こどもの国

井村もづ

序章 夜明けのうた

 うた、が、はじける。

 雪が、まう。

 水が花びらとまじってかみなりを落とす。

 あたりにただようのは、たくさんの魔力の光だった。


 やがてこのたたかいは、ゆたかな命を生むだろう、とだれかが言った。

 そのためのたたかいだとだれかがうたい。

 そのためのきえる命だ、とだれかが笑って。

 ひとつ、またひとつとこどもが地面に溶けていった。


 たくさんの獣と思いを振り絞った先に、役立たずの大人が立っている。

 立ち尽くして崇めるのはひとつの夜だ。

 たくさんの笑い声が届くのは、世界の中心だ。

 はるかかなたの塔の中。

 すべての思いを受けてこどもが笑う。


 もっと、たのしい、うたを。

 もっと、うれしい、ものがたりを。

 こころ、おどる、ゆめを。


 夜を終わらせない力を!


 抗うことは許されない。

 ここは、生まれて朽ちる国。

 ただひとりのための、国。


 幾重にも季節といのちを重ねて紡がれた、ここ、は、こどもの国。

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