ブレグランの四天王〜智略のルナソル〜{済}

 ここは、ルドバの街の北東側にある森の入口。


 ただならぬ冷気が森の奥から漂い、辺りは異様なほど静まり返っていた。


 ルナソルは、ただごとではないと思い馬から降りる。


 そして、入口に馬を待機させると、ルナソルは森の中へと入っていった。


(なんなのこれは?

 森の中に入るにしたがって、冷気があり得ないくらいに強くなってる)


 尋常ではないほどの冷気が、どんどん奥に進むに連れ増してきていた。


 するとルナソルは、一部が凍った木々をみて驚き立ち止まる。


(これは⁉︎枝の一部が凍りついてる。まさか!……)


 そう思いルナソルは、嫌な胸騒ぎを覚え、もしかしたらネフロス達に何かあったのではと森の奥へと駆け出した。


 するとルナソルは、冷気が一番つよい場所に辿りついた。


 そしてルナソルは、その光景を目の当たりにし、自分の目を疑った。


(ちょっと、これはどういう事?

 何でネフロスとラゴスが凍っているの。そもそも、いったい誰にやられたっていうの。

 ん?ちょっと待って。凍っているって事は、もしかしてアイツの仕業!

 こんな事ができるは、どう考えてもルトルシニアの四天王、魔氷剣のガディスしか思い浮かばない。

 だけど、どうやって?

 ん〜考えていてもキリがない。まぁこのことは、あとで考えよう。

 それに、この氷をはやく溶かさないとね)


 ♧

 ♣︎


 この女性はルナソル=デルドレといい。周りからは智略のルナソルと言われいる。


 ブレグラン国の四天王の1人で、女性初の四天王であり最年少だ。


 光属性なのだが彼女の場合すこし特殊で、空気中の温度や湿度を操ることを最も得意としている。


 普段から口が悪いのだが、実力は四天王の中でも最も優れている。


 性格からくるのか何事にも慎重で、普段から緻密ちみつに物事をとらえ行動している。だがある意味、臆病でもある。


 四天王に抜擢ばってきされる以前は、ブレグラン国でも何百年かに一度でるか出ないかの、神童と呼ばれていた。


 そう、サリスワイズ大陸におけるブレグラン国の作戦参謀は、間違いなく彼女であると言っても過言ではないだろう。


 ラゴスとは同期なのだが、まったく正反対な性格のため犬猿の仲である。


 ネフロスのことを、尊敬しており憧れている。


 赤紫色の長い髪を、すべて左上にまとめ縛っている。


 彼女の抜群のプロポーションや、その美貌に魅せられる者も数多い。だが本人はまったくそれに気づいていない。


 そして少しきつい目をしている。


 ♣︎

 ♧


 ルナソルは少し離れた位置で、ネフロスとラゴスめがけ杖をかざすと詠唱を始めた。


「神秘なる月の光よ 大いなる太陽の光よ 大気と合わさりて 我に集まれ‼︎ 」


 《光呪解 氷‼︎》


 すると紫色に輝く光とうっすらと赤く輝く光が、大気と一体となり杖に集まる。


 その杖に集まった光は、神秘さを醸しかもし出している。


 ルナソルはその神秘的な光を、ネフロスとラゴスの遥か上空へと放った。


 その光は、辺り一面に広がっていき、凍りつていた森の氷をすべて溶かし始める。


 すると、凍りついていたネフロス達も徐々に溶け始めた。


 そして氷がすべて溶けると、ネフロスとラゴスは地面に倒れそうになる。


「あっ⁉︎ネフロスが!これは大変、これ以上ひどい怪我をされたら」


 それを見たルナソルは、慌ててネフロスに駆け寄った。


 そして愛用の携帯用の枕を、バッグから急ぎ取り出すと、クッション代りに使った。


「ふぅ〜、よかった。間にあったぁ〜」


 ルナソルのおかげで、ネフロスは地面に倒れずにすんだ。だがラゴスはそのまま倒れ、ゴンっと地面に頭を打ちつけ「うっ!」と言いそのまま気絶してしまった。


 するとルナソルは、ネフロスに簡単な治療を施した。


 その後ルナソルは、渋々ラゴスの手当をしたあと、ゴルボラと兵士たちの治療をする。


(だけど変ねぇ。ゴルボラの様子をみる限り、眠らされていたみたいなのよね。

 でもネフロスとラゴスは、まるで誰かを攻撃しようとしていたようにみえる)


 ルナソルは、ここで何があったのかと思考を巡らせている。


(ん〜、ここで考えていても埒が明かない。それに城に戻って、ちゃんとした治療をしないと。

 だけど、この人数を運ぶとなると。これは救援を呼ぶ必要があるわね)


 そう思いルナソルは、銃を構え空たかく掲げると赤い信号弾を放った。


(さてと、救援がくるまでネフロスの側で看病でもしてよっと。ラゴスはまあ一応、大丈夫でしょ。簡単な治療だけど。ちゃんとしてあげたしたしね)


 そしてルナソルは、救援がくるまでの間、しばらくネフロスに寄り添いながら看ていた。

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