第4話 ギルドの思惑
村へ戻る頃にはすでに夕方。日も落ちかかり、宿屋へ戻ると一階の食堂兼酒場にはそこそこ人が集まっていた。戻ってきた俺を見て、店主は声をかける。
「おう、お帰り」
「あぁ」
「なんだなんだ、実入りは少なかったか?」
さて何て言うかなー、と思いながらカウンターへ腰掛けると、後ろから忍び笑いが聞こえた。目を向ければ、商業都市ギルドから来ている冒険者パーティの奴ら。俺を見てニヤニヤ笑い。くそ、お前らわざとやりやがったな?
「・・・なるほどな、嫌がらせか?しみったれた真似するような冒険者もいるもんだな」
俺が一言啖呵でも切ってやろうかと思った一瞬、カウンターの奥からエールのジョッキを俺に出しながら、店主が言う。奴らもその一言に不快感を感じたのか、1人が立ち上がろうとするが周りの2人がそれを抑える。
じろり、と睨めつける店主。その目付きの鋭い所を見ると、この店主昔は一角の冒険者だったんじゃないだろうか。
俺はエールをひと口飲んで喉を潤すと、深呼吸して気持ちを整えてから奴らのテーブルへ向かう。無理だとは思うが一応奴らの言い分も聞かないとな。
「よう」
「なんだよ、こっちにゃ用事はないぜ?」
「・・・森の薬草の事で聞きたいんだが。全てに『マーキング』してるのはアンタらの考えか?それとも商業都市ギルドの意向か」
「あん?それが何だってんだよ」
「俺達の考えじゃなけりゃどうするんだ?」
「商業都市ギルドの意向であるのなら、こっちも出るとこ出るがいいんだな?」
「好きにしろよ、兄ちゃん」
「そもそもあんたが遅いのが悪いんだろ?」
「私達に言いがかりを付けるのはよしてもらいたいな」
「・・・そうか、わかった」
くるり、と踵を返す。どうやらアイツらの考えではなさそうだ。商業都市ギルドの意向でやっているのであれば、王都ギルドから通告を出してもらうしかない。
ただそれが魔女の
俺はカウンターのエールを一気に飲み干す。部屋へと戻ると、急いで王都ギルドに向けて手紙を書く。一応何かあった時に備えて、緊急連絡手段はある。しかし商業都市ギルドからアイツらに指令が届くタイムラグを考えるとギリギリになるかもしれない。
手紙を魔法道具に綴りつけ、部屋の窓から飛ばす。鳥の形をした緊急連絡手段は、光を放って飛んでいった。さて、ここからは待つしかできないな。一応奥地の採取エリアにも足を運んでおきたいし、明日の朝は早く動かねえと。
腹ごしらえの為に下に降りると、ジーナが心配そうにしていた。カウンターの席へ戻り、注文をする。
「お客さん、大丈夫ですか?」
「あ?なんだ?」
「あの人達ですよ!お父さんから聞きました!」
隅のテーブルに陣取った奴らは、酒を飲んで盛り上がっていた。ま、しゃーないわな。遅かったのは事実だし。しかし俺も何度かこういった限定クエストを受けているが、今回のような嫌がらせを受けたのは初めてだ。
魔女の
となると、アイツら…というか商業都市ギルドは何を考えているんだ?採取できないものにあれだけの『マーキング』をした所で持ち帰れないだろうし…引き取り手もないだろう。
「お、旨ぇなこの煮込み」
「だろう?これはウチのオリジナルだ!森の山菜とか使ってるからな!」
「そういえば、朝作ってたカレーは?」
「あん?あれはもう昼で売り切れちまったよ」
「マジかよ!食いたかった・・・!」
くそー、売り切れかよ…いい匂いしてたもんな…あのガキも鍋で買いに来てたって事は相当じゃないのか?そういえば持って帰れたのか?どこに住んでるのか知らないが、あんなちびっこいガキに持って帰れるもんなのかね。
「そんなガッカリすんなって。また明日仕込んでやるよ仕方ねえから」
「いいのか?悪いな」
「そこまで俺のカレーを待ってるってんなら応えるのが料理人だろ?次のカレーの日まではあんたいないだろうしなぁ。一人分仕込むとなるとちょっと味も変わるだろうがそこは勘弁してくれよ」
「そこで文句なんか言わねえよ」
「クエスト失敗しそうでしょぼくれてるダンナが可哀想だからなぁ」
「しょぼくれてねえ!」
なんか店主にすら散々なイメージを持たれてるな俺は。そこまで気落ちしちゃいないが、今は王都ギルドからの返答待ちだ。
翌日、朝早く支度をして森へ入る。奥地の採取エリアはまだ『マーキング』されてないといいんだがどうだろうか。そこまでアイツらのレベルで進んじゃいないとは思うが。
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