フードの下の素顔{済}

 ここは、涼香たちがいた森より北に位置する草原。


 涼香バルロスは、要たちのいる場所まで辿りつくと、担いでいたガディスを下ろし座らせた。


 すると、要とクルテルが涼香の方に近づいてきた。


「涼香?んー……バルロスか?」


「ああ、そうだ。だが、それにしてもこの身体は疲れる。しかし、まだ涼香と入れ代わるわけにはいかぬ。その男に聞くことがあるからな」


 涼香バルロスは、ガディスをフード越しで見下ろしている。


 ガディスは上目づかいで、涼香バルロスのフードの下の顔をみようとしていた。


(やはり、みえん!……)


「なにが知りたい。その前に、なぜ俺は縄でしばられている⁉︎」


「確かに、なんでガディスをしばってるんだ?」


「それは用心のためかと」


「ああ、クルテルその通りだ。それにガディス。お前に聞きたいこととは、我々のあとをなんの目的がありつけてきたのか。それと何故、助けたのか?」


「……さあな。なんのことだ?助けたのは、たまたまだ……」


「なるほど。確かに、よく考えてみるとおかしいよな。偶然ここに、涼香をバルロスの生贄にしようとした国の奴がなんでいるのか」


 要はガディスを不思議そうにみている。


「さて、どうする。この様子では、本当のことを言ってくれそうにないが」


「どうしましょうか。それに、早くエルラスタに向かいませんと、日が沈んでしまいます」


 涼香バルロスは辺りを見渡した。


「確かにな。それに、別のブレグラン国の奴らと遭遇でもしたら厄介だ」


 そう考えながら涼香バルロスは深く溜息をついた。


 すると、一迅の風が吹き涼香のフードをめくる。


 涼香バルロスは慌ててフードを被った。


 しかし、時すでに遅くガディスに素顔をみられてしまった。


(……ちょっと待て⁉︎龍と同化し龍化はしているものの。なるほど……。これはもとがいいのか、思っていた以上だ。

 それに、この辺の女よりも遥かにカワイイ。これで龍化さえしていなければ)


 ガディスは涼香をみつめている。


「そういえば、さっきブレグランの奴らに襲われていた時。俺たちのことを、知られるとまずいって言ってたよな」


 しかしガディスは涼香にみとれていたため、要の声が聞こえていなかった。


「おい!聞いてるのか。ん?」


 なんの反応も示さなかったので要はガディスの耳元で、


「わっ⁉︎」


 と大声で叫んだ。


 するとガディスは要に耳元で大声で叫ばれたため、


「……⁉︎」


 ガディスはなにも言えずそのまま倒れる。


 そしてガディスは我にかえり、


「クッ……。おい⁉︎要。俺の耳がおかしくなったらどうするつもりだ」


 ガディスは倒れたまま要を横目でみた。


「さあ、知らないなぁ。話を聞いてない、ガディスが悪いんじゃないのか?まさか涼香にみとれてたんじゃねぇよな⁉︎」


「さあ、どうだろうな」


 ガディスは要をみて、ニヤッと笑みを浮かべた。


「ガディス。もしそうだとしても……お前に涼香は……。あーいや俺は……」


 要はなにかを言おうとしたが、顔が赤くなりガディスから目をそらした。


 そして、しばらく涼香バルロスたちはガディスを問い詰めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る