第30話 「29話」
ギルドの食堂でテーブルを囲む俺とゴリさん達一行……それに1匹のにゃんこ。
別にご飯持ってこなくて良いから今から奢るニャー、と一緒に飯食う流れになったのだ……俺は別に構わないんだけど、なんかゴリさんが悲痛な表情をしてらっしゃる。胃とかにダメージはいってそう。
「タマさんすみません……こいつダンジョンで罠にはまって記憶飛んでいるようでして……」
「……すみませんでした」
にゃんこに頭を下げるゴリラ……もといおっさんの図。
……何とも微笑ましい?光景だけど笑ったりはしない、たぶんこのにゃんこはゴリさんが頭を下げなきゃならないような存在なのだろうから。
そんなにゃんこの頭を俺はなでくりまわしたわけで……すまぬ、ゴリさん。俺も謝っておくよ……色々と手遅れな気がしなくもないけど。
「そういうことかニャー。 ま、許してやるニャ。タマは寛大だからニャー」
そういってふんぞり返るにゃんこ。
お腹の毛がふわりとしてすごく触りたい……いかんいかん。耐えるんだ、俺。
なんにせよ俺が頭を撫でたことに関してはそんな怒っている訳じゃ無さそうだ。
ゴリさんもどこかほっとしたような様子を見せている。
てかね……ちょっと理解するまで時間掛かったけどこのにゃんこ……名前がタマってそれでいいの……?
いや、ぴったりだとは思うけどさ。
「それよりご飯にするニャ。 ひさしぶりのまともなご飯だニャー」
そういって次々注文していくにゃんこ……もといタマさん。
奢りだからって好きに注文してくれちゃって……もうしょうがないにゃあ。
……いかん、思考がなんかおかしい。
久しぶりににゃんこ見てテンションおかしくなっとるなこれ。
あ、そうそう。今日の食事だけど俺の奢りです。ゴリさんにとっちゃたいした金額じゃないだろうけど……ま、気持ちの問題だね。
料理がくるまで時間が掛かるだろうしちょっと気になったことを尋ねてみる。
ゴリさん復活までもうちょい掛かりそうだし、パーティメンバーもなんか静かだし……。
「ひさしぶりって……ダンジョン行ってたので?」
「そうニャ。 タマはずっとダンジョン潜ってたニャ」
久しぶりの食事って聞いて、多分そうだろうとは思っていたけど、このタマさんダンジョンに潜っていたらしい。
ゴリさんの態度からしてたぶん嘘じゃないだろうとは思うけど、どうしても疑わしそうな目を向けてしまう。
……だって見た目は長靴はいたでっかいにゃんこなんだもん。
とてもダンジョン潜ってモンスター達とやり合えるようには見えませぬ。
「信じてなさそうニャ。 こう見えてタマはすごく強いニャー」
うっそだー。
「えぇぇ……」
まるっきり信じてなさそうな俺の腕をぺしぺしと叩くタマさん。
もっと叩いてください。
「ニャ。 特別に見せたるニャ」
信じようとしない俺にタマさんが差し出した物、それはギルドカードであった。
色は俺のともゴリさんのとも違う。たぶん銀色だと思うけど……てことは銀ってことだよね? ゴリさんより1つ下のランク……?
むっちゃランク高いけど、でもそれだとゴリさんの態度が説明つかないような……他にも何かあるのかな、このタマさん。
「え……い、いいの?」
んでギルドカードなんだけど……思わず受け取ったは良い物けど、本当に見てしまっていいのか戸惑うわけで。
だって、レベルとかも記載されているし……あまり他人にほいほい見せるような物じゃないと思うんだけど……。
「タマは有名だからみんな知ってるニャー」
「そ、それじゃ……っ!???」
みんな知っている……そう聞いて、それならいいかな?とギルドカードを見てみることにしたんだけど、そこには我が目を疑うようなことが記載されていた。
ランクが金の3でレベルが95……やばい、これゴリさんよりずっと上だ!ってかこれダンジョンシーカーのトップレベルとかなんじゃないの??
てか、なんで金色じゃないし!?
「ニャ。 いい反応ニャ」
「まあ……次からは気を付けるこった」
「はひ」
タマさんは俺の驚く様が面白かったようで満足げに目を細める。
ゴリさんからは肩をぽん、と叩かれた……うん、もう見た目では判断しないように気を付けます……はい、ごめんなさい。
それはさておきご飯がきましたよ。
「うまうま」
「うなうな」
やっぱご飯美味しい。
しかしあれだね。にゃんこがご飯食べるときに鳴くことあるけど、あれすごく可愛いよね。
つまり俺、今とても幸せです。 にゃんこと一緒に美味しいご飯を食べる……うむ、すばらしい。
ゴリさんが呆れたような表情でこっち見てるけど気にしちゃいけない。
「……あ、追加注文いいか?」
……諦めたのか料理人注文しはじめましたね。 あ、この玉子焼きみたいのお代わりお願いしますね。うへへ。
腹も大分くちくなったところでタマさんに質問をしてみる。
「やっぱダンジョンだとまともなの食べられないんです?」
ダンジョンだと食料調達大変と聞いていたけど、ゴリさん達よりもっとレベルが上でもそうなのかなーと思ったのだ。
もしかすると最下層には美味しい食材がたくさん!とかあるかもだし。
「そうニャ。 保存食かたまに果物がなってるから食べるぐらいニャ」
おっと?果物はなってるんだ。
その言葉に反応した俺をみてタマさんが話を続ける。
なんでも世界樹から離れれば離れるほどそういった果物がなっていることが多いんだそうな。
理由は不明らしいけど、タマさん曰く。
「世界樹が嫉妬してるんだニャー」
とのこと、本当かいな。
んで、タマさんがちょくちょく行く場所には赤い実がよくなるそうで、甘くて美味しいのでよく食べてる、とのこと。
「甘いんだ……」
甘い物はそこまで好きってわけじゃないけど、たまには食べたくなる……それに貴重だと聞くと尚更食いたくなるから不思議だ。
「ニャ。 ギルドに卸したからここでも食べれるんじゃないかニャー」
あ、そうなの? もしかしてあのやたらと高い奴かな?
「頼んでみるか?」
「そですね、せっかくなんで頼みましょうか」
こんな機会でもなければ俺が頼むことなんてそうないだろうからね。
他の人ちらっと見た感じ果物があると聞いて喜んでる感じだし、今日ぐらい散財したっていいじゃない。
てかタマさんが卸したから食べられるってことは、普段はメニューに書いてあるだけで在庫なかったんかな。
よく考えるとゴリさん達が果物食べたところ見てないし、たぶんそうなんだろうね。
とか考えていると注文した果物が運ばれてきた。
ぱっと見はさくらんぼに似ている感じだね。色といい……大きさはもうちょいでかいけど。それでも二口もあれば食い切れそうな大きさである……これであのお値段かあ。やっぱ甘味は貴重だとしみじみ思う。
「あ、意外と固い」
さくらんぼに似た外見と違って持った感じは結構固かった。そうだね、リンゴぐらいかな?
「久しぶりに食ったな……」
「滅多に食えるもんじゃないしな」
「タマさんが採ってきてくれて本当ついてたねー」
おっと、色々と眺めている間にゴリさんたちはもう平らげてしまっていた。はやいぞ。
俺も食べなきゃ……と果物を口に運んでみる。
しゃり。
そんな音と共に口の中に甘酸っぱい風味が広がる。
うん……わりといける。
例えるなら歯ごたえがちょっと違う味の薄いリンゴ。
そう言うとあまり美味しそうに聞こえないかも知れないけど、個人的には甘さ控えめなので嫌いではない。
「……リンゴに似てる」
なんとなく呟いた一言だったけど、それを聞き逃さず食いついてきたものがいた。
「リンゴ? リンゴってなんニャ」
タマさんである。
うっかり口走ってしまったことにしまったなーと思うも時既に遅しである。
俺はタマさんにこんぐらいの赤い果物ですよー、これに似てますよーと当たり障りの無いことを話す。
これで興味を失ってくれれば良かったんだけど……。
「聞いたことないニャ。 食べたいニャー!」
「どこかになってるんじゃないかなー……」
このタマさん、かなり甘い物が好きなようでぐいぐいくる。
出来るなら食べさせてあげたいけど……さすがにリンゴそのものが無いんじゃ無理だ。
「どこかってどこニャ。 ここから生えないかニャー」
「いや、木だけどさすがに生えないっすよ」
ぺしぺしと俺の腕を叩くタマさん。可愛い。
生えたら上げるけどね、あいにくこの体にはそんな機能は……ん? どうしたのかな、ゴリさんが震える指でこっちを……?
「お……おい、ウッドお前……」
「へ? ……へぇっ!?」
気が付いたら俺の右半身から枝が伸びて葉が生い茂っていた。
しかも赤くて丸い立派なリンゴが一つなっているじゃないですか。
……俺の体さ、まだ隠された能力あるだろうと思ってたけどさ。まさかそっち方面に行くとは思わなかったよ。
果物屋さんでもやりますかね……ハハハ。
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