第42話 「41話」
ざっしゅざっしゅとオーガにナイフを突き立て解体を進める。
倒した以上、魔石をとるため解体せねばいかんのだけど、やっぱグロいなあとしみじみ思う。
いや、こんなんでしみじみしたくは無いんだけどね……何か別のこと考えて気でも紛らわせようかなー……あれ?
あ、そういえばあれ結局聞いてないじゃん。
梨のせいですっかり忘れてた。
「ところでタマさん」
「……ニャ?」
解体の手は止めずタマさんに声をかける。
すると地面でうとうとしていたタマさんの耳がピクリと動き、うすらと薄めをあけ俺を見る。
この眠いんだから話しかけるなと言わんばかりの視線、たまりませんな。ハハハ。
「オーガの装備、その素材についてなんだけど……」
「ニャ。忘れてたニャ」
俺が素材についてと言うとタマさんはぐっと伸びをして起き上がり、ぼてんと地面に座り込む。
ちょっとおっさん臭い。可愛い。
「オーガの装備に使われている素材は鬼鉄って言われているニャ。鬼鉄を原料にして作られた装備は最初は普通の鉄で作ったのの変わらないニャー」
「ほうほう」
最初はってことは後から何か変わるってことだよね。
何だろね。 気合い入れると光ったりとか?
「でも鬼鉄で作った装備は使っていくにつれて強くなっていくニャ。 成長していくんだニャ」
「おお! なんかすごいねそれ」
いいねいいね。こう言うのも良いよね。
最初からぶっちぎりで強いのもそれはそれで良いけど、使い込んでいくうちにいつか最強の一振りとなる。
うむ、素晴らしい。ロマンがあるねえ。
「強化された鬼鉄の装備は最下層でも問題なく使える装備になるニャ。 そこまで育つまでに壊れちゃうことが多いけど、愛用している人は多い……でもあまり手に入らないから鬼鉄は高いんだニャ」
「なるほどねー……ちなみにおいくらぐらいなので?」
最下層ってようは最終ダンジョンみたいなもんよね?
終盤も終盤、そんなとこでも使えるって本当に最強の一振りってことじゃん。
……欲しいけど、高いんだろうなあ。
「オーガの装備一式の買い取り価格が金貨300枚ぐらいニャ。 鋳つぶしても全て使える訳じゃ無いから作った装備はもっと高いニャ。 ウッドの使ってる武器ぐらいので金貨500枚ぐらいかニャー」
「うへぇ……高いけど良い装備だよなあ、いつか買いたいけど」
やっぱ鬼のように高いね。
でも買えないわけじゃない……俺ならタマさんと報酬山分けして、2カ月……いや3カ月かな?それぐらい節約生活していれば買えると思う。
……これ、他の大人数でパーティー組んでるところだと早々手に入らないんじゃない?
いや本当にタマさんと組めて良かったわー。
とか鬼鉄の装備についてあれこれ考えていたんだけど、タマさんが呆れた感じで俺の武器を指さして口を開く。
「何言ってるニャ。それ鬼鉄製だぞニャ」
「へっ!? え、でもこれそんな高くはなかったはず……だよ?」
え、いやこれ俺が数日でお金返せるぐらいのお値段だったけど……絶対金貨500枚とかじゃなかった……と思うんだけど。
タマさんの勘違い、だよね……?
「ニャ。 でもそれ鬼鉄ニャ。 間違いないニャー」
「え、うそ…………ゴリさん?」
鬼鉄で間違いないとなると思い当たるのはゴリさんしかいない。
店員さんが間違えるなんてことはまず無いだろうし……そうなるとゴリさんしかいないわけで。
問題はなんでゴリさんがそんなことしてくれたのかってことだけど……たぶん俺の思い上がりでなければ。
「たぶん先行投資ってやつニャ。 気にするなニャ。 次会うときまで強くなって稼いで、ゴリアテが自分の目に狂いは無かったと思うぐらいになるニャ」
「……うん」
やばい目から水分が溢れてきたぞ。
ゴリさんめなんて嬉しいことしてくれるんだ……鼻水まで垂れてきたじゃないか。
よし、落ち着いた。
鼻水すすって勢いつけて立ち上がる。
むっちゃやる気に満ちてきたぞう。
「よっし、次行こう!次!」
「気合はいってるニャー」
当たり前ですよ!
ここ一帯のオーガ居なくなるまで狩ってくれるっ!
やってやんよーっ!
やってやりました。
オーガの魔石大量でホクホクですわ。
あ、装備を身につけたオーガは残念ながら出会えなかったよ。50体以上狩ったんだけどね。
どうも相当確率が低いみたい、タマさん曰く1000体単位で狩らないと出会えないかもとのことだ。
このペースで狩っていれば一月もあれば会えるかな?
そのころにはレベル20ぐらいにはなるそうだし、ゴリさんの恩に報いる為にも気合い入れて狩らないとね。
あ、そうそう……これもタマさんから聞いたんだけど、レベルってのは格上を倒した方が上がりやすいらしい。
だからレベル10そこらの俺が推奨レベル30のオーガを狩るともりっもりとレベルが上がるって寸法です。
逆にレベルが低い相手を狩った場合はほとんど上がらないそうな、なんでタマさんはここ10年とかそれぐらいの間レベルが上がってないらしい……タマさんあなたおいくつなんデス?
……まあ、いいか。年がいくつだろうが可愛いことには変わりない。
それより換金ですよ、換金。
リタさーん、おねがいしまっす!
「……あの、これオーガの魔石では?」
「あ、はいそうです」
「……」
むっちゃ冷たい目で見られた!
タマさんのときと違って興奮しな……俺は何を言っているんだ。
最近なんか変態ぽくなってきた気がしなくもない。あぶない。
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