俺と彼女の創作活動
月🌙
第1話
——キリン、レモン♪ キリン、レモン♪ キリンレモン♪
部屋の中で声優が歌っている曲が響いている。外は外で蝉の声が鳴き、部屋も外も正直煩い。
そんな中俺は寝転びながら本を読み、彼女はノートでオリジナルキャラクターを考えていた。
「おっかしいな〜。いのりんのCDどこ行ったんだぁ?」
ガサゴソと自分の部屋の中を荒らす幼馴染。
「普段から掃除しないから探すハメになるんだよ」と俺は心の中で呟き片手でページを捲る。
「はぁ…」
彼女が頬に伝う汗と共に溜め息を吐いた。
「どうしたんだ?」
「このキャラクターの設定に悩んでる。後、キャラの使い道」
オレンジ色のヘッドホンを片耳だけ外し腕で汗を拭うと、彼女は今流れている曲の飲料水を喉を鳴らしながら一気に飲んだ。
ペットボトルに付いている雫がポタポタと床に落ち小さな水溜まりを作る。
「使い道なぁ…うーん」
「それならさ、お前ら二人で小説でも考えてみたら?」
「「は?」」
幼馴染がCDを片手に訳の分からないことを提案してくるので、俺と彼女は言葉がハモり唖然となった。
幼馴染は黒のパイプ椅子に腰掛けると、パソコンを開き創作サイトを見せて来た。
「ほら、これ。このサイトはイラストとか小説が載せれるんだけどさ、お前は小説考えるの好きじゃん?それなら、彼女が表紙挿絵担当したり…あ、その逆も有りか。彼女のキャラに基づいて小説作ってみたり。ここのサイト、挿絵挿入出来るから便利だぞ」
「ばっ!?おまっ!!それ言うなよ!」
「え?アンタ、小説考えるの好きだったの?へぇ〜、意外。ねぇ、読ませてよ」
目を輝かせながらせがむ彼女に、俺は何て言ったらいいのかわからず、手に持っている本で顔を隠す。そして、気まずそうに目を逸らしている幼馴染を睨んだ。
「ほれみろ。こういうのが嫌で隠してたんだぞ。恨むからな…」
「すまん。そ、それよりさ、ほら!投稿してみたらどうだ?!」
あからさまに話しを逸らす幼馴染に、俺は溜め息を吐くとパソコンの画面を見た。それは彼女も同じだった。
「ネットにねぇ」
「私は良いよ」
「マジで?」
「もしかしたら、オファーがくるかもよ!」
ニヒヒと笑う彼女に、俺は苦笑する。一攫千金を狙っているのがバレバレだからだ。
「まぁ、こういうのも経験ってやつだし。やってみるか」
「なら、この俺様が君らのアカウントを作ってあげよう!」
「パスワードは覚えやすいのにしてね」
こうして、俺と彼女の創作活動が開始した。
二人で一つの物を作るのは、俺も彼女も初めての事なので半分は不安、もう半分はドキドキしている。
でも、この炭酸飲料水みたいに、若しかしたら弾ける人生が来るかもと思うとワクワクが止まらなかった。
——キリン、レモン♪ キリン、レモン♪
部屋の中で声優の麒麟レモンのフル曲が流れる。
外では蝉が騒がしく鳴いている。
今年の夏、俺と彼女は創作活動を開始し、人生で初めてそれをネットで公開した。
俺と彼女の創作活動 月🌙 @Yodu1026ki
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