第134話 「133話」

「いや、おかしいおかしい……」


俺、友人とか街を守るって考えてたよな……どこから世界樹がきた??

どこ、から……どこって。



……考えられるのは一つしかない。

顔をすっと横に向ければ視界に入るのは木と化した俺の右半身……どう考えてもこれだ。

急にわいて出てきた世界樹を守るという思い、あれは俺の思いなどではなくてこの半身の……。



視界がぐにゃあって揺れる。

この世界に転生してからずっとこの半身と付き合ってきたけど、慣れたはずの半身に酷く違和感を感じた。

頭ぐるぐるして正直ちょっと吐きそう……やばい。つらい。




「…………タマさん」


ふと、左手に感じたふわっとした感触。

タマさんがじっとこちらを見つめていた。


思わず手を伸ばし、頭をなでるが……タマさんは逃げたりせず、そのまま撫でられるがままで居てくれた。







「ありがと、落ち着いた」


にゃんこの力ってすごい。

撫でている内にさっきの違和感とかぶっ飛んで、撫でることしか考えられなくなったぞ。


「ニャ。 さっさと離れるニャ」


「タマさんてばつれないんだかげぶうぅおっ!?」




教訓。

調子に乗ってはいけません。 あばら数本逝きましたネ。ハッハー。



「コヒュー……」


まあ数分で治るんですけどね、まだちょっと痛い。


「まあ、心配する気持ちもわかるニャ」


ぬ?


「これ使うニャ」


「? ポーションかな……?」


そういってタマさんが取り出したのは、手のひらに収まるぐらいの小瓶であった。

中には液体が入っており……ちょっと蛍光紫という絶対飲みたくない色をしている。


ポーションかなって言ったけど、劇薬にしか見えない。



「みたいなもんニャー。 飲むとレベル15ぐらい補正つくニャ」


「まじっ!?」


え、やばくね?

確かタマさん、俺の桃と補助魔法で補正いれてレベル105ぐらいだったよね? これ飲んだら120……? え、指導者とやりあえるじゃないの。


「ニャ。 世界樹を背に守って敵が減ったらこれ飲んで突っ込むニャ。それがセオリーニャ」


「はへー……」


こんな隠し玉があったとは……そりゃ皆余裕そうに見える訳ですわ。


「貴重だからあまり使えないニャ。 ウッドはがんばって桃量産するニャ」


「おー。 ……あれってどれぐらい日持ちするんかな?」


「知らんニャ」


貴重ってことは、最後に突っ込むとき以外は使え無さそうだ。

そうなると俺の桃が必要になってくる訳だけど、各地から人が集まるってことは相当な数が必要となるはず。

出来れば作り置きしておきたいけど……あれ、どんぐらい日持ちするのか謎なんだよね。




そんな訳で俺は指導者達との戦いにそなえて自分の能力を把握するために隣町のダンジョンまで遠征しに行くことになったのであった……。



「あー……もっと早く検証しときゃよかったなあ」


「今更遅いニャ。 きりきり働くニャー」


ぶちぶち愚痴を言う俺の背をぺしぺしと叩くタマさん。

ありがとうございます。


いやー……桃とかさ、作ってすぐ食ってたもんで今までどれぐらい持つとかそういうの考えたことなかったんだよねえ。


「おー……ほい、これスタミナ回復のやつね」


「ニャ」


なもんで桃を作って食べて、効果切れるまで時間はかってまた食べてを繰り返すのである。

まあ、美味しいしタマさんと一緒だし別に苦ではない。


あ、桃だけどね。レベルの補正上がるやつだけじゃなくて、スタミナとか魔力とか徐々に回復するようなのも作ってみてるのね。

どれもきっちり効果は出てるから思い付きで作ったにしてはすごいもんだ。ほんと便利な体だよ。


……デメリットとして思考誘導される事が判明したけどなっ。



「補正の桃の効果切れたニャ」


「お、じゃあ次は一日置いといた桃どうぞ」


「ニャ」


お、補正のほうが切れたか……効果持続は丸1日っと。

次は作ってから一日放置しといた桃を食べてもらおう。 もちろん腐ってたりなんてしないよ?



と、こんな感じでタマさんと二人、桃の効果がすべて判明するまでダンジョンに籠るのであった。

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