TwO
紬 蒼
B面 - Boys Side
黒
深夜。
雑居ビルの裏手に男子高校生が二人佇んでいた。
黒のスウェットのパーカーに黒のジーンズ、黒いスニーカーと不穏な格好だ。
おまけに片方は武装している。
一人は名をユキといい、パーカーのフードを目深に被り、タブレットを手にしている。
もう一人はハルといい、パーカーの下に着込んでいるタートルを口元まで引き上げながら「チェック」と声を掛ける。
二人の左耳にはワイヤレスのイヤホンがある。
通信の確認をするとハルは目を閉じて月のない夜空を仰いだ。
「繋がった」
ハルはそう言ってゆっくりと目を開け、正面を向く。
その表情を確認し、ユキは右手をビルの壁に着けた。
左手に持っていたタブレットをハルに見せ、
「ハルが行くとこ解錠するよう伝えた。三階までクリア。ターゲットは五階の一番奥の部屋。四階の右側の部屋に二人、五階に八人が点在してる。カメラは全部ループさせた」
「じゃ、四階からか」
パーカーのフードを被るとハルは非常用の外階段を四階まで駆け上がり、ドアから建物内に侵入する。
その右手にはサイレンサー付の
四階に侵入するなり武装した男と鉢合わせたハルだったが、相手が銃を構えるよりも速く眉間を撃ち抜いた。
男が倒れる音に廊下の角から同じく武装した男が現れたが、こちらも素早く処理した。
表情を変えることなくハルはそのまま内階段から五階へと駆け上がる。
が、今度は五階に辿り着くなりサブマシンガンが撃ち込まれる。
それを床を転がって紙一重で躱し、起き上がると同時に二発撃ち込む。
一発が足にもう一発は頭に
が、息つく暇もなく銃を手にした男達が三人現れ、ハルに向けて発砲した。
それをハルはどこかに身を隠すことはせず、銃弾を躱しながら一番手前の一人に駆け寄る。
顎の下から頭を撃ち抜きながらそいつを盾に残り二人に向けて発砲した。
どちらも頭部に一発ずつ
その間、一分にも満たない。
「ユキ」
盾にしていた男を床に投げると、ハルは床を転がった際に脱げてしまったフードを被り直しながら声を掛ける。
「あと八発。残り五人だから三発余裕があるよ」
弾数確認が苦手なハルの為にユキがそれをこなす。
最奥の部屋の前でハルは一瞬立ち止まり、ドアノブに手を掛けた。
ピピッと解錠音がし、ドアの向こうで撃鉄を起こす音がしたが、ドアを開けると同時に銃を撃ち、バランスを崩した男を盾に残り四人からの銃弾を浴びる中、一人仕留めた。
と同時に盾にしていた男から手を離し、一番手前にいた男の下へ滑り込むように移動するとその顎から頭にかけて撃ち抜く。
そこから残り二人からの銃弾を躱しながら一人仕留めた。
残り一人。
その男に銃を向けた瞬間、男の銃はハルではなく別の方向へと向けられた。
「撃ったら撃つぞ」
ベタな台詞にハルは眉一つ動かすことなく男の眉間を撃ち抜いた。
男が銃を向けていた先には椅子に縛られ、口に粘着テープを貼られた年配の男性がいた。
「クリア」
ハルがそう呟きながら粘着テープを剥がし、ロープを切る為一旦銃を床に置き、ナイフを取り出そうとした時、左耳のイヤホンから聞こえたユキの声は「違う」だった。
ロープを解いた男がハルに襲い掛かる。
縛られたフリをしていたのだ。
不意打ちの攻撃に防戦一方になったハルだったが、すぐに反撃に出る。
相手の拳を避けると同時に背後に回り込み、後ろから羽交い絞めにして気絶させた。
「ハル、ターゲットは金庫の中。鍵は開けたから急いで」
ユキの声に一瞬眉間に皺を寄せながらも、部屋の奥にある巨大な金庫の前に駆け寄る。
重い扉を開けると、中には先程の男に似た男性が縛られた状態で倒れていた。
金庫は密閉される。
中に入れるのは『物』だ。
人には適していない。
酸素不足で危険な状態だった。
「完了っ!」
そう叫んだハルだったが「処理班が到着するまで措置をしろ」とユキとは別の声が耳元でした。
「オッサンに人工呼吸は嫌だ」
文句を言い、思い切り顔を顰めながらもハルは仕方なく救命措置を施し始めた。
その数分後、室内に数人の男が雪崩れ込む。
全員黒一色の揃いの制服を着用し、軍隊のように訓練された無駄のない動きで、ある者は死体を運び出し、別の者は室内を片付け始めた。
「戻っていいぞ」
その言葉を合図にハルが瞬きをした瞬間、顔つきが変わる。
ハルの能力は他人の経験を自分の中にダウンロード・インストールができること。
生まれ持った類まれなる運動神経を最大限に活かすことに使われている。
ハルはそれを『繋がる』と表現する。
ユキの能力はコンピュータと会話し、操作することができる。
パソコンを操作せずとも街中のどこにいてもハッキングが可能だ。
ハル以外に心を開かず、コンピュータを『友達』だと言う。
二人が属するのは『
世界の平和を陰から守る組織。
それが彼らの秘密。
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