雨と傘

なまはげ

第1話

窓ガラス越しに外を見てみると、街には雨が降っている。

これまでにないようなザーザー降りだ。

バケツの中の水をひっくり返したようなーーそう表現すれば伝わるだろうか?

とにかく酷い雨だった。


ピンポーン。


インターフォンが鳴り響く。

ーーこんな雨の日に、一体誰だろうか?


不思議に思いながら、私は玄関を開けた。


「ーーはい。どなたですか?」


そこには真っ青な顔をして、しゃがみこんでる男の子がいた。

学生服をきているところから見ても、彼は中学生だろう。


「ーーどうしたの?大丈夫?」

そう声をかけながら、私は室内に彼を招き入れた。


「ーー歩いてたら、急に目眩がして気持ち悪くなってきちゃって、、」

まだ顔色が悪い。

少し横になるといいーー。

そう言って私は彼に布団を引いてあげた。


「急にお邪魔してすいません」

丁寧に彼は頭を下げた。


依然として、大雨が降り続いている。

私は彼に温かいお茶を差し出す。


「飲めそうなら、これ飲んで」

「何から何までありがとうございます」


まるで死人であるかの様に、真っ青な顔をしたまま丁寧な言葉遣いで、頭を下げる。

「気にしないでーー」

笑って見せる。


私は急に変な気分になった。

普段は一人きりの家なのに、今日は玄関に靴が2つ並んでいる。

それに違和感すら覚えた。


彼が助けを求めてきてから、一時間くらいの時が流れているようだ。

時計の針は二時を示している。


病院には連れて行かなくていいのだろうか?

すねかじりをしている今、私にはそのお金はないのだが。


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