その作戦と蒼氷龍(ブルーアイスドラゴン){済}

 涼香バルロスは要が、まわりを警戒しながら、自分の方にむかってきていたので不思議におもった。


(要。何故、我の方にむかってくる?ガディスから、どんな指示がだされたのだ。うむ、どうする。ネフロスは、要を狙っているようだが……)


 涼香バルロスはそう考えながら、ネフロスと要のうごきを観察していた。


(いったい、なにするつもりだ。何故あの女のもとに?)


 ネフロスは剣をかまえなおすと、要にその剣をむけながら様子をうかがっていた。


(さて、お前がどこまでやれるか、その力をみせてもらおうじゃないか)


 ガディスは急に方向をかえ、ネフロスにむけていた剣をラゴスにむけ握りなおすと、


 《魔剣 蒼氷龍魔翔‼︎》


 するとガディスの剣が蒼く光りだし、蒼く透きとおった氷の龍があらわれる。


 すかさずラゴスめがけ剣を突きさすように押しだすと、蒼氷龍ブルーアイスドラゴンは剣からはなたれた。


(……⁉︎急に狙いをかえた?それに、なぜ僕を?)


 ラゴスは、その行動を予想していなかったため、攻撃が間にあわないとおもい手を前にかざし、


 《ブクリエ デ ヴァン‼︎》


 すると、ラゴスの手に風をまとった盾があらわれる。


 そして風の盾を、せまってくる蒼氷龍めがけかざし、左回りに大きく円を描いた。


 するとその盾をおおっていた風が周囲にはなたれ、ラゴスの前に風のバリアが張られる。


「フッ。ラゴス、甘いな……」


「ガディス。なにをする気なんだ?」


 ガディスが剣を天にかかげると、蒼氷龍は風のバリアのスレスレで急上昇した。


「……ま、まさか⁉︎」


 ラゴスは慌てて風の盾を上にかざしバリアを張ろうとする。


 だが既にガディスは剣を振りおろし、蒼氷龍がラゴスめがけ急下降していた。


 するとラゴスは、迫ってくる蒼氷龍を風の盾でガードし跳ねかえした。


「クッ。なんとか防げたか」


「フフ……。いや、まだだ!」


 やすむ間もなくガディスは、剣を天にかざし右回りに円を描いた。


 そしてそれと同時に蒼氷龍は上昇し、右回りに旋回すると輪をつくりラゴスを見下ろした。


 《氷龍 絶零氷光波‼︎》


 すると、蒼氷龍がつくりだした輪の中が蒼く光りはじめた。


 そして、その光から蒼い光線がラゴスめがけはなたれる。


「これは、なんのつもりだ⁉︎」


 ラゴスはそれをみて驚き叫んだ。


「ガディス。お前、まわりを巻きこむつもりか⁉︎」


 ネフロスは要に剣をむけていたが、ラゴスとガディスの方をむき驚き叫んだ。


 クルテルは首を傾げ不思議におもったが用心のため、いつでも魔法を放てるように杖をかまえていた。


 涼香バルロスはその光景をみていた。


(どうするつもりだ!この魔法を浴びれば……。ガディス、なにを考えている?

 それに要は、この魔法のことを知っているのか?よゆうで我の所にきているようだが。……)


 “ねぇ、バルロス。要は、確かに難しいことは苦手だけど。今の状況は、理解してるとおもうよ。んーたぶんね”


(それならば良いのだがな……)


 要は側までくるとその光景をみて今だとおもい、涼香バルロスに耳打ちする。


 すると涼香バルロスは考えたあと、要をみて頷いた。


(なるほど。そういう事か……)


「要。やれるかどうかは分からぬ。この体でやるのは、はじめてなのでな。だが、条件が満たされている今ならば可能かもしれん」


 要はそれを確認すると頷いた。


「じゃ、頼む。勝敗は、バルロスが力をつかえるかで決まるって。ガディスが言ってた」


 すると涼香バルロスはニヤッと笑った。


「そうだな。それに時間もなさそうだ‼︎」


 要はそれを聞くとあたりを見渡したあと、ことがすむまでここで待機することにした。


 そして涼香バルロスは、目を閉じなにかをつぶやくと指をパチンとならした。


 すると時がとまり、まわりの者たちは全員静止し、動かなくなった。


「うむ。成功はしたが……。さて、どう運べばいい?この状態では能力はつかえんしな」


 “じゃ、どうするのよ⁉︎”


「そう言われてもな。だが、なんとかするしかないだろう。ここから逃げるにはな」


 バルロスと涼香は、どうしたらいいのかと考えていたが、とりあえず行動に移すことにした。


 そして涼香バルロスは、時がいつもどるか分からないため、時間の許すかぎり、1人ずつ森の外に運ぶことにしたのだった。

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