異世界‥ラシアリュージュ{♣︎}

 あれから数時間が経ち。この国の王は、兵士からの報告で涼香と要の事を聞き話をするため、2人を牢からだした。


 そして兵士が涼香と要を謁見の間に連れてくる。



 ここは謁見の間。玉座にはこの国の王が座り、その左側に大臣がいる。


 室内はそれほど広くはなく、煌びやかな宝石が施された置物がところどころに飾られ、色々な植物が数ヶ所に置かれていた。



「我はこの国の王。グリフェル=L=ファストル。して、お前たちの名はなんと申す」


「私は、龍崎涼香です」


「俺は、久瀬要です」


「なるほどのぉ。お前達は突然、我が城の庭に現れた。ふむ。……これは、不思議なこともあるものだな」


「あのぉ〜。つかぬことを聞きますが。ここって、どこなんですか?」


「ふむ。ここがどこか分からぬとは……。なるほど。お前たちは、もしや異世界の者か?」


「多分、そうだと思う」


「そうか。それならば分からずとも仕方のないことだな。この城の名はファストルといい。この国の名はルトルシニア。そして、この世界の名はラシアリュージュという」


「はぁ。やっぱり、ここは違う世界なのね」


「そうみたいだな。それで、俺たちはもとの世界に帰れるのか?」


「すまぬな。それは分からぬ。まぁ少しの間ここでゆっくりと休み、その後どうするか考えればよい」


 グリフェルは下を向き少し考えていたが、再び涼香と要をみた。


「では、お前たちの部屋を用意させるので、しばし待たれよ」


 そう言いグリフェルは、大臣とともに奥の部屋へと入っていった。



 そしてこの大臣の名は、ボンゼル=アノスという。



 しばらくして涼香たちの部屋の準備ができ、2人は別々の部屋に案内された。




 涼香の部屋は洋風感がただよい、お洒落な女性の衣服やあらゆる物がクローゼットなどに置かれている。


「うわぁ〜!すごい……。これ全部、私が着てもいいのかな?試しに着てみようかなぁ」




 そして要の部屋はシックな感じで、クローゼットなどには紳士的な物がそろっていた。


「スゲェ〜!? これ着ていいのか? 買ったらかなりするんだろうなぁ」


 ♧

 ♣︎

 ♧


 その頃グリフェルとボンゼルは、王の書斎で話をしていた。


「ボンゼル。この時期に運良く、異世界の女が迷いこんでくるとはな」


「そうですね。まさか、龍神祭の前の日に……。これで、国の女を生贄にせずにすみそうです」


「ああ。さてあの女を、どう騙し生贄とするかだが」


「確かに、あの男が邪魔になるかと。もし女を騙すことができたとしても……」


「ふむ。さて、どうする?」


 そう言いながら2人は考えていた。するとボンゼルがふっと思いつき。


「陛下。どちらもその刻限に、眠らせてしまえばよろしいのでは?」


「そうじゃな。その方が良いだろう。ボンゼル、後のことはお前に一任する」


 それを聞きボンゼルは、グリフェルに一礼すると部屋をでて、準備をするため自分の書斎へと向かった。


 そしてグリフェルは、それを確認すると書類に目を通していた。

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