幼なじみで腐ってます。
アンドレイ田中
1話 彼と彼女は再び出会った。【今年は厄年なのか】
4月4日 午前9時
俺は腹に強烈な一撃をお見舞されて起こされた。どうやらエルボーを食らったらしい。
「ぐはっ!...腹が...い、痛てぇ...」
一瞬、呼吸が出来なくなった上に鳩尾に入ったせいで吐き気に襲われた。
俺は目覚めはいい方だが意識がしっかりするまでに少し時間がかかるが、この起こされ方をされたのでいつも以上に早く意識が覚醒した。
俺のベットの前で仁王立ちをしている女に気づいた。
その女はかなり顔は整っており、パッチリとした二重、目は少女漫画ほどでは無いが大きく、少し高い鼻、口紅を塗ったのかと思わせるほどの発色のよいピンク色のプルっとした唇。茶色や白色などの色は全くない黒の髪は首と体の付け根まで伸びており、そこから豊かに育った胸、細い体、その下には体より少し太い腰がある。これは世間一般で言うところの『美少女』というものなのだろう。
恐らく彼女が俺にエルボーを食らわせたのだろう。絶対に許さねぇ!
俺の前に立つ彼女は、ブラックスニーを履き白のTシャツを着てその上からデニムジャケットを羽織っていた。
その彼女の名前は
初めからそうだってというわけではなく、遡ること今から1年ほど前、つまり中学生2年生の頃の話だ。
当時、俺たちは男女の学年スクールカーストのキングとクイーンだった。
クラスメイトが何故か床に落ちていたプリントに足を滑らせて転んだ。これだけなら何の問題もなく済んでいたのだが、転んだ場所が悪くその近くの席に座っていた女子を不可抗力で平手打ちをしたんだ。
そこから俺たちの学年は男女に別れて喧嘩になったんだ。
俺は男子に佑厘佳は女子に味方をしたんだ。
結論から言うと
【不可抗力だったからしょうがなかったよな】という形で仲直りをしたんだ。
しかし、周りが仲直りしたからと言って仲直りできるものではなかった。俺たちは喧嘩していた間に言い合ったお互いの不満、悪口、一度狂った歯車はだれかに直されない限り治らないのと同じで俺たちの仲はオイミャコン村の最低気温よりも冷えきった。それで俺たちは顔を見れば喧嘩をするほどの『犬猿の仲』になった。。
「なんで俺の部屋にお前が居るんだよ!
朝からお前の顔なんて見たくねぇーんだよ!」
「はぁ?おばさんに『起こしに行って』って言われたから起こしに来てあ げ た のに
何よその態度は!ありがとう くらい言ったらどうなの!?」
ここから俺たちの喧嘩?口論?は約30分間に及んだ。
お互い疲れて引き分けってことになって2人で1階に降りていった。その間もお互いの悪口はフルオートのマシンガンの如くネタという銃弾が切れるまでは止まらなかった。
「あら?結婚式!おめでとー!」
母に何故かハイテンションに迎えられた。え?さっき結婚式って言った?
「「何が結婚式だ!」」
俺と佑厘佳は同時に叫んだ。
何が結婚式だ。こんな女と結婚なんて女がコイツ一人になってしたくない。そもそも、なんで俺とこいつが結婚しなくちゃならないんだ。
母にそれでは、と言って佑厘佳が出ていこうとしていたがそれを母はお茶していかない?などと甘い言葉で引き止めていた。
その光景を見て俺はまた部屋に戻った。寝るためではなく、服を取りに戻ったのだ。寝たいとは思うが今日は出かける予定があるのだ。それは今日発売の新刊を買いに四条まで行くのだ。
今日の服装は白のスニーキーに黒のシャツで上から青のスカジャンを羽織るつもりだ。
着替えて下に降りるとまだ母と佑厘佳は交渉をしていた。すると、佑厘佳が折れたのか渋々リビングに向かっていった。
俺をリビングの奥にあるキッチンに向かった。
トーストをトースターに入れて焼けるのを待っている間、座っていると俺の隣に佑厘佳が座った。
「......なんでまだいるんだよ」
「おばさんにとても上質な紅茶が入ったらか飲んでいかないって言われたから」
母は警察の国際刑事課に務めていて年に3,4回ほど海外に出向いている。
その母は先日帰ってきて、今佑厘佳が美味しいと言いながら飲んでいる紅茶だ。
あ、ちなみに父は陸上自衛隊に務めていて確か階級は陸曹長だったと思う。
その父は明日の俺の入学式前日に戻ってきてくれる。
昔から父は柔道、空手、合気道、ボクシング
などの色んな競技をしていた。
そのせいか俺は4,5歳の頃から父に帰ってきてはしごかれてきた。
たまに、サバゲーにも連れてかれていた。全員自衛隊しかいなかったけど...。
そのせいもあってか俺の身長185cm
体重63kgの腹筋はシックスパックに割れていて腕立て伏せは、休憩無しで100回できる。ついでに背筋は300オーバーの細マッチョだ。
トーストにイチゴジャムを塗って食べていると母が俺たちの前に座った。
そして開口突然...
「2人はいつになったら付き合うの?」
俺は飲んでいた牛乳を、佑厘佳は紅茶を驚きのあまり母の顔にぶっかけてしまった。
佑厘佳はコップに入っていた紅茶を全部飲みほして「ごちそうさまでした」と言って家を出ていった。
俺は「今から出かけるから昼ごはんいらないし」と言ってトーストと歯ブラシ、歯磨き粉を持って2階に上がった。
俺の家には1階と2階、両方にトイレと洗面所がある。小学校に入って初めて友達の家に行くまではこれが普通だと思っていた。
トーストを食べ終えて、歯磨きをして顔を洗い終えると部屋に戻った。
俺はコインを1枚とって指で弾いた。
これは俺の昔からの占い方で表が出てば良いことが、逆に裏が出ると悪いことが起きる。
なんとも単純な占い方だ。
コインを掴むと向きは『表』だ。
「よし!今日はいいことがあるな」
俺はスカジャンを羽織ってボディバックを肩から掛けた。鞄の中には財布とスマホ、本が入っている。
黒の靴を履いて家を出た。
今から四条に向かう。
俺の最寄り駅から約1時間、電車と地下鉄を乗り換えてやっと到着できる。
駅に到着して『IKOKKA』を改札で通してホームに向かった。
電車を待っている間、ずっとスマホを弄っていた。何をしていたかと言うと、Uwitterをしていた。
俺の目的の本の在庫がまだあるかを確認するためだ。
幸いにも今のところは残っているが、在庫は少ないらしい。
ちょうど確認し終えると、電車が駅のホームに到着した。
さすが日本だ。1分の遅れもなくホームに到着した。母がよく『外国は普通に遅れるから時刻表が当てにならない』と怒っている。
電車に乗り込むとちょうど席が空いていた。
座って鞄から本を取りだした。
今、読んでいる本はアニメ化をされているライトノベルだ。
ぼっちを題材にしてとても面白い。
「ありがとうございます」
降りる駅に到着した。
扉に近づいている間に扉が開いた。
そして、俺が降りると同時に扉は閉じられた。
電車から降りた人達と同じ向きで俺も歩き出した。
『IKKOKA』を通して改札を出た。
駅を出て正面にはショッピングモールと映画館がある建物がある。
けれども、今日の目的はそこでは無い。
後ろ側には地下鉄がある。
次は地下鉄をめざして約500mの距離を歩いた。
地下鉄の改札も『IKKOKA』を使って通り抜けた。
地下鉄も階段を降りるとすぐに来た。
今日はとても運がいいな。
地下鉄は2駅先の『京都市役所前駅』で降りる予定だ。
地下鉄に乗り込み今回も席が空いていたがたった2駅だけしか乗らないので座らないことにしておいた。
2駅というのはあっという間ですぐに到着をした。
改札に『IKKOKA』を通して抜けた。
改札を抜けるとデパ地下ではないが、かなりの大きさの地下で店も、服屋やパン屋などの多くの店がテナントを借りて営業していた。
パンのいい匂いがするがその甘い誘惑に負けずに階段を登って、地上に上がった。
そこから少し上がると四条の商店街にやっと到着した。
到着はしたがまだ目的の場所には到着できていない。
俺の目的の場所はここからまだ1kmくらい歩かなければ行けない。
俺はまた歩き出した。
周りには楽器屋等の店が沢山立ち並んでいた。
周りを見ながら歩いているとかなり早く到着出来た。
店の自動ドアが開くとそこには俺の目的の本があった。
レジはかなり混雑をしていた。
なので、在庫はまだあったのでその商品は後にして店の横から出た。
この店には2階があり、2階にはBL本や同人誌がかなり揃えられている。
BLが好きだ。
世間一般で言うところの『腐男子』と言うものだろう。
けど、これだけは言わせて欲しい。
BLって面白いよね。
そんなことを考えながら、少し急な階段を登った。
2階は1階と違いぽつぽつと人が居たもののかなり空いていた。
入っているすぐ右側には『週刊少年ジャック』等のBL本が揃えられている。
俺は右側に進行方向を合わせて歩き出した。
色々と1つ目の棚を物色して2冊も面白そうなBLの同人誌を見つけて持っていた。
ひとつの棚が終了して角を右に曲がった。
すると、俺には衝撃が強いものが目に入った。
周りも強いがそれ以上のものが俺の目に映っていた。
それは『新羅佑厘佳』がBL本を物色している姿だった。
俺が見ているのに気づいたのか、佑厘佳もこちらを見て、俺と同じ反応をしていた。
お互いに体は1ナノメートルも動かず、目だけを高速で瞬きをしていた。
それもそのはずだ。互いに手にはBLの同人誌を持っていて、何より絶対に人にはバレたくないコンテンツのコーナーにいるのだから。
「よ、よぉ、佑厘佳。今朝ぶりだな」
先に俺から声をかけることにした。
まず、この状況を打破しなければいけない。
そして、誰にも言わないように説得をしなければ...。
「そ、そうね。薫」
あいつはまだぎこちない。
なら、いける!
このままカフェとかに連れて行って紅茶を飲まして交渉すれば上手く行く!
「そうだ。この後時間あるのならスロバ行かないか?」
「いいわね。行きましょうか」
俺たちは店をあとにしてスロバに向かった。
『スローバックス』略して『スロバ』大抵の人はそうやって呼んでる。
珈琲やら紅茶やらが揃ってるかなりオシャレな店だ。
俺たちはスロバに向かっている間、無言だった。
何分か歩いていると到着した。
店の前に立つと自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませこんにちは」
「いらっしゃいませこんにちは」
「いらっしゃいませこんにちは」
ブック○フか!
おっと、危ない。声に出して突っ込んでしまうところだった。
いきなりサ○ドウィッチマンのネタが飛んできたからびっくりした。
店内はかなり空いていて、すぐに順番が来た。
「ご注文お決まりですか?」
「アール グレイのGrandeで」
店員が聞いてから3秒も立たないうちに佑厘佳が答えた。
「カプチーノのTallで」
こいつそんなに紅茶飲みたかったのかよ。もう末期じゃねえか、だれか病院に連れて行ってやってくれ。
慣れた手つきで店員はレジ打ちをした。
「お会計820円です」
俺は財布から1000円を渡した。
佑厘佳は財布を出そうとしていたが俺が、払ってしまったのでカバンにしまった。
店員から商品を受け取ると席を探した。
けれども、すぐに見つけることが出来た。
2人が向かい合える席だった。
とても、いい席だった。
今の俺たちにとっては。
座って一息した時に同じことを同じタイミングで言い放った。
「「お願いします!このことは誰にも言わないでください!」」
「「あれ?」」
俺たちは言いたいことが同じだった。
そして、して欲しいことも同じだった。
俺たちは目配せをして、熱い握手をした。
ここに俺たちの『戸新平和友好条約』が締結された瞬間であったと、同時に俺たちの止まっていた運命の歯車が動き出した。
誰にも動かせず、凍りついていたものを『BL』が温めて溶かした。
俺たちは話をしながら、後にした店に戻っていた。
アニメのポスターが貼られた自動ドアが開いた。そして、俺の目的だった本は無くなっていた。
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