第11話 「10話」

ギルドの左右にある建物はそれぞれ装備を扱う店とポーションから雑貨まで様々な品を扱う店であった。

俺はポーションと雑貨を買った後、装備屋に向かっていた。


正直武器やら防具やらのことはさっぱり分からない。

もちろんポーションのことが分かるかと言われればそうではないが、あれは説明を聞けばどんな効果なのかは分かるし、こんなギルドの隣で粗悪品を売ることはないだろうから品質はある程度保障されているはず……でも武器や防具は品質が良ければそれで良いとはならないと思う。 自分に合わない装備を使えば下手すると死に繋がる。


そんなわけで俺はギルドの隣にある店で店主に相談し、使えそうな装備を見繕ってくれとお願いしたのであった。


やっぱそういった相談を受けることは良くあるんだろうね、店主さんは店の裏に俺を案内すると色んな装備を手渡してきた。

実際手に取って使ってみることで俺にあう装備を探すんだそうだ。



「……まあ、剣か槍どっちか使いやすいほうをメインで使っていくとええ」


「ハイ」


「弓は止めておいた方がいいな、スリングも下手すりゃ仲間か自分にあたる」


「……ハイ」


んでいくつか使ってみた結果、武器はスタンダードに剣か槍を使うのが店主のお勧めのようだ。

予算はゴリさんから借りて額がそれなりにあるので、両方持って使いやすいほうをメインにしていくことにした。


「鎧はその体じゃ着れないな、ブーツもか……とりあえず外套渡しておくからそれ羽織っておけ、あとサンダルとブーツも渡しておくから半分ずつ使っとけ、半身用の鎧は特注なるでの……ま、盾があればある程度なんとかなるべ、金が出来たらまたこいや」


「ハイ、アリガトウゴザイマシタ……」


鎧は残念ながら着れなかった。

体の左右でこうも体の大きさが違うんじゃ合う鎧なんてなかったのだ。

とりあえず外套を羽織っておけばある程度の攻撃は防いでくれるはず……あとは盾でどうにかするしかないね。


んで、そんな装備一式を手に店を出た俺だけど、その目には涙がたまっていた。

嬉し涙じゃないよ。


「こうさ、もっとさ……剣とかもっと上手く扱えてさ、店員さんに『その年でここまで剣を扱えるとは……お主何者だ?』とかさ……はは」


試しに使った結果が散々だったのである。

この右半身パワーあり過ぎて上手く制御できないの……剣を振れば刃筋が立たないし、槍を持てば狙ったところに刺さらない……ぶん回すのは出来るけど予算的に柄まで金属製のは買えない……つまり下手すりゃ折れたりするわけで。


飛び道具はもっと悲惨だった。

弓矢は明後日の方向に飛んでいくわ、スリングは自分の頭掠めるわ……威力はとんでもなかったけどね、壁に当たった石が爆発四散してたし……頭に当たったらそっちも爆発四散するってことなんだよ。


斧槍あたりなら良いかなと思ったんだけどお高いの……。

普通の斧なら買えたけど、あれも刃筋を立てる必要あるし、振り下ろすときに柄がまわって自分の頭かち割りそうで怖い。


鈍器あれば良かったんだけど、生憎取り扱ってなかった。

特注すれば作って貰えるそうだけど、特注品は当然お高いの……。


そんなわけで。


「……宿確保しよ」


俺はとぼとぼと店をあとにするのであった。





「1泊銀貨1枚だよ。 銅貨5枚追加で食事も出せるけど、どうするかい?」


宿はギルドからちょっと距離のあるところのやつにした。

お値段がお手頃でなるべく治安が良いところだと教えてもらった場所だ。


しかし食事か……いくら残ってたかな。


「あー、泊りだけでお願いします。 とりあえず7泊分で」


ちょっと心もとなかったよ……。

しょうがないね、お金も返す必要あるし食事はなくても大丈夫だし。

食べたいけどお金稼ぐまでのがまんだ。


「7泊だね。 じゃあ銀貨7枚ね……食事は後で変更も出来るから、気が変わった言っておくれ。 家のは結構美味しいって評判なんだよ」


「ええ、その時はお願いします。 はい、これ代金」


やめてください。 お腹すいちゃうじゃん……。

ちくせう、絶対稼いでたらふく食ってやんからなっ!


「ひーふーみー……ほい、確かに。 それじゃこれ部屋の鍵ね。 出かける時は私か旦那に預けていっておくれよ」


「分かりました。 そんじゃ……あ、風呂とかは」


「風呂なら目の前の通りをあっちに少し歩いてけばあるよ。 水浴びしたいなら外の井戸使えるよ、石鹸は貸し出すから使うときは言っておくれよ」


「はい、明日の朝借りること思いますんで……それじゃ」


今日は川でとはいえ綺麗に洗われたあとだし、水浴びは明日の朝にしよう。

ていうかね。


「……寝よ」


いいかげんに疲れて眠くなってるんだ。

たぶん、町についた安心感とかもあると思うんだけど、もう瞼が重くてやばい。 体が心が全力で休みを求めていらっしゃる。


「ゴツゴツしている…………くぅ」


ベッドはゴツゴツしていた。

けどそんなの気にならないぐらい眠かったんだ。

布団にダイブしてものの数秒で俺は眠りについた。 我ながら寝つき良すぎだとは思う。


明日はいよいよダンジョンに潜ることになる。

しっかり稼がないと……。

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