星の劣等剣術士

アセゴ

第1章 高校編

第1話 転校初日

転校初日、俺は大きないびきをかきながら、布団に丸まってぐすっりと眠っていた。たが、そうぐすっりと眠っている時間は寸隙の時間しかなかった。


「お兄様起きて下さい。学校に間に合わないですよ」


と妹が一階から呼ぶ声が聞こえる。

俺は慌てて布団から飛び上がり、枕元にある眼鏡を掛け、魔法科学高校の白を基調としたスーツのような制服に着替え、鏡をみる。普段は清潔感のある黒髪のショートヘアーも今日はあまり決まってないような気がした。


「お兄様早く!」


下の階から妹の張り上げる声がした。俺はそれを聞き、魔法科学高等学校2年 科学科 星野流星 と書かれた生徒手帳を手にして、慌てて下に降りた。



すると、目が赤く、赤髪で肩の長さまである。しかし、年齢は俺より1歳年下の高校生にも関わらず、背がとても低い女の子が厨房で切り盛りをしている。その女の子が俺の妹の星野かぐやだ。


「俺を起こしてくれてありがとう」

「どういたしまして」


俺はかぐやの頭を丁寧になでる。だが、かぐやがその行為を拒むかのように小さなマシニクルソードを出した。


「お兄様、殺られたいのですか?」

「い、いや、何でもないです。とりあえず、その剣しまって下さい」


彼女は静かに怒りながら剣をなおす。俺はため息をつき、朝ご飯が置いてあるテーブルに向かうのだった。


かぐやは実技・筆記試験の成績が優秀で、容姿も良く、学校で人気がある。おまけに、所属している科学科の身分はポラリスだ。

机上でやる勉強は優秀だが、シェアトの俺にそんなモテ要素はおそらくないだろう。


「お兄様、ご飯が出来ましたよ」

「ああ、ありがとう」


俺はあくびをしながら返事をした。その間に妹は木箱から小さな剣を出す。


「これは? 」

「我が家から代々伝わるマシニクルソードです」

「マシニクルソード?」

「学校に行けば分かります。とりあえず、ご飯食べて下さい」


俺は急いでご飯をかきこむ。そして、その剣を黒い無地のカバンに入れ、慌てて外に出る。


「お兄様、いってらっしゃい」

「いってきます」


俺は走って学校へ向かった。

後ろで、かぐやがマシニクルソードを使って何かをとなえようとしていた。


「スイッチ! うみへび座! イオタ・ヒュドラェ! 」


かぐやは呪文のようなものをとなえ、火花をあげながら風の速さで学校へ走って行った。

「おい、待てよ! かぐや!」

俺は妹を追うようにして学校へ向かった。


キンコーンカンコーン。

学校のチャイムが鳴り響くと同時に俺は教室の前に着いた。そこで女の先生が俺に声をかける。


「流星君、転校初日から遅刻ですよ」


背が高く、黒と桃色のジャージを着ていて、黒髪のツインテールで少し胸の大きい女性は、担任のみこちゃんこと天野美琴先生だ。


「すみません」

「分かりました。次からは気をつけて下さい。それでは、教室に入りますよ」


先生はため息をつきながら教室の中へ案内する。


「皆さん、今日は業火の姫君の兄と噂されている転校生が来ています。入って来て下さい」


教室の中で、どんな生徒が来るのか話題になっている中、俺は教室に足を運んだ。


「は、はじめまして、転校生の星野流星です。よろしくお願いします」

俺は恥ずかしそうに自己紹介をした。

「星野君の席はあそこです」

先生は窓際の空席に指をさした。

「僕の隣の席空いてるよ」


金髪で目の色が若干黄色に近く、ショートヘアーで眉目秀麗な男性が俺に話かける。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

俺は席に着いた。その瞬間、さっきの金髪の男が小声で俺に質問をする。


「ねえ、君はマシニクルソード? それとも、マシニクルガン?」

「俺が使うのはマシニクルソードだけど、それがどうかしたのか?」


俺が小声でそう訊くと。金髪の男は形相を変えて俺の質問に答えた。

「いや、別に何でもないよ」

男は謎の笑みを浮かべた。

「皆さん、次の授業は科学基礎演習Aですよ」


先生がクラス全員に声をかけた。

「それじゃ、僕行くね」

「ああ」


彼は慌てて席を立ち、教室の外へ出ていくのだった。


「何だったんだ、さっきの笑みは?」


と俺は独り言を言いつつ、マシニクルソードをカバンの中から取り出し、体育館に向かった。



体育館に向かう途中、みこちゃんに声をかけられる。

「先生? どうかしましたか?」

「今すぐ、あなたのマシニクルソードを見せなさい」


先生は鋭い目つきをして、俺のマシニクルソードを見る。俺は戸惑いながら先生にマシニクルソードを渡した。


「あなたのマシニクルソードは、他の生徒が持っているのと違うようですね」


「え? それは、どういうことですか?」


「あなたの剣は他の生徒が使えないスイッチを持っているのですよ」


「今朝、かぐやが使っていたものなのか」と俺は思った。



「ちなみに、スイッチは、普段は小さいマシニクルソードを大きくするボタンが、剣の真ん中に付いている赤いボタンです。そして、その下に付いている青いボタンがスイッチです」



「へ~」と俺は心の中で思いながら、先生の話に耳を傾ける。


「ただ、スイッチを使用する時は、十三星座のうちのどれかとセイクリッドコードを声に出さないといけないので、気をつけて下さいね」


「はい、分かりました」


と俺は頷き、先生の所から立ち去ろうとした瞬間に腕を掴まれる。そして、ガラスのように透明な石を右のポケットから取り出した。


「今から、何属性のマシニクルソードの使い手か診ますので、石に触れて下さい」



俺はそっと透明な石に触れる。すると、石の色がだんだんコバルトブルーに変わっていく。

「あなたは氷属性の使い手ですね」

「そうなんですか!?」


そのやり取りをしている間に、先生は左のポケットから小さなナイフのような剣を取り出した。


「これは?」

「生徒全員に支給しているマシニクルソードです。どうぞ」

「ありがとうございます」



俺は急いで体育館に向かって走って行くのだった。

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