彼女(金髪イケメン)

ヤンバル

第1話 夢じゃなくても覚めろ

 「そいつ育ても4章で抜けるぞ」


ウツツぶっ殺す。


 「お前な!!」


 俺はウツツの胸ぐらをつかむ。ふわりと彼の金色の髪が揺れ、俺と同じシャンプーが香る。大容量の安いやつ。

 整った顔立ちからは似つかわしくない安っぽい、甘い、におい。


 「いやいや、これもお前の記憶だから」


ウツツは俺のアタマを指差す。


 「嘘だろ?知らねえぞ、その情報」


 「昨日、エロサイトあさってたろ?あの時の広告で・・・」


 「いい、もういい」


 俺は手を離してコントローラーを握り直す。

 ウツツぶっ殺す。


 ごろんと、ウツツが俺のベッドに倒れ込む。


 「もう寝るかなー」


怠そうに欠伸をするウツツ。


 「勝手に寝てろ」


 「お前も眠いんだろ?」


顔を見なくてもウツツがニヤついてるのがわかる。


 「言 い 方 !!」


睨みつけながら俺は叫ぶ。ウツツの笑い声が部屋に響く。


 「おやすみ!」


 そう言うとウツツは立ち上がり部屋から出ていった。また甘い匂いが広がる。俺と同じシャンプーなのになんか匂いの格が上がってる気がしてむかつく。服だって俺のスウェット来てるのに、俺が着たときよりスウェットがイキイキしてやがる。ゲームを止めて飲みかけのペットボトルのカフェオレを喉に流す。

 真っ暗な画面を睨みながら俺はコントローラーを握りしめる。


 俺は『ドリーマー』だった。選ばれた人間だった。

 どんなむちゃくちゃな『夢』でも、心の底から願えば叶う人間だった。

 しかし俺は謙虚な人間だ。だから俺は控えめに「かわいい彼女が欲しい」と願った。そりゃ色々細かいオプションは付けたかったしキレイ系も捨てがたいとは思ったが俺は謙虚な人間なのだ。

 そんな謙虚な人間の夢を神様は叶えてくれなかった。

俺の夢は最悪のカタチで叶ってしまった。俺はあんなイケメンと、その、どうこうすることを願ってたのか??

 夢なら覚めてくれ。


「ごめん、抜けるの3章だったわ」


半開きのドアからウツツが顔だけ覗かせている。


「いいからもう寝ろ!!」


俺はクッションをぶん投げた。


 まじで、覚めてよ・・・

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