不思議な花屋さん

たーしゃま

第1話 アルバイトを探して

桜が舞う季節。

地方の田舎高校を卒業し、念願の東京の大学生活デビューを始まった宅野晴樹は悩みを抱えていた。


「やばいコミュ症過ぎるぞ俺」

「せっかく大学生活始まって2週間過ぎたけどまだ1人も知り合いができねぇ」


 晴樹は昔から人付き合いが苦手で1人で過ごすことが多かった。知り合いは数人。その事に今まではなんとも思っていなかったが、いざこの歳になって危機感を感じている。


「とりあえず接客業のバイトしてみるか」


 安直な考えかもしれないが、人間関係を怠ってきた晴樹にはそれしか考えられなかった。



 適当に自宅アパート付近で歩き、とりあえずコンビニとかの求人広告を探している最中に変わった求人の貼紙を見つけた。


「魔法使いの手伝いしませんか?」


 晴樹は思わず二度見するほど個性的な広告だと思わずにはいられなかった。


 店は色とりどりの花やが並べてあり、一輪の花から鉢植えまで沢山の生花で溢れている。


「ここ花屋だよな?魔法?花が?どういうこと?」


 とりあえず店の人に聞いてみることに。時給とかシフト時間の要項の内容よりもなによりこの余りにオカルト気味な広告に興味が湧いてしまった。


「すっ…すみま、すみません。あのーだれかいませんか?求人で聞きかいことがあるのですが」


 ところどころ吃りながら人を呼んでみる、我ながコミュ症全開。


 少ししたら直ぐに、返事がかえってくる。


「はーい。すぐ行きます、ちょっと待ってね」


 店の奥から店主らしき女性が姿を現した。


「ごめんなさいね、今在庫整理してたの……

 えっと求人の話ですね?」


 店主は20代のお姉さんらしい容姿で黒髪ロング。ジーパン、Tシャツ、エプロンとまさに店員そのもの。エプロンには何故か猫の首輪についてそうな鈴のようなアクセサリーが付いていた。


「あっ……あのー求人広告の見て気になったんですげ、魔法ってなんですか?」


「魔法のことね?でもその前にまず最初に、私は櫻井綾乃って言います」

「この店の一応、店長をしています、それで君の名前は?」


「すみません……最初に言うべきでしたね、自分は宅野晴樹と言います、大学1年生です」


「よろしくね、宅野くん」

「それで求人の魔法の意味だけどね、意味は特にあり……ないかな。うん、ないよ」

「最近は人手不足じゃない?奇抜な広告なら募集も来るかなーと思ってね」


 隠してる?


「そうなんですね……てっきりオカルトな事があるのかと思いましたよ」


 少し残念そうな晴樹であったが、普通に考えてそんなことだろうと理解した。


「ごめんなさいね、期待を裏切る感じになっちゃて」

「でも、宅野くんがそれでも興味あるならバイトしてみない?シフトも時間を融通きく様にするからさ、ねっ?お願いできないかな?」


 ぐいぐい来るなこの人。春樹は内心思う。


 今まで櫻井さん1人で店を管理していたが、やはり時間が足りないらしい。水やりや、包装してくれるだけでも助かるほど人手不足。


「でも自分接客業するの初めてで人付き合いとか人間関係とか苦手ですけど大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ、1つずつ慣れて行けば良いし、必ず助けてあげるからさ、チャレンジしない?良い経験になるよ」


 晴樹は少し悩んだが……


「まぁこれも何かの縁かな。分かりました、バイトさせて下さい」


 接客すると決めてたし、何より櫻井さんのどことなく不思議な雰囲気が気になっていた。


「ホントに?ありがとう宅野くん」


 とても嬉しそうな櫻井さん。その笑顔を少し分けて下さい。いや学ぶべきなんだろうなと感じた。


「これから一緒に頑張ろうね晴樹くん」



 晴樹はこれから不思議な経験を味わうことになるとはこの時は微塵も思っていなかった。

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