第136話 「135話」

「ちょっと入るところ間違えただけなんですう」


「ここであっとるわい」


「あってた……」


ちくしょうあってた!


なんでこんなむっさい髭ダルマに囲まれにゃーあかんのだ……てか、この人らほんとに髭すごいな!

ドワーフじゃないのってぐらいすごい。 ……ドワーフ? え、まじ? そう思ってみればみるほどドワーフぽい。


そっか、そうだよね。 ファンタジーな世界なんだものドワーフがいたっていいじゃない。

もしかするとエルフとかも居るかも知れんぞ。


獣耳な人をまったく見ないもんですっかり頭の中から抜け落ちてた。



……まあいいか、ドワーフかも知れないけどどっちにしても髭づらでむっさいおっさん連中には変わりない。とりあえず用事すませちゃおう。


「ええと、それで俺に何の用事なんです?」


「うむ……迎撃用の兵器を用意しておったんだがの。 思ったより数が揃わなんでな、追加で作っとったんだが……どうにも間に合いそうにない」


「ほうほう」


どんだけ作るつもりなんだろうね。

ダンジョンシーカーが全部でどれだけ集まるのか分からないけど、全員が遠距離攻撃手段持っている訳じゃないだろうし。途中までは兵器使って、近づいてきたら近接って感じなのかな? あとはー……同じ金の人らでもレベル差はあるし、低めの人らは後半きつくなってきたら兵器の使用に専念するとかかな?


「そこでだ、お前さん木で色々出来るんじゃろ? 使えるかどうかは分からんが試しに作って貰いたいんよ」


「なるほどなるほど。 そういうことであれば協力します。 何を作れば良いんです?」


俺が作れるとなるとー……カタパルトとか? あれって構造の大半が木だったよね。


「それはな……まあ実物を見たほうが早いじゃろ」


そういうと……そういや名前聞いてなかった。

おっさ……おっちゃんでいいか。 おっちゃんは部屋を出て、壁の上へと続く階段へと歩き出した。


階段をえっちらおっちら登っていくと、登った先では何人もの人が迎撃に備えるために作業をしており、その中には迎撃用の兵器も含まれている。


「バリスタだ! ってかでっかいな!?」


迎撃の兵器はバリスタだった。

てかまじで大きい。


どう考えても人が扱えそうな大きさじゃないけど、たぶん高レベルの人ならいけちゃうんだろうなあ。

弓の部分も2つ付いてるし、むちゃくちゃ威力ありそうだ。


「こんぐらいじゃないと役に立たんでな……お前さんには、この土台の部分とバネの部分。あと、こことこここ。それにここもじゃな。 この辺りをなるべく上部な木で作ってもらいたいんじゃ。 特にバネの部分はでかい力が加わっても大丈夫なようにしとくれ」


「oh……」


やべえ、思ったよりやること多いぞっ。


「タマはお昼寝してるニャ。 がんばれニャ」


「え゛っ!? タ、タマさんちょっ、まって……い、行っちゃった」


タマさん酷いんっ!?

そんな……辛くてもタマさんいれば大丈夫って思ったのに。居なくなるなんてそんなご無体な。


せめて見える範囲に居てくれればいいのに、飛び降りてどこかに行ってしまわれた……絶望しかねえ。




「まあ……やりますか。 矢は作らなくていいんですか?」


指定されたものに矢がなかったけど、たしかあれも木を使うよね。


「そっちはキンバリーに頼んでるでな。 大丈夫だ」


「うっす。 あ、でもあとで試したいことあるんでいくつか作ってもいいですか?」


あ、なるほどね?

木より石のほうが堅いし威力がある……のかな?


でもちょっと試したいことがあるので後で何本か作ってみよう。

もし評価良ければ量産すればいいしね。


とりあえず先に他のパーツを作ってしまおう。

結構思い通りの形にはなるけど、細かい部分は作れない。ま、そこはこのおっちゃんが何とかするだろう。


「まあ構わんぞ。 ……ふむ、バネはもうちっと堅くてええかな」


「んー……こんなもんすかね?」


結構堅くしたつもりだったんだけどなー。

あまり堅いと弓ひけないような気がするけど……ま、いっか。


「よしよし。 すぐに加工して試してみるべ……よし、お前らこいつ加工しちまうぞ!」


おっちゃんの声におうっと威勢良く返事をするおっちゃんず。

もうね、ぱっとみ区別つかないの。髭づらのおっちゃんがいっぱいでゲシュタルト崩壊しそう。



「んむ。 組み立ては出来たぞい。 あとは試し撃ちだが……お前さん、レベルはいくつぐらいだったかの?」


すんごいあっさり加工と組み立てが終わった。

こんなにさくっと終わるなら俺いなくても……あ、ほかのは金属製か。

さすがに金属を加工するとなると時間掛かるかー……っと、俺のレベルね。



「補正いれて65ぐらいっすね」


「金相当か。ならええわい」


確かそんなもん。

今タマさんおらんから補助魔法ないからね。


おっちゃんは俺のレベルを聞いて頷くとチョイチョイと手招きする。


なんでっしゃろ。



「こいつを使って弦をひいて……あそこ見えるかの? あの鉄板を狙ってくれい」


そういっておっちゃんが指差したのは俺達が立っている壁の向かい側……あ、街を囲っている壁だけどね、丸いわけじゃないんだ。 歯車みたいにギザギザしてるんよね。

これ、壁に敵が張り付いた時に攻撃しやすいんだよね確か。


その辺ちゃんと考えて作ってるんだなー……っと鉄板ね鉄板。まじで鉄板?


……あった、てか遠いな。大体300mぐらい離れてそう。

でかいから当たるとは思うけど、重力考えて撃たないと届かなさそうだ。



「結構距離あるっすね。てか矢が太すぎる……ふんっ!? ちょ、かってええ!!」


弦をてこ使って引っ張ってるのになっかなか引けない!


的が鉄板?と疑問に思ったけど、こんだけきついなら鉄板でも余裕で貫くだろう。矢もキンバリーさんが作ったやつだから丈夫だろうし。



「手がぷるぷるしてる……えっと、狙いつけてこれを引けばいいのかな?」


なんとか準備できた……あとは狙いを付けて撃つだけだ。

一応サイトぽいのついてるし、引き金も分かりやすいし、まあ普通に撃てそうだね。


んじゃ、狙いを付けてーっと。


「そうじゃ。気を付けてな」


「へっ? ――ぐふゅぅぅんっ!?」


おっちゃんが気を付けて言うが、その時には既に俺の指は引き金を引いていたのであった。


バチュッて感じの音がして、矢がとんでもない勢いですっ飛んでいく。

で、それと同時に反動で後ろにずれたバリスタの柄の部分?が肩にめり込んできた。 めり込んできてというか、すっ飛ばされたんですけどねっ。


「か、肩が……反動やばすぎる」


「うむ。 威力は申し分ないな」


肩を押さえているといつの間にかおっちゃんが的を回収してきてた。

おっちゃん、ちょっとはこっちの心配しようぜっ。


「お? おー見事に貫通してる。……え? これ厚すぎない?? 威力やっば」


せいぜい厚さ10mmとかそれぐらいかなーと思ったら、こいつ100mmはあるぞ。

矢はその分厚い鉄板を見事に貫通していた……やばすぎない?矢の威力じゃないでしょこれ。


てか、この分厚い鉄板を普通にここまで担いできたこのおっちゃん、実はかなり高レベルなんじゃなかろうか……? 一緒に戦ったりするんかな?


「こんぐらいでないと使いもんにならんでな。 まあ、これでも推奨レベル100超えてる連中には大して効かん。 そもそも当たらんしの」


「ほへー……」


まじか。

これ俺がくらったら体千切れそうな気がするんですけど。

ぱないな、高レベルの連中。


「それじゃこいつを……あと300台分頼む。 さっきのと同じのを用意してくれれば後はこっちで加工して組み立てちまうでな」


「300……」


さらっと、とんでもない数お願いされたんですけどっ!?

ちょっとタマさんに触れないと死んでしまう病を患っているので帰っても……。




逃げ道塞がれてたよ。こんちくしょーめっ。

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