第12話 「11話」

朝起きると体がバッキバキに固くなっていた。

やっぱもうちょっと柔らかいお布団で寝たいなあ。


そのためにはお金が必要……と言うわけで水浴び終わらせて早速ギルドに行きますか。

宿の女将さんに一言いって部屋の鍵を預けておかないと。



「それじゃ行ってきますね。 ……お姉さん」


……いや、まあこれからしばらくお世話になるんだしね?

こうお世辞の一つもですね……。


「あらやだお嬢さんだなんてもお! ほれ、綺麗に掃除しといてあげるからいっといでー! 怪我しないようにするんだよお」


そこまで言ってない。




何事もなくギルドについた。

道でチンピラに絡まれたり、ギルドの入り口でチンピラに絡まれるなんてこともなかった。

実に平和だね、てかこんな人の多い場所でちょっかいかけるような頭のおかしいのが早々居てたまるかというお話しですわ。


んじゃ、さっそくギルドに入りますかの。


……背筋が一瞬ぞわっときた。 入った瞬間一斉にこっちみるのやめてください。

目がギラっとしてて怖いんよー……えっと、こっちを見ている受付さんがいる、あの人にしよう。 てか昨日担当してくれた人だよね、確か。


「ええと、確か……ウッドマンさんでしたね。 本日はどういったご用件でしょうか」


あーお。

そうだった、仮名それだった。 


「ええ、まあ適当に呼んでください。 今日は草刈り? 行こうと思うんですけど事前に注意事項を聞いておいたほうが良いって……」


まあ、仮名はそのうち慣れるでしょ。

それよりも早く草刈りしてお金稼がないとだ。 世知辛い話だけど、どこでもお金は必要になるんだよなあ。


「それは良い判断です。 浅い階層でも危険はありますから……私はリタと申します。 そういった判断をしてくださる新人の方は歓迎ですよ」


「よろしくお願いします。 ……やっぱその辺のこと聞かないのもいるんです?」


「ええ、それはもう……愚痴になってしまいますので話しませんが。 では、ウッドさんにはまずこちらを見て貰います」



あ、呼び方変わった。

ウッドとかのほうがまだ良いかなー、そのうちウッディとかになったりするんだろうか?


てかねやっぱ注意事項とか聞かない人おるんだ。

掛けるのは自分や仲間の命なのかも知れないのに……まあ人それぞれってことで。俺はもちろん聞くけどね、武器の扱い思い出すとさ聞かないとかまずありえないと思うんだ。 俺みたいなど素人じゃなくて前もって十分な知識があるなら話は別だろうけどね。


んでもってこの渡された図鑑だけど、結構分厚くてでかい、縁が金属で補強されててちょっとした鈍器になっておる。

これ、全部覚えるの大変そうなんだけど……貸出とかやってないよねこれ、高そうだし。


「図鑑ですか? 薬草の……毒草とかも混ざってそうですね……あ、後ろはこれモンスターですか?」


「ええ、ダンジョンで採取できる薬草、それに毒草……これは誤って口にすると危険なのを知ってもらうのと、薬の材料になりますので乗せてます。 それとモンスターはここのダンジョンにでると分かっているものが乗っています。 薬草と毒草は最初の3ページ、モンスターは1ページ目をまず見て覚えてください、浅い階層で出るのはそれだけですので。 それと各薬草類の買い取り価格はそこの掲示板に張り出してある紙を見てください。 魔石もですね」


「それぐらいならまあ」


よかった、まず必要になる分はそこまで多くないみたい。

当面の間は浅い階層しか潜らないし、それに買い取りのお値段ちらっとみたら薬草20束あれば宿には泊まれそう……山菜採るぐらいの感覚でいけるんかしらね?


あと魔石はモンスターによって買い取りの値段違って、浅い階層だと……わあ、ゴブリンだ。

やっぱゴブリン居るんだね……えぇと、結構安い? いや、高いのかこれ? 2個あれば1泊出来ちゃう……たぶん雑魚中の雑魚なんだろうけど、一応命がけで戦ってこれってどうなの?

ちなみに一番高いやつだとゴブリンの1万倍じゃ効かないぐらいの買い取り価格になってたりする。

どんだけゴブリンの魔石しょぼいの……。


「たまに中層で出る薬草が生えていることもありますし、出来るだけ全て覚えたほうが良いですね。 あとめったに無いことですが」


「はい」


あ、固定じゃないんすね。

中層の薬草は結構高い……物によっては1束で宿泊まれちゃうじゃないか。 見つけたらラッキーだね。


「中層のモンスターが浅い階層に現れることもあります。 その場合はまず勝てませんので必ず逃げてください」


「そんなことあるんですね……絶対逃げるようにします」


「中層から逃げようとして浅い階層まで引っ張ってきてしまう方がたまに居るんですよ……」


あ、これはアンラッキーですわ。

この右半身の力使えば逃げられるとは思うけど……。


「あとは疲労や怪我がある状態で潜るのは絶対ダメです。 それとソロも可能であれば避けてください……通常であればパーティを斡旋するのですが、生憎といま募集しているパーティが無くてですね」


「ありゃ、じゃあしばらくソロかなあ」


「いえ、募集を掛けますので少し待っていただければパーティ組めますよ。 その体だとしてもソロだと危険ですので……それに断トツで死亡率が高いのは初めての戦闘です。 ソロだとその危険性はさらに上がります」


パーティかー。

ちょっと組んでみたいけど募集がないか、タイミング悪かったね。

となるとソロでいくことになるんだけど……死亡フラグがびんびんですよねこれ。


少し待つ……でもお財布の中身がやばい。

命には代えられないし、いざとなれば野宿するしかないか。

あ、不審者まっしぐらになるけど、それってパーティ組んでくれなくなるんじゃないか? どうしよう!


一応1週間は宿とってあるから、それ以内にパーティさえ組めれば……?


「ん……ちなみに集まるまでどれぐらい掛かるんですか?」


「早ければ2~3日。遅くても2週間ほどです」


あかん。


「……1週間待って、集まらなければソロでいきます。 手持ちちょっと厳しいので……」


数日でくればいいけど、そうじゃなかった時が大変だ。

一応他に一切お金使わなければ10日ぐらいは泊まれる。 とりあえず1週間だけ待ってみよう……集まらなければソロでいくしかない。


「お勧めは出来ませんが……少しお待ち頂けますか」


「あ、はい」


無表情だったリタさんの表情が曇る。

もうしわけない……何か対策を考えてくれるのだろうか、席を立った彼女は受付からでるとギルド内を歩き……あれ、向かった先にいるのってもしかしてもしかしなくてもゴリさんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る