしい。

お前が悪魔だってことを誰が気にするんだ。

誰かが気にしたとして、そのことを俺が気にすると思ってるのか。

最初に化け物同士で話そうと言ったのはお前の方じゃないか。その言葉が、どれだけ俺を安心させてくれたか。

俺はお前と契約したが、別にお前の悪魔の力が欲しかったわけじゃないし、それを利用しようと思ったわけじゃない。

あの時お前が助けてくれと泣いていたから。

同情?別に構わないだろ。

他人に同情されるほど胸糞悪いことはないが、俺達は他人じゃないんだから。

同情したんじゃなくて、分かり合おうとしたってことにしておいてくれよ。

俺がお前を何とかしたいって思ったのは本当だしな。


あれから俺はまあ自由に好き勝手にやらせてもらってるよ。

だからお前ももう少し力を抜いてみたらどうなんだ。

ここにはもう誰も咎める奴なんていない。



「ちょっと、ロル」

少し呆れたような声で名前を呼ばれ、生返事を返すと大きくため息をつかれた。

「ひとの顔をじっと見ながら考え事をするのはやめてよ」

「ん……?いや、そうか?」

「あのねえ」

僕は契約した悪魔なんだから、と彼は苦笑した。

「目を合わせて考え事をすると、全部透けちゃうよ?」

「……なんだって?」

「まったく」

目を細めてにっと笑い、彼は立ち上がりさっさと歩いていってしまう。

おいおい、そりゃあないぜ……。

今のが全部聞こえてたんなら、頼むからその悪癖は治してくれよ。

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