✳かが みのなかにいる✳
全滅したからといって、パーティーが最後にふっかつのじゅもんを聞いたお城に、もち金半減で引き戻されるわけでもないらしい。魔界でここにない魔法やらの修行をするんなら、そのくらいの特殊能力もつけておいてほしかった。
しかし、勇者たちは全滅したのである。魔神が日本や世界を掌握するのも時間の問題ということか。力不足の勇者パーティーとたたかう時間を取ってくれるのはやさしさなのだろうか。すでにさくっと世界を潰してしまってそうだが。
犬のパンドラは、これを見てくれと言いたそうに分厚い、百科事典のようなハードカバーの厚い本のそばでうろうろしていた。よくみると本の周りが、淡白く光っている。カバーを開くと、中の文字がゆらぎ、なんと日本語に変化した。そういう魔法?がかかった本らしい。
めくれめくれ、とパンドラがじたばたするのでばーっとページを繰った。そこ、と鳴かれて手を止めたところにあったのは、畳8枚くらいの大きさの鏡の絵だった(比較で人の絵が書いてある)。アンティークのような縁取りの飾りがしてある。
「封印魔鏡は」
そばの説明文も読めそうだった。
「封印魔鏡は、鏡の精霊、エヴィル=ミラが住んでいて、ひとたびものものを吸収すれば、どんな武器や魔法をもってしても、ふたたび吐き出すことはない。吸い込まれた物はただ虚無のなかで苦しみ抜き、そして死んで行く。」
なるほど。
……全滅そして「*かがみのなかにいる*」ってとこかしらね。
速攻リセットするか、あきらめてターボファイルでロードし直せばまだチャンスはあったかもしれないけど、ほぼほぼ三人は、ロスト状態ということである。
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