成果報告

 ここはスラムの革命軍『銀色の女神シルバーゴッデス』のアジト。


 クロフはルシルとマリスが来るまで、広間の窓際の壁に寄り掛かり寝て待っていようと思っていたが、2人の来るのが遅く本当に眠ってしまった。


 数分後、マリスはルシルと広間に来ると、寝ているクロフをみて溜息をつき側に近づいていった。


 そして、ルシルはクロフを覗き込みながら、


「……クロフは、寝てるみたいだな。」


 すると、マリスもクロフを覗き込み、


「あらら、ぐっすりと寝ちゃってるね。ルシルがもたもたしてたからだよ!」


「仕方ないだろう。喉が乾いてたんだから!どうする?何か起こすのもかわいそうなんだけど。でも、こんな所で寝てたら風邪引くし起こすかぁ。」


 ルシルとマリスは何度か起こすが深い眠りについていて起きなかった。


 ルシルは、クロフをどう起こそうか考えていると、何かを思いつきクロフのポケットに手を入れながら、


「さてと、クロフは起きないって事は、魔法銃は要らないだろうし、回収して別の物に造り変えちゃおうかなぁ。」


 ルシルはクロフのポケットの中の魔法銃を取ろうとしたその時、クロフは目を開けルシルの手首を強く握り、


「クロフ!い、痛いってば!?」


「ルシル!お前なぁ。ふざけるのもいい加減にしろ!!俺が銃を好きな事は知ってるよな!」


「ああ、知ってる。つぅ……てか、痛いから離して欲しいんだけど。」


「……いや、離さねぇ。これが俺を起こすためだったとしても、他にいくらでも方法があったはずだよな!」


「それはそうだけど、クロフ何度起こしても起きなかったから、ごめん悪いとは思ったんだけど、即効で起こす効果的な方法だとこれしかないと思ったんだ。つぅ、だから手を離してって!」


 そう言うとクロフはルシルの手を離し頭を抱え溜息をついたあと、眠たい目を擦りながら、


「……ふぁ〜、しゃあない。眠っていて起きなかった俺も悪いしな。」


「うん、そういう事。クロフそれで、城で何か収穫あったのか?」


 ルシルが痛い手首をさすりながら聞くと、


「ああ、あったというか。見たこともねぇような雰囲気のいけすかない野郎と会った。」


「クロフ。みた事もない雰囲気ってどういう事なの?」


「そいつは、黒色の髪と瞳をしていて、見た感じだと多分十代後半ぐらいだろう。それと、見た目が俺が1番嫌いなタイプだった!」


「クロフ。最後は余り参考にならないと思うんだけど。でも、確かにその男が何者なのか気になるなぁ。もっと特徴が分かるように説明してくれないか?」


「ん?確かにそうだな。そいつの見た目の特徴は、身長は俺と同じぐらいだったから190ぐらいだと思う。身なりはかなり良いものを着てた。雰囲気は、俺が1番嫌いなタイプ……あーいや、いかにも女が寄ってきそうな……あーこれもなんか違うな。ん〜、とにかくいけすかない野郎だった!」


「そっか、なるほど。そんだけ、良い男だったってわけね。」


 マリスがそう言うとクロフは頷いた。


「ん〜、クロフ。その男の名前は?」


「あっ!悪い。流石にそこまで調べてる余裕がなくてな。」


「そっか。そうなると、これから作戦を練るにも、その男が何者なのか分からないんじゃ、下手に動くのは危険かもしれない。」


「確かにルシルの言う通り、ここで下手に動くと返り討ちにって事にもなり兼ねないしね。」


「じゃ、どうするんだ?そうなると、そいつの事を調べねぇといけないんじゃ……ってまさかまた俺が行くんじゃねぇよな!」


「ん〜、確かに何度も行くのは危険かもな。そうなると、どうやって調べるかだよなぁ。」


「確かにな……。」


「どうやって調べよっかぁ。」


「そうだなぁ。多分、その事を考えていても、今の段階じゃ答えが出ないと思うんだけど。それより、クロフ。城の内部の事を、ちゃんと調べて来たんだろう?」


「ん?ああ、城の見取り図はここにある。」


 クロフはルシルに見取り図を渡した。


「クロフ。いくらなんでも収穫はこれだけじゃないよな?」


「勿論それだけじゃねぇ。城内の情報っていうか、凄いネタを仕入れてきた!」


「なになに?凄いネタって!」


「それはな。城の連中の話じゃ、龍の山里全体を結界で覆い龍を封印したらしい。」


「クロフ!?龍の山里を結界で封印って……そんな事が出来るのか?」


「さぁどうなんだろうな。俺もそれを聞いて驚いた。」


 そして、クロフはその事について、ルシルとマリスに詳しく話し始めた。

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