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蛇について
生まれた頃から腹の中に蛇がいたわけではない小学生の時分、蛇はいなかったし毎日が自由だった。日が暮れるまで友達とゲームをして帰ったら母親の手作りのご飯を食べ、お風呂にザブンと入り、家族と楽しく会話をして、夜はぐっすり眠る。
そんな当たり前のことだったけどそれだけで十分だったし幸せだった。
当時はそんなこと思ってなかったけど
中学生になってから腹の中に蛇が産まれた。
こいつは事あるごとに腹の中で暴れて私の勇気を踏み躙る。いつしか私は腹の中で暴れる蛇を恐れて自分からは何もすることができなくなった。当然友達もほとんどいなかったし部活も勉強も何一つ結果を残さず空気のように過ごしていた。
教室の中、和気藹々とした雰囲気にわたしだけが馴染めなかった馴染もうとしなかった。
そこに私だけ居ないように存在しないように見えないけどただそこに存在する空気中のように、ただ居た。
寂しいのは少しだけで自分が空気だと思えばさほど苦しくは無いし蛇が暴れないだけましだと思った。
1人でいる間楽しみだったのは本だった。母から貰った古臭い小説で主人公が他の目を気にせずに豪快に生きていく物語で私は主人公の無鉄砲さに笑いつつもその生き方に憧れていた。そんな主人公も人前では喉に玉が転がって人前ではしゃべれないらしい、そんな主人公と自分を重ねて居た部分もあった。しかし私が実際にそんな生き方をすることはないだろうとも心の中では分かっていた。そんな事をすれば腹の中の蛇が暴れる。どれだけ痛くて苦しいのか私以外には分かってもらえない。これは私だけの悩みだ。そう思った時孤独を感じた。こんなにたくさん人はいるのに誰も分かってくれない、いやたくさん人がいるからこそ誰も分かってくれない。人は他人のことなんて気にかけているようで全く気にかけていないのだ。そんな余裕も時間も無いのだろう。私もそうだ、自分のことで精一杯。他の人も私と同じように自分のことで精一杯で誰も自分のことをわかってくれないと孤独を嘆いてるに違いない。みんな分かっているけどそれを表に出すのを恐れている
世界中に孤独が広がる
そんな世界に居たくない
だからこの部屋に来た。
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