<華麗に! ひとっ飛び(10cm)>
とある月曜日 午後九時――自宅
「いただきます」
「どうぞ、召し上がってください」
「――あ、このカレー、辛いかも」
「今日は辛いカレーなのですか?」
「超辛口だよ。今週も気合入れようということで、辛いのにしてみた」
「辛いと、元気出るのです?」
「うーん、気持ちかな……なんか燃える気がする!」
「火力はほどほどがいいような気がします」
「さすがお米の妖精」
「えっへんです!」
炊かれることに関しては超一流の誇らしげな妖精を、人差し指でそっと撫でる。
20㎝弱の白くて小さな妖精は脇をしめて目を閉じる。
「月曜日って体力的に一番元気な気がするから、こっからは集中力と気合で頑張らないとって思うんだ」
「そうです? 金曜日、元気に見えますけど」
「それは休みが近いから……かな。自分に向けた空元気かもしれない。でも体力はもうそんなに残ってないんだと思うんだ」
「辛いカレー、毎日食べます?」
「カレーは好きだけど、毎日はどうかなあ……」
「……お米、いっぱい食べたら元気出るでしょうか?」
「そうだね。炭水化物はエネルギーになるみたいだし」
「よかったです。米村もいっぱいエネルギー込めます!」
「それ……ほんとに元気になるだけ?」
「そうですねー……そうです!」
右上を見ながら米村が答える。
「……そっか。頼もしい」
「えっへんです!」
人差し指でそっと撫でる。
真珠光沢のある長い髪がさらさらする。
「お米をいっぱい食べれば、今週もひとっ飛びです!」
「助かります」
皿に添えた私の腕を、米村がぴょんと飛び越える。いつもの白いワンピースがふわりと舞う。たぶん、10㎝くらいは飛んだと思う。
「いつもね……いつも、大変だなってときにはね。頭に余計なことを残したままおいしいご飯を食べるのはもったいないなって思って、仕事を効率的に済ませる方法を考えたり、集中しなおしてる」
「……米村のことは考えますか?」
「考えたらすぐに帰りたくなっちゃうでしょ?」
「えっへんです……」
私の手首のところに両手を乗せて、ほっぺたをくっつけている。
もっちりとしていて気持ちいい。
いつもより長い晩ご飯になった。
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