第7話 この団地をお勧めしたい

 是非とも貴方にお勧めしたい。何しろこの団地には面白い人が沢山住んでいる。だから、一日たりともその興奮で満たされない日は無いだろう。


 例えば、夜、貴方がゆっくりと寝ようと思うことが偶にはあるかもしれない。けれども、そんな詰まらないことは住人が許さない。大声で大地讃頌だいちさんしょうを歌い出す住人や永遠に鳴り響いているのではと疑いたくなるバイクの空ぶかしの音、そして、時々はパトカーの音。ああ、そう言えば、先週は消防車のサイレンも鳴り響いてったっけ? 兎に角、休息など求めようとも得られないこのサスペンス。まさに、この団地ならではのアトラクション。お金を払わなくても無限大のアドレナリン放出間違いなし。


 ええ、勿論、夜だけじゃない。昼だってめちゃくちゃ楽しいことが起こります。トイレに入っていれば水が流れなくなるし、電気も時々、いやかなり久しく使えなくなって、家の中でキャンプ気分を味わうことが出来るし、窓を開けて涼んでいれば花火や爆竹も飛んでくる。


 はっ? 何言ってんの? 楽しいじゃん。飛んできたのは投げ返すのが礼儀。方向は見計らっておいて、やり返してやる。それが面白いと思わないか? 何なら花火なんか大量にあるし、水風船を膨らませて投げつけてやっても良い。もし、貴方が金に糸目をつけないならば、金属類を投げるのが一番効果的だ。包丁とか間違いなく威力があるし。


 先日は机を投げてみたんだよ。近くの家具屋から拾ってきたやつ。サトリとか言ったっけ? 有名な家具屋じゃなかった? 兎に角、壊れるかと思ったんだけど、イマイチだったね。ここ三階で高さが足りないからさ。


 今度はもっと柔らかいやつを落としてみないと、有機物的な何かをさ。

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