第6話
僕の通っている高校は、県内で二番手、三番手くらいの、それなりの進学校だ。部活よりも勉学を重視していて、教師たちもよく、やれ平均点がどうだとか、模試の判定がどうだとか、そういったことを言及している。
裏を返せば、良い点数さえ取っておけば誰からも文句は言われないということだ。目的がなくても、勉強の意義がわからなくても、僕たちが勉強をする理由は、今はそれだけで充分な気がした。
終業式の日の夜。僕はリビングでひとり、テーブルに肘をつきながらぼけっとテレビを眺めていた。
テレビの画面に映っているのは、最近目にする機会の多い人気のタレントがただ大きな声で騒いでいるだけの、あまり面白くないバラエティ番組だった。
リモコンを操作し、別のチャンネルに変える。適当に変えたチャンネルでやっていたのは、とあるお笑い芸人が出演している旅番組だった。昨今のテレビ業界の不振さをひしひしと感じながら、僕はテレビの電源を消した。
テレビを消すと、部屋には物音ひとつしなくなる。
そういえば、今日はまだ夕食を食べていない。冷蔵庫の中にまだ何か残っていただろうか。もし何もなければ、コンビニかスーパーに買い物に行くか、もしくはどこか外で食べるか。
冷蔵庫を漁り、奥底にあった冷凍食品のパスタを手に取ったタイミングで、ピコン、と僕のスマートフォンからLINEの着信音が響く。メッセージを送ってきたのは篠原だった。
『明日の夜、空いてる?』
電子レンジに袋ごとパスタを放り込み、タイマーを設定してから僕は返信する。
『バイトが終わってからなら暇だけど』
『じゃあ、うち来てよ。夕方か夜』
『夏休み早々するわけ?』
『んー、気分次第』
『分かった』
僕がそう返信すると、何の生き物なのか言葉では形容しがたい、幼稚園児の落書きのようなスタンプが送られてくる。なんだろう、これは。女子の間で流行っているのだろうか。
こういうのをわざわざお金を出して買うのか、と僕は画面上でうねうねと動くそのスタンプをしばらく見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます